【Xinhua News】中国の北京大学現代農業研究院、濰坊(いほう)現代農業山東省実験室、コムギ育種全国重点実験室がこのほど、6倍体コムギの完全なゲノム地図解析に成功し、研究成果を国際学術誌ネイチャー・ジェネティクスに発表した。今回の研究により、コムギゲノムの正確な「ジグソーパズル」が完成した。
専門家は今回の成果について、中国の農業ゲノム研究分野における新たな進展であり、コムギゲノムの研究が新たな段階に入ったことを意味すると説明。コムギの高収量化や食料安全保障を科学技術面から支える重要な成果だと述べた。
コムギゲノムは「植物界のエベレスト」とも呼ばれる。ゲノムの大きさはイネ40倍近く、ヒトの5倍近くあり、しかも8割以上が繰り返し配列で構成されている。全容を把握するのは難しく、コムギの研究や育種への高度な応用を妨げてきた。
北京大学現代農業研究院の何航(か・こう)研究員は、高精度シーケンスなどの最先端技術と複数のアルゴリズムを組み合わせることで、研究チームが約145億の塩基対を持つ6倍体コムギの「テロメア・トゥ・テロメア」(T2T)ゲノムの構築に成功したと紹介。「テロメアは真核生物の染色体末端に存在する繰り返しDNA配列で、われわれは21対のコムギ染色体を端から端まで完全につなぎ合わせることに初めて成功した」と語った。
同院の首席科学者でもある鄧興旺(とう・こうおう)院長は、ゲノムは複数の染色体を持つ長い線のようなもので、これまでのコムギゲノム解析では多くの欠落部分があったと説明。今回の研究では線の端から端まで一点の欠損もなくつながった完全なコムギゲノム地図を世界で初めて作成したとし「今後の分子育種の基盤を築く成果となった」と述べた。
コムギの遺伝情報を示す完全な「ゲノム地図」を得たことにより、これまで解析が難しかった複雑な領域を詳しく読み解くことが可能になった。
研究チームは、今回得られたゲノム地図を利用し、信頼度の高いタンパク質コード遺伝子14万個以上をアノテーション(注釈)した。新たな病害抵抗性遺伝子も多く含まれ、コムギの病害抵抗性育種に新たな方向性をもたらした。
鄧氏は「今後はゲノム地図を活用することで収量や品質、病害抵抗性に関わる遺伝子をより正確に探し出せるようになる。コムギの品種改良で大きな進展が期待できる」と語った。(記者/魏夢佳)【翻訳編集】Xinhua News/AFPBB News|使用条件