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中国、最大規模のイオントラップ型量子シミュレーション計算に成功

学生を指導する段路明教授(右端、資料写真)。(c)Xinhua News

学生を指導する段路明教授(右端、資料写真)。(c)Xinhua News

【新華社北京6月3日】中国の科学者がこのほど、最大規模のイオントラップ型量子シミュレーション計算に成功した。イオントラップは、電磁場を用いてイオンを限られた空間に閉じ込める装置であり、大規模な量子コンピューティングを実現するための物理システムの一つと考えられている。

 いかにして多数のイオンをイオントラップに安定的に「閉じ込めて保持(トラップ)」し、レーザー制御により量子コンピューティングにおける情報の基本単位「量子ビット」を作成するかは国際的な難題とされている。

中国科学院院士(アカデミー会員)で清華大学交叉信息研究院(IIIS)教授の段路明(だん・ろめい)氏のチームは、初めて2次元イオンアレイを使用し、「単一量子ビット分解能」を備えたマルチイオン量子シミュレーション計算を、現在知られている限り世界最大の規模で実行、大規模量子コンピューターの実現に新たな道筋を提供した。この画期的な成果は5月30日、国際学術誌「ネイチャー」に掲載された。

イオントラップを使用した量子ビットの作成には、コヒーレンス時間が長く、制御精度が高いという利点があるが、多数のイオンの安定した「トラップ」と正確な制御を同時に実現するのが難しい点がこの技術的道筋のボトルネックで、実用化と工程化に向けた統合にはまだ課題が残る。正確に制御し測定できる量子ビット数をいかに増やすかが、この研究の焦点となる。

IIISの呉宇愷(ご・うがい)助理教授は「われわれは低温一体型イオントラップなどの技術を用いてイオンの安定性を向上させ、平面状の2次元イオンアレイソリューションによってイオン量子ビット数を大幅に拡張し、世界で初めて512個のイオンを安定的に『トラップ』して冷却した」と説明。さらに、チームは300個のイオンの「単一量子ビット分解能」の量子状態測定も初めて実現し、「各イオンの状態を識別してその情報を抽出」し、これは量子コンピューティングの基本条件に当たると述べた。

量子シミュレーション計算は、量子システムの動きと進化のプロセスをシミュレートすることができ、ユニバーサル量子コンピューターが実現する前の量子コンピューターの主な応用形式となる。段氏は「このシミュレーション計算は、複雑な量子システムなどの基礎科学の問題を研究するための強力なツールを提供し、将来的には材料や医薬品の研究開発、工程の最適化、人工知能(AI)など多くの分野で応用が期待される」と述べた。(記者/魏夢佳)【翻訳編集】Xinhua News/AFPBB News|使用条件

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