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3Dプリンターで義肢 おもちゃ製作の情熱で新たな挑戦 ボリビア

ボリビア・アチョカリャにある自身の工房で、義手の使い方を説明するロリー・ママニさん(左、2024年1月8日撮影)。(c)JORGE BERNAL : AFP

ボリビア・アチョカリャにある自身の工房で、義手の使い方を説明するロリー・ママニさん(左、2024年1月8日撮影)。(c)JORGE BERNAL : AFP

【AFP=時事】ボリビアの小規模農家に生まれたロリー・ママニさん(34)は子どものころ、おもちゃを自作していた。エンジニアになったいま、事故で障害を負った先住民向けの義肢を3Dプリンターで製作している。

 この日は感電事故で片腕を失った少年のための義手を手掛けていた。ママニさんの故郷、アチョカリャは、政府所在地ラパス北東約15キロの位置にあり、牧草地が広がり、野菜作りで知られる。家にはおもちゃを買うお金がなく、幼い頃からプラスチックや段ボールで車を作っていた。

 小学生になると自作の車はモーター付きになった。自動車工場で働きながら「初めて見る本物の機械」に触れ、2年後に公立大学に進学。10年前にアチョカリャで自身の工房を開き、ロボットのおもちゃや教育補助器具を作り始めた。

「自分で欲しいと思うようなおもちゃは、全部持っているはずだ」と言う。

 そうした生活が一変したのは、両手を失った男性の話を聞いた時だった。「自分なら(義手を)作ってあげられる」と思った。

 2018年に3Dプリンターで義肢を製作し、障害者の生活向上を支援する活動を開始した。「ロボット工学は流行しているが、大事な問題に取り組まなければ、何の意味もない」と話す。

■半分は無料で提供

 義肢は1か月で6個完成する。2018年以降、「400個以上の義肢をつくってきた」という。うちの半分は無料で提供し、製作費はママニさんのロボット工学製品の売り上げで賄ってきた。

 ボリビアでは、3Dプリンターで製作された義肢の平均価格は約1500ドル(約23万円)で、最低月給の5倍以上だ。特定の動きが可能なものになると、3万ドル(約465万円)になる。

 しかし、義肢は公的医療制度の適用対象にはなっていない。政府と提携する全国障害者委員会によれば、国内には約3万6100人の障害者がいる。ママニさんは、国内外から寄せられる多数の依頼の中から提供先を選んでいる。

「最も必要としているのは、危険な仕事に就いている人たちだ。危険な仕事をしていると、手足を失うような事故が起こる」と話した。

■「義手のおかげで自尊心を取り戻せた」

 7年前、ダイナマイトを使う採掘事故で視力と右手を失ったパブロ・マタさん(59)もその一人だ。「(事故以後は)毎日(路上で)小銭を恵んでもらう生活を送っていたが、そこで、友人のロリーと彼の弟に声をかけられた」と話す。

 ママニさんの弟、フアン・カルロスさんは理学療法士で、患者のリハビリを手伝っている。マタさんは、義手のおかげで自尊心を取り戻すことができたという。

 今はギターを弾いて生計を立てている。以前は「人に笑われていたが、義手をつけるようになってからは、普通の人と変わらないように思うこともある」と話す。

 ママニさんは、ロボット工学に関する米国の奨学金も獲得した。そうした実績を基に、リハビリ施設を設立したいと考えている。「独自の技術を生み出したい。もっと熟達しなければ」と語った。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件