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ノーベル化学賞バウェンディ氏、大学時代の落第から巻き返し

2023年ノーベル化学賞の受賞が決まり、自宅で撮影に応じたムンジ・バウェンディ氏。米マサチューセッツ工科大学提供(2023年10月4日撮影)。(c)Jodi Hilton : MIT : AFP

2023年ノーベル化学賞の受賞が決まり、自宅で撮影に応じたムンジ・バウェンディ氏。米マサチューセッツ工科大学提供(2023年10月4日撮影)。(c)Jodi Hilton : MIT : AFP

【AFP=時事】2023年のノーベル化学賞(Nobel Prize in Chemistry)の共同受賞が決まった米マサチューセッツ工科大学(MIT)のムンジ・バウェンディ(Moungi Bawendi)教授(62)は大学時代、最初に受けた化学の試験に落第した過去を持つ。

 チュニジア人とフランス人の両親のもとに生まれたバウェンディ氏は、高校時代を通じて科学に秀で、苦労した経験がなかった。だが、1970年代後半に米ハーバード大学(Harvard University)に入学後、最初の化学の試験に落第し、「立ち直れなくなる」寸前だったという。

 ノーベル賞受賞決定を受けた会見で、バウェンディ氏はこの経験について「試験勉強をする必要がないことに慣れていた」と回想した。だが、広い会場と厳格そうな試験監督を見ておじけづいた。

「最初の問題を読んだが分からず、2問目も分からなかった」

 結果は100点満点中20点で、クラスで最低の成績だったという。

「これで自分はおしまいだ、いったいここで何をしているんだろうと思った」

 それでも化学への情熱に満ちていたバウェンディ氏は、試験には準備が必要だと知らなかったことに気づき早速、巻き返しを図った。「それまで知らなかった試験勉強のやり方を理解した。それからは、どの試験も100点満点だった」

 若者たちへ贈りたいメッセージはシンプルで、「粘り強さ」と「挫折に打ちのめされないこと」だと語った。この二つがなければ、「クラスで断トツ最下位のF判定(落第)を初めて経験した時、たやすく立ち直れなくなっていたかもしれない」

 バウェンディ氏は4日、「量子ドット」の研究の功績により、米国人のルイス・ブルス(Louis Brus)氏、ロシア出身のアレクセイ・エキモフ(Alexei Ekimov)と共に今年のノーベル化学賞を贈られることが発表された。

 量子ドットは、量子力学に従う独特の光学特性を持つ極小の半導体の微粒子。

 バウェンディ氏はすでに発見されていた量子ドットを、正確かつ大量に作り出す技術に革命を起こした。現在では次世代テレビのディスプレーから腫瘍除去手術に使われる蛍光マーカーまで、さまざまな技術に量子ドットが応用されている。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件