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どうなる? 「ツイッターのない世界」

米カリフォルニア州サンフランシスコにあるツイッター本社ビル(2022年10月28日撮影)。(c)Constanza HEVIA : AFP

米カリフォルニア州サンフランシスコにあるツイッター本社ビル(2022年10月28日撮影)。(c)Constanza HEVIA : AFP

【AFP=時事】実業家のイーロン・マスク(Elon Musk)氏による買収後、大勢の従業員の離職や運用ポリシーの変更など混乱が続くツイッター(Twitter)。先行きに対する不透明感が増す中、ユーザーをはじめ誰もが抱きつつある疑問がある──ツイッターのない世界とは、どのようなものだろうか?

 ツイッターの1日のアクティブユーザーは6月下旬時点で約2億3700万人で、フェイスブック(Facebook)の約20億人、ティックトック(TikTok)の10億人余り、スナップチャット(Snapchat)の3億6300万人と比べて少ない。しかし、ツイッターは誕生から15年を経て、政府や政治家、企業、ブランドや有名人、ニュースメディアにとって、主要なコミュニケーションチャンネルとなっている。

 米ニューヨークの起業家スティーブ・コーン(Steve Cohn)氏のように、ツイッターの世界は現実世界の縮図にすぎず、実際の重要性は限定的だと確信している人もいる。

 コーン氏は自身のアカウントで「ツイッターは決して『不可欠』ではない」「なくても世界はうまく回っている」と持論を展開。実際に投稿を行っている人はほとんどおらず、「ほぼ全てのツイートは、1%(のユーザー)によるものだ。大半の普通の人はツイッターにログインすらしていない」と主張した。

 一方、声なき声に光を当てるためには、ツイッターはなくてはならない存在だと指摘する意見もある。

 南カリフォルニア大学(USC)アネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム学部(Annenberg School for Communication and Journalism)のカレン・ノース(Karen North)教授は「多くの場合、無名の人の声は届かない。だが、ツイッターには発表する機会がある」と語る。

 米シンクタンク「中東研究所(Middle East Institute)」のチャールズ・リスター(Charles Lister)上級研究員も、紛争や社会運動、弾圧といった状況では「ツイッターが真実や現場の実態を発信できる中心的なプラットフォームになっている」との見解を示した。

 アリゾナ州立大学(ASU)のマーク・ハス(Mark Hass)教授は、「ツイッターがなくなれば、独裁者や、情報が広く共有されることを望まない者たちが、利益を得る可能性がある」と話した。

■公共の広場

 ツイッターがなくなれば、ジャーナリズムに壊滅的な影響を与えかねないと専門家はみている。「ツイッターは、実のところソーシャルネットワークではない。ニュースと情報のネットワークだ」とノース教授は指摘。最も資金力のあるメディアでさえ報道部門の人員と予算が削られ、「世界各地の情報源を調査しに行く」ためのリソースがない現在、「ツイッターはジャーナリストが注目すべき情報や記事のアイデア、見出し、情報源、引用文を探せる場所であり、中心的なハブとなっている」と説明した。

 ノース教授は、ツイッターがなくなった場合のもう一つの影響として、世界の富裕層や著名人、政治家は引き続きメディアの注目を集められるが、無名の人が注目を集めるのが難しくなるだろうと指摘。「ツイッターがあれば、誰でも話を発表できる」

 ツイッターは、リアルタイムで情報を共有する手段として機能している。

 メリーランド大学(University of Maryland)のキャロライン・オア(Caroline Orr)研究員は、「ハリケーン、山火事、戦争、感染症の流行、テロ攻撃、銃乱射事件などの際、ツイッターは情報や助言の入手、ネットワーク構築、リアルタイムの情報更新、地域社会における相互援助などの重要なよりどころとなってきた」とツイートした。「他の既存プラットフォームでは代替できない」 今のところ、ツイッターの代わりになりそうな手段は見つかっていない。リスター氏は「フェイスブックは有用だが、やや時代遅れに感じる」と述べた。

 マスク氏がツイッターを買収してから人気が高まっているマストドン(Mastodon)など、より小規模な競合プラットフォームにユーザーが流出する可能性は高いが、「これらはニッチな存在にとどまり、ツイッターがつくろうとしてきた公共広場にはならないだろう」とハス教授は言う。

 ハス教授とノース教授はともに、代替候補としてレディット(Reddit)を挙げた。ただ、ノース教授は、レディットのようなフォーラム(掲示板)型のネットワークは、断片化され雑然としたサイトデザインが制約となり、ツイッターの使いやすさを再現できないとも指摘する。

 ツイッターに代わるSNSは登場するのだろうか?「もちろん」とリスター氏は答えたが、そうした創意工夫には莫大(ばくだい)なリソースと膨大な時間がかかるとくぎを刺した。「一朝一夕にできるものではない」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件