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故人をAIでよみがえらせる、遺族向けサービスが急成長 中国

中国東部・浙江省で、人工知能でつくり出した息子シュアンモーさんの音声を聴くシークー・ウーさん(2023年11月7日撮影)。(c)Hector RETAMAL : AFP

中国東部・浙江省で、人工知能でつくり出した息子シュアンモーさんの音声を聴くシークー・ウーさん(2023年11月7日撮影)。(c)Hector RETAMAL : AFP

【AFP=時事】中国東部にある静かな霊園で、シークー・ウーさんは携帯電話を墓石の上に置き、息子の声を再生した。 22歳で他界した息子のシュアンモーさんが一度も言ったことのない言葉を、人工知能(AI)によってつくり出したものだ。

「僕のせいで、お父さんとお母さんが毎日すごく苦しみ、罪悪感や無力感を抱いているのは知っている」「隣にいられないけれど、僕の魂はまだこの世にいる。ずっと一緒だよ」

 息子を失って打ちひしがれていたウーさん夫妻のように、中国では、AI技術を利用して故人に生き写しのアバターをつくる人が増えている。

 ウーさんはいずれ、息子そっくりに振る舞い、バーチャルリアリティーの中で生活するリアルなアバターをつくり出したいと考えている。「現実と(インターネット上の仮想空間)『メタバース』を同期させれば、もう一度、息子と一緒にいられる」と話す。「(AIでつくり出した)息子にトレーニングすれば、私を見て父親だと認識してくれる」

 本人の30秒ほどの音声や映像があれば「デジタル化」は可能で、既に数千人分の実績があるとアピールしている中国企業もある。

 こうした技術が、家族の死から立ち直れずにいる人々の慰めになることもあると専門家は指摘する。 一方で、死別のサポートを最新AI技術に頼るという、英国のSFシリーズ「ブラック・ミラー(Black Mirror)」の不穏なテーマを想起させるところもある。

■元彼のアバター依頼も

 ウーさん夫妻は、英エクセター大学(University of Exeter)で会計学と金融学を学んでいた一人息子、シュアンモーさんを2022年に脳卒中で失った。

 スポーツが大好きで、死後に臓器提供したシュアンモーさんについて、ウーさんは、「とても豊かで変化に富んだ人生を送っていた」「いつも人を助けたいという気持ちや正義感を持っていた」とAFPに語った。

 中国で「チャットGPT(ChatGPT)」などの対話型AIがブームになったことを受け、ウーさんはシュアンモーさんの写真や映像、音声記録を集め、顔と声を再現してくれるAI企業に何千ドルも投資した。

 今のところ出来は拙いが、ウーさんは、シュアンモーさんに関する膨大な情報を集めたデータベースを構築するため、作業チームも立ち上げた。強力なアルゴリズムに組み込み、息子の思考・会話パターンを正確に模倣できるアバターをつくりたいという。

 米国にも近年、故人をAI技術でよみがえらせる「ゴースト・ボット」の専門企業が数社誕生した。

 しかし、中国のAI企業、スーパー・ブレーン(Super Brain)の創業者で、ウーさんにも協力していたチャン・ツーウェイ氏は、この業界は中国で急成長していると説明した。「AI技術に関して、中国は世界でトップクラスだ」とし、「しかも、中国には感情的な面でこうしたAIを必要とする人が大勢おり、市場の需要に関して私たち中国企業は有利だ」と話した。チャン氏によれば、スーパー・ブレーンでは、1万~2万元(約21万~42万円)の料金で、約20日間かけて初歩的なアバターを作成している。

 アバターの種類は、故人から、子どもと一緒に過ごせない生存中の親、そして賛否両論あるが、依頼者の女性が未練を抱く元彼まで、多岐にわたる。

 同社では、依頼者が失った相手の顔と声にデジタルで差し替えたスタッフとビデオ通話で会話ができるサービスも提供している。

■問題は故人の同意が得られないこと

 英バース大学(University of Bath)の「死と社会センター(Centre for Death and Society)」の客員研究員、タル・モース(Tal Morse)氏は、ゴースト・ボットが慰めになる可能性もあるとした上で、こうしたAI技術の心理的・倫理的な影響を把握するには、もっと研究を重ねる必要があると警鐘を鳴らす。

「ここでの重要な疑問は、ゴースト・ボットが、模倣するように設計された本人の人柄にどこまで『忠実』であるかだ」と懸念を示した。「ゴースト・ボットが、その人物の思い出を『汚す』ようなことをしたら、どうなるのだろう」

 もう一つ、判断に困る問題は、故人の同意が得られないことだと指摘する専門家もいる。

 香港大学(University of Hong Kong)の哲学者で、AIとその社会的影響を研究しているネイト・シャラディン(Nate Sharadin)氏は、会話や行動を模倣する許可は恐らく要らないだろうが、AIでつくり出したキャラクターに、本人の実際の言動以外のことをさせるには許可が必要かもしれないと話した。

 スーパー・ブレーンのチャン氏は、すべての新しい技術には「一長一短がある」と話す。このサービスが悪影響を及ぼしかねない依頼者には応じないとして、娘の死後、自殺を図った女性を引き合いに出した。その上で、「必要としている人に私たちが手を貸している限りは、何の問題もないと思う」と主張した。

 冒頭のウーさんは、息子のシュアンモーさんはAIで自身がよみがえることを「おそらく望んでいたはずだ」と語った。 墓前で妻が泣き崩れる傍らで、「いつかメタバースで、私たちみんなで再会することになるよ」とウーさんはシュアンモーさんに呼び掛けた。「テクノロジーは日々進歩している。時間の問題だ」 【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件

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