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「火星滞在」実験施設から帰還 科学者ら4人 NASA

米航空宇宙局(NASA)の健康・パフォーマンス探査研究(CHAPEA)の模擬火星滞在施設「マーズ・デューン・アルファ」の内部の様子。テキサス州ヒューストンにて(2023年4月11日撮影)。(c)Mark Felix / AF

米航空宇宙局(NASA)の健康・パフォーマンス探査研究(CHAPEA)の模擬火星滞在施設「マーズ・デューン・アルファ」の内部の様子。テキサス州ヒューストンにて(2023年4月11日撮影)。(c)Mark Felix / AF

【AFP=時事】米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士が一見、何の変哲もないドアを3回強くノックし、明るい声で問い掛けた。「出て来る用意はできているか?」

 勢いよくドアを開けた飛行士の返事は聞き取れなかったが、ヘルメットの下でにっこり笑っているように見えた。歓声と拍手に包まれながら外へ飛び出したのは、アンカ・セラリウ(Anca Selariu)、ロス・ブロックウェル(Ross Brockwell)、ネイサン・ジョーンズ(Nathan Jones)、ケリー・ハストン(Kelly Haston)の4氏だ。

 彼らは過去378日間、米テキサス州ヒューストン(Houston)にあるジョンソン宇宙センター(Johnson Space Center)内に設置された実験施設「マーズ・デューン・アルファ(Mars Dune Alpha)」に隔離され、火星滞在シミュレーションを行ってきた。

 この施設の中で4人は野菜を栽培し、「マーズウオーク」をし、「地球」との通信の遅延や孤立・監禁状態など、NASAが「追加ストレス要因」と呼ぶ状況下で過ごしてきた。新型コロナウイルス感染症流行下のロックダウン(都市封鎖)を経験した人ならば、誰もが身震いしそうな経験だろう。

 だが今月6日、NASAの模擬実験「健康・パフォーマンス探査研究(CHAPEA)」の第1弾を終えて姿を現した4人は、笑顔を輝かせていた。チームリーダーで生物学者のハストン氏は「ハロー。皆さんにあいさつできるのは本当に素晴らしい」とにこやかに言った。

 救急医のジョーンズ氏は「皆さんの前で立ったまま、泣かないようにと思っている」と言ったが、数分後、群衆の中にいた妻を見つけると感極まっていた。

「マーズ・デューン・アルファ」は3Dプリンターを使って建造された160平方メートルの基地で、寝室、ジム、共用エリア、野菜を栽培するための垂直農場が備わっている。

 エアロックで仕切られた屋外エリアには赤い砂が敷き詰められ、「マーズウオーク」を行う際には宇宙服を着る必要がある。

 ジョンソン宇宙センターのスティーブ・カーナー(Steve Koerner)副所長は「彼らは1年以上にわたって、この居住施設で重要な科学実験を行ってきた。そのほとんどは栄養学に基づき、身体機能への影響を調査するものだ。われわれは人間を火星に送る準備をしている」とに語った。NASAでは計3回のCHAPEAを計画している。

 米国は2030年代に実現を目指す火星有人飛行の中継地点として、月面への再着陸を計画。「アルテミス(Artemis)」計画の下、月面で長期的に生活する方法などが研究されている。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件

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