【新華社北京8月23日】中国の研究チームはこのほど、高温酸化還元反応方法を用いて月探査機「嫦娥5号」が2020年に持ち帰った月の土壌から水が生成できることを発見した。未来の月面研究ステーションや宇宙ステーション建設の設計を行う上での重要な根拠となる可能性がある。研究成果は22日、国際的学術誌「イノベーション」に掲載された。
研究は、中国科学院寧波材料技術・工程研究所(浙江省)の非晶質合金磁電機能特性研究チームが中国科学院物理研究所(北京市)や中国空間技術研究院銭学森(せん・がくしん)空間技術実験室(北京市)、松山湖材料実験室(広東省)、ハルビン工業大学、南京大学などの大学・研究機関のチームと共同で行った。
水は月面研究ステーションの建設や未来の月旅行で人類の生存を保障する重要な資源となる。嫦娥5号が持ち帰った月の土壌のうち、ガラスや斜長石、橄欖石、輝石など複数種類の鉱物中に少量の水が含まれていたが、含有量は極めて少なく、月面で抽出して利用することは難しいとされてきた。
研究チームは3年におよぶ研究と検証を重ね、太陽風の照射を何十億年もの間受けてきた月の土壌鉱物が、大量の水素を蓄えていることを発見。
これを高温で加熱すると水素が鉱物中の酸化鉄と酸化還元反応を起こして鉄と大量の水を生成し、温度が千度を超えると土壌が溶け、水が水蒸気として放出されることが分かった。
多くの実験や分析を経て、研究チームは月の土壌1トンから水51~76キロを生み出すことができ、50人が1日で必要とする飲み水を確保できることを確認した。
研究チームは今回の研究結果を踏まえ「月土壌の溶融-水蒸気の凝結による水の収集と貯蔵-水の電気分解による酸素ガスと水素ガスの生成-残留した鉄と月土壌による永久磁石や軟磁性体、電子材料、建築材料などの作製」という月面水資源の現場採掘・利用戦略を打ち出した。同戦略について研究者は、未来の月面研究ステーションや宇宙ステーション建設の設計を行う上での重要な根拠となり、後続の嫦娥月面探査プロジェクトで検証設備が打ち上げられさらに確認が進むとの考えを示した。(記者/朱涵)【翻訳編集】Xinhua News/AFPBB News|使用条件