スタートアップやVC(ベンチャーキャピタル)で働く人のための健康保険組合、VCスタートアップ健康保険組合が1日から事業を開始した。設立時の加入事業者数は180社。加入者数は約1万人で被保険者平均年齢:35.5歳(2024年6月1日時点での年齢)となっており、健康保険料率は8.98%となっている。
会社を創業すると健康保険に加入しなければならないが、スタートアップの創業者、従業員にとって健康保険は見落とされがちな問題だ。大企業は、その企業独自の健康保険組合(トヨタ自動車健康保険組合、NTT健康保険組合など)を持っている。また同じ業種の企業が加入できる健康保険組合(関東ITソフトウェア健康保険組合など)もあるが、企業規模が小さく、創業から間もないスタートアップの多くは、これまで全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入することが多かった。
高齢化が進む日本の保険料は徐々に高くなっており、都道府県によって多少異なるが、協会けんぽ加入企業の健康保険料率は約10%(令和6年度 東京都で9.98%)となっている。
VCスタートアップ健康保険組合の保険料率は、協会けんぽに比べると低い。これは、負担を折半する企業にとっても、若い人が多いスタートアップの従業員の暮らしにとってもプラスになる。VCスタートアップ健康保険組合も「費用負担の軽減」をその特徴の一つにあげており、そのために組合内にエンジニアを置き、徹底した手続きのDX化を進めている。
費用面以外でも、スタートアップ向けの健康保険組合ができたメリットは多い。例えば、若い加入者の健康上の問題は、加齢からくるものより、メンタル面の不調などが原因であることが多い。健保組合から提供されるサービスの特性も、自ずと既存の健保とは異なったものになるだろう。
これまで、スタートアップ・エコシステムの拡充策は、創業者への支援や起業環境の整備・バックアップが中心となっていた。スタートアップで働く人を生活面でバックアップしてくれる仕組みの整備がこれまで不足していたが、VCスタートアップ健康保険組合の事業開始で、欠けていた大きなピースが一つ埋まった。