2025年1月27日にニューメキシコ工科大学のマグダレナリッジ2.4m望遠鏡で観測された「小惑星2024 YR4」。米航空宇宙局(NASA)提供(2025年1月31日提供)。(c)AFP PHOTO / NASA/MAGDALENA RIDGE 2.4M TELESCOPE/NEW MEXICO INSTITUTE OF TECHNOLOGY/RYAN
【AFP=時事】米航空宇宙局(NASA)が18日に公表したデータによると、一つの都市全体に甚大な被害をもたらし得る「シティー・キラー」に分類される小惑星「2024 YR4」が、2032年に地球に衝突する確率が3.2%となり、現在の予測において最も脅威的な宇宙の岩石となった。
地球への衝突確率は高まっているものの、専門家らは過度な警戒は不要としている。世界の天文学界は状況を注意深く観察しており、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でも来月「2024 YR4」を観測する予定だ。
NPO「惑星協会」の主任研究員であるブルース・ベッツ氏はAFPに対し、天文学者がデータを収集するにつれて確率は一時的に上昇するが、その後急速にゼロへと下がる可能性が高いとの見解を示した。
「2024 YR4」は昨年12月27日、南米チリのエル・サウセ天文台によって発見された。天文学者らは「2024 YR4」の明るさから、直径を40~90メートルと推定している。光学的特性の分析によると、この小惑星は希少な金属が豊富なものではなく、比較的一般的な組成であることが示唆されている。
地球に衝突する恐れのある天体を観測する国際的な機関で構成される「国際小惑星警報ネットワーク(IAWN)」は1月29日、「2024 YR4」の衝突確率が1%を超えたことを警告する通知を発表した。それ以来、確率は変動しているものの、上昇傾向が続いている。
NASAの最新の分析では、衝突確率は3.1%で、衝突が予測されるのは2032年12月22日となっている。これは約32分の1の確率に相当し、コイントスで5回連続して結果を当てるのと同じ確率だ。
30メートルを超える小惑星がこれほど大きなリスクをもたらしたのは、2004年の「アポフィス」以来となる。アポフィスは一時、2029年に地球へ衝突する可能性が2.7%とされていたが、その後の追加観測によって衝突の可能性は否定された。
欧州宇宙機関(ESA)惑星防衛局のリヒャルト・モイスル局長は、今回の衝突確率がアポフィスを上回ることを「歴史的」だと述べた。ただし、ESAは「2024 YR4」の衝突確率をNASAよりわずかに低い2.8%と見積もっている。
モイスル氏は「これは非常にまれな事象だ」とした上で、「現時点では危機とは言えない。これはダイナソー(恐竜)・キラーでもプラネット(惑星)・キラーでもない。被害が及ぶとしても、最大で都市一つの範囲にとどまる」と指摘した。
惑星協会のベッツ氏によれば、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データが、「2024 YR4」の軌道をより深く理解する鍵となる。「ウェッブは非常に暗い天体も観測することができる」と同氏は述べた。
「2024 YR4」は現在、木星に向かっており、次に地球へ接近するのは2028年となるため、ウェッブの能力が重要になるという。
モイスル氏によると、衝突確率が10%を超えた場合、IAWNは正式な警告を発し、潜在的な脅威にさらされる国連加盟国に対し、防衛対策に着手するよう勧告する。
6600万年前に恐竜を絶滅させた直径10キロの小惑星とは異なり、「2024 YR4」は「シティー・キラー」に分類されている。地球規模の大惨事を引き起こすことはないが、それでも大きな破壊をもたらす可能性がある。
壊滅的な被害をもたらす要因は、その大きさではなく、衝突時に時速約6万4000キロに達すると想定される速度だ。地球の大気圏に突入した場合、最も可能性が高いシナリオは空中爆発である。その爆発力はTNT火薬換算で8メガトン、広島型原爆の500倍以上に相当する。
しかし、もし「2024 YR4」のサイズが推定値の上限に近い場合、地表に衝突し、クレーターが形成される可能性も否定できないとベッツ氏は指摘する。
衝突の可能性がある地域は、東太平洋、南米北部、大西洋、アフリカ、アラビア半島、南アジアとされる。しかし、モイスル氏は移住などの抜本的な措置を検討するのは時期尚早だと述べた。対策を講じるための時間は十分にある。
NASAが2022年に実施した「ダート(DART)」ミッションでは、宇宙船を小惑星に衝突させることでその軌道を変えられることが実証された。また、科学者らは、レーザーを使って小惑星の表面の一部を蒸発させて推進力を生み出す方法や、宇宙船の重力を利用して軌道を変える方法、さらには最後の手段として核爆発を用いる方法など、複数の対策を理論的に提示している。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件