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年末の報告書はAIにお任せ? 中国で「代筆」ビジネス

第2回世界デジタル貿易博覧会で登場した中国発の言語モデル「文心一言」(2023年11月23日撮影、資料写真)。(c)CNS:王剛

第2回世界デジタル貿易博覧会で登場した中国発の言語モデル「文心一言」(2023年11月23日撮影、資料写真)。(c)CNS:王剛

【東方新報】今年も残すところあと少し。一年を総括する報告書の作成に頭を抱える人も多いかと思うが、中国ではそのやっかいな作業を人工知能(AI)が「代筆」する例も少なくない。

 ある代行業者では、一部1500字の年末報告書の作成を請け負うのに必要な費用と時間は、専門スタッフならば150元(約2986円)で8時間、AIが作成した報告書に専門スタッフが修正を加える場合では100元(約1990円)で5時間としている。AIの強みは価格の安さとスピードだ。

 そんな中、湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)の科学技術関連の会社がこんな人材募集を出した。

「今年はAIの補助で35万部以上の報告書を作成。年末が近づき報告書作成のパートタイムを複数名募集します」

 この会社は、企業や医療機関などに専門的な研究や調査の報告書を提出している。会社幹部の黄麗(Huang Li)さんによれば、業務には会話型AIサービスの「チャットGPT(ChatGPT)4.0」や中国発の言語モデル「文心一言(ERNIE Bot)」など多くのAIを活用したという。昨年作成した報告書は26万部だったが、今年はAIの活用により人手が1〜2割省かれたにもかかわらず、仕事量は2〜3割増したといい、控えめに見積もっても総注文量は35パーセント増しの35万部には達するという。

 黄さんによれば、AIにより大量のデータと情報が迅速に処理され、標準化されたレポートが自動的に作成できると同時に、データを分析しその背後にある法則や傾向を発見することもできるのだという。 AIも万能ではない。例えば、一週間の業務計画を作らせれば非の打ちどころのないものをあっという間に作ってくれるかもしれないが、実践できるかどうかは別問題。生身のアナリストが実際のクライアントに対し個別事情などを加味しながら実行につなげていく必要がある。

 それでも黄さんは自身の知識の不足を補い、新鮮な発想を示してくれるAIに対して信頼を寄せる。

「例えば、AIに『グローバル新エネルギー産業発展白書』を生成させると、即座に非常に包括的な枠組みを示してくれ、書式やレイアウトも整然としています。以前は中級アナリストしかできなかったことが、今では新人でもできます」

 年末レポートをAIに代筆させることは、「あまりに手抜き」という批判も出るが、四川省(Sichuan)の著名大学の電子工学の教授は、「良い道具は使うべき」と話す。かつては人が馬車や人力車を使い、今では自動車に乗るからといって怠けているわけではない。AIが代行できるということは、ほとんどの仕事が反復的で非創造的であることの証左であり、人間は無意味なことにエネルギーを浪費するのではなく、より多くの本当に創造的な仕事に没頭すべきだと主張する。

 一方、四川省成都市(Chengdu)の投資会社で人事を担当する周蕾(Zhou Lei)さんは、AIによる年末報告書の作成は「職位を分けるべきで一概にすべきではない」と考える。もし仕事内容が販売担当のように売上額や目標達成率などの確固としてデータで示されるなら、AIの代筆による報告でも業績が明確に示される。だが、管理職、研究職などデータで表せない仕事に対しては不向きだ。

 周さんは「例えば巨額の契約が締結されたとして、プロジェクト前半での役割、途中の戦略案、最終的なフィードバックなど、それらの貢献度はいくつかのデータやパターンだけでは表現できず、実際の内容が必要だと考える。もしそうした担当者がAIに代筆させた決まり切ったパターンの年末報告書を提出したら、書き直しをさせるでしょう」という。

 今年はチャットGPTをはじめとする生成AIが大きく注目され、将来的にAIに取って代わられるかもしれない職業についてもしばしば話題に上った。AIの可能性や危険性についての議論は、来年以降も人間自身がしっかり続けていく必要があり、こればかりはAIに代筆させるわけにはいかない。【翻訳編集】東方新報/AFPBB News|使用条件