【AFP=時事】温室効果ガスの排出量相殺(カーボンオフセット)や森林破壊フリー認証など、森林保全をめぐる市場主導型の解決策はほとんど効果を発揮していないと指摘する科学的報告書が6日、公開された。
120か国の科学者約1万5000人で構成される国際森林研究機関連合(IUFRO)が、長年にわたる学術的・実地調査からまとめた報告書は、6日から開催される国連(UN)のハイレベル・フォーラムで発表される。
この世界的研究は、森林破壊を食い止める上で、貿易や金融主導の取り組みは「限定的な」進展しかもたらさず、場合によっては経済格差を悪化させていると指摘。森林保護、温暖化抑制、発展途上国の生活水準向上に効果的だとして普及が進んでいる市場主導型の解決策について「根本的な再考」を促した。
著者の一人、フィンランド・ヘルシンキ大学(University of Helsinki)のマリア・ブロックハウス(Maria Brockhaus)氏はAFPのメール取材に対し、「環境問題への政策対応をめぐっては環境、経済、人のすべてにとってプラスに働くと、市場メカニズムを支持する形で言及されるが、それを裏付ける証拠はない」と明言。
それどころか「何十年にもわたって市場メカニズムを主要な政策オプションとしてきた世界のさまざまな地域で、貧困と森林喪失の両方が拡大していることが示されている」と語った。
■責任の欠如
報告書は、コンゴ民主共和国での1億2000万ドル(約185億円)規模のプロジェクトが、強力な採掘産業による森林伐採に対処するどころか地元住民の森林利用を制限し、「既得権益を強化」したと指摘。
またマレーシアでは、外国資本の新興プランテーションが、先住民に伝統的な居住地域での生活向上を約束しながら、何の恩恵も与えなかったと報告した。
ガーナではカカオ生産における持続可能な基準設定や企業の誓約、カーボンオフセット・プロジェクトが数多く実施されているにもかかわらず、農民の収入は10年前よりも減り、森林減少率は上昇しているという。
ブロックハウス氏は、これらの事例が示すように地元は森林消失、土地の囲い込み、森林地の土地利用転換といった負担を背負わされる」とし、「プラス」として働くのは地元以外の場所だと批判した。
主著者を務めた英オックスフォード大学(University of Oxford)のコンスタンス・マクダーモット(Constance McDermott)氏は、森林破壊に関連した農産物や製品の輸入を禁止する欧州連合(EU)の森林破壊防止法など、富裕国が押しつけるグリーン貿易政策は、欧州側から見ればよく見えても、現地の農家が受ける打撃は考慮されていないと付け加えた。
同氏は「説明責任が欠如している。効果がなかったり、農民が農場から追い出される事態になったりしても、英国やドイツでチョコレートを食べている人間には何の影響もない」と批判した。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件