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中国の若者に必須の「電子ザーサイ」とは? 忙しい「お一人様社会」の反映

食事をしながらスマホで動画を見る福州市の若者(2021年1月28日撮影、資料写真)。(c)CNS:王東明

食事をしながらスマホで動画を見る福州市の若者(2021年1月28日撮影、資料写真)。(c)CNS:王東明

【東方新報】中国の若者の間では最近、テーブルの上にタブレットやスマホをセットした後、食事を始めるのが習慣となっている。食事をしながら「おかず」のように動画を楽しむことから、「電子ザーサイ」と呼ばれている。

 SNS上ではスポーツのハイライトやバラエティー番組のダイジェスト、ゲーム配信、音楽など10~20分にまとめた「電子ザーサイ」動画があふれるようになっている。

 中国では外食でも家族や友人らと一緒に食事し、大皿料理を何点か注文して箸をつつき合うのが当たり前で、日本のように定食メニューが豊富な飲食店は多くはない。しかし2020年からのコロナ禍により「ステイホーム」を余儀なくされ、若者を中心に食事のデリバリーが急増。自宅にいながら1人で食事をする機会が増えた。

 また、仕事先から定時で帰るのが普通だった中国社会も大きく変化し、IT関係などをはじめ残業や休日出勤が必要な企業も増加。深夜に帰宅し、1人で食事をするライフスタイルが若者の間で広がっている。

 さらに、映画やテレビのほかSNS、サブスクリプションサービスなどコンテンツが急増していることも大きい。話題の番組・作品などを情報として取り込むため、海賊版を含めた人気作品の「まとめ動画」が流通している。

 ある映画関係者は「1948年に上映された中国映画史上の名作『小城之春(英題:Spring in a Small Town)』は、映像美や人間の内面の表現が魅力。約90分の作品で、ストーリーだけを追うのなら10分でまとめられるが、それでは作品を見る意味が無い」と指摘する。それでも若者の間では「これだけ忙しいのに、面白いか保証もない映画に長い時間を費やせない」というのが普通の感覚になりつつある。

「電子ザーサイ」の需要の高さを反映して、最近はSNSで「10分間ドラマ」の制作が増えている。中国のショート動画アプリ大手「快手(Kuaishou)」では、ショートドラマの1日あたりの視聴者が2億6000万人に達し、動画配信サイト「芒果TV(Mango TV)」では視聴回数が6億回を超えたショートドラマもある。

 中国のドラマは今も1時間の放送でシリーズ全体が50回に及ぶ作品が多いが、ストーリーが中だるみして「注水劇(水増しドラマ)」と批判される作品も少なくない。制作開始から放映まで数年を費やし、スピード社会において視聴者の感性とズレが生じる場合も。

「スマホでドラマの最初の5分だけ見て、つまらないと思ったらスワイプする」という若者が増える中、制作時間も制作費も少なく済むショートドラマは、流行の最先端を反映しやすいメリットがある。

「無駄なく短時間で楽しみたい」という心理を反映した「電子ザーサイ」やショートドラマの流行は、1人で過ごす時間が増え、忙しい日々に追われるライフスタイルの象徴と言える。【翻訳編集】 東方新報/AFPBB News|使用条件