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修理に出せば「ナガク」使える プロに修理を依頼できる リペア・リメイク専門のマッチングサービス 

イメージ図(内容とは関係ありません)

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 持続可能な社会を実現するためには、資源の無駄使いを減らし、環境への負荷を減らすことが必要だ。しかし、相変わらず日々大量にモノが生産され、廃棄され続けている現状がある。

 こうした状況に対し、欧米ではモノを修理する際に「リペアボーナス」と呼ばれる補助金を給付する国が現れるなど、「モノを直して長く使う」ことを推奨する社会的風潮が高まりつつある。

 日本においても「モノを直して長く使う」ことを後押しするサービスが登場した。それが、2023年創業のナガク株式会社(長野県長野市)が開発したリペア・リメイクサービス「ナガク」だ。同サービスは、モノを修理したい人がオンライン上で修理のプロや事例を探して依頼できるマッチングサービスで、今年(2025年)2月にリリースされた。

「ナガク」とはどのようなサービスで、どういった展望を描いているのか。同社代表取締役CEOの渡部一紀氏に話を聞いた。

「直したい人」と「直せる人」の出会いの場

 渡部氏によると、「ナガク」は「モノを直すスキルを持った人」と「それを直してほしい人」をマッチングするサービスだ。

 ジュエリー、靴、着物、家具、包丁、革製品などを直すスキルを持つ事業者が登録しており、利用者はその中から自分が直したいモノを扱う事業者を検索し、メッセージ機能を使って修理を依頼し、代金の決済もできる。なお、現時点では「郵送で運べるサイズ感のモノ」が対象となっているが、将来的には「オールジャンルでモノを直すことができるプラットフォーム」を目指すとのこと。

 同サービスの特徴のひとつは「事業者が修理事例の“ビフォア・アフター画像”を投稿できること」だという。

「こうした修理事例の投稿を通して、ユーザーは自分が持っているモノが『こんな風に直してもらえるのだ』ということをイメージできます。やはりリペアやリメイクの分野は『壊れた状態』と『それを直した状態』がわかることが大切です。そこで『ナガク』ではビフォア・アフターの画像をスライダーで切り替えられるインターフェイスを採用しました。リペア・リメイクに特化したサービスならではの表現方法だと考えています」(渡部氏)

「ナガク」の特徴と機能(画像提供:ナガク)
「ナガク」の特徴と機能(画像提供:ナガク)

 さらに渡部氏は「事業者の業務を改善(DX)できる」点も特徴にあげた。

「ナガク」では、事業者が登録する際に自身のページで「修理にかかる期間」や「費用」を明示する仕組みになっており、ユーザーはその情報をもとに修理の相談を持ちかけることになる。一見当たり前のことのようにも思えるが、実はこのことが事業者の業務改善の一助になるという。

 通常、修理に必要な費用や期間について、利用者には正確な情報がない。そうした状況で見積もりを提示すると、その金額や修理完了までの時間が期待していたものとは異なり発注に至らないことがある。職人は、受注に至らないことには売上がたたない。見積もりを出し、利用者とやり取りしただけで終わると、その時間は無駄になってしまう。

 こうしたリスクを防ぐためにも、費用と修理期間を提示することは重要で、サービスリリース当初から、この仕組みは実装されている。

 また「ナガク」では各案件が現在どの段階にあるのかを知ることができる仕組みがあり、これも業務改善につながるという。

「リペアやリメイクの業界には小規模事業者が多く、案件管理が負担となっている方もたくさんいます。『ナガク』では、『相談が来た段階』だとか『依頼が確定済み』といったように各案件の段階がラベリングされるので、たとえば『依頼が確定した案件』がどれくらいあるのかをフィルタリングして調べるといったことも簡単にでき、案件管理の負担が減ります。このように、ユーザーのみならず、事業者側の業務改善につながる仕掛けを実装している点も『ナガク』の強みとなっています」

「 情報集約の場がない」と気づいたことが契機に

なぜ「ナガク」を立ち上げたのか。渡部氏は「直せるはずのモノが大量に捨てられている状況に一石を投じたい」思いがあったからだと説明する。

ナガク代表取締役CEOの渡部氏(画像提供:ナガク)
ナガク代表取締役CEOの渡部氏(画像提供:ナガク)

「(モノを)買い替えることの全てが悪だとは思っていませんが、今の社会はやはり過剰だと思います。たとえば10個の壊れたモノがあったときに、現状では1個だけしか直されていないとすると(世の中のリソースとして)これを2、3個ぐらいまで直せる“余地”はあると思うのですね」

 そうした余地があるのに、なぜモノが直されないのか。その理由を突き詰めていくと、「修理や事業者の情報が集約されている“場”がなく、どのように依頼すればいいのかわからない」ことが要因のひとつではないか考えるようになった。

「だったら自分たちでそういう場を創ろうと。それで開発したのが『ナガク』です」

「修理に関する情報が集約されていない」ことに気づいたのは、長野市で渡部氏の友人が所有する古民家をDIYでリノベーションしていた時だという。

「古民家を自分たちの手で直すことは、とても楽しい体験でした。ただ、作業を進めていくと、どうしても一部業者さんにお願いしないといけないことが出てきました。その際、個人事業者のウェブサイトなどはあるものの、たとえば『食べログ』で飲食店を探すように、たくさんの情報が集まる中から事業者を探す体験はできませんでした。この時に、修理に関する情報を集約する意義は大きいと直感したのです」

業界のデファクトスタンダードへ

 今年リリースしたばかりの「ナガク」だが、すでに100近い事業者が登録し、多くのジャンルで修理の依頼が発生しているという。

「まだ事業者の数はそこまで多くありません。しかし、各ジャンルで少なくとも5人ほど登録してくれれば、ユーザーがその中で選べるようになります。そういった意味では、単純にインターネットで個人(事業者)のウェブサイトを検索する……。という従来の探し方よりも、我々のサービスの方が選びやすい状況が生まれています。実際に修理依頼もコンスタントに発生しており、一定数の課題解決につながっていることを実感し始めているところです」

 この先は、ネット広告を打つなど一般的なマーケティング手法を一通り試していく予定だが、特に事業者が投稿する“ビフォア・アフターの画像”をSNS広告などに用いることで、広く利用を促したいと渡部氏は意気込む。

「そのほかに注力すべき点は機能の拡充です。すでに最低限の機能は実装していますが、たとえばユーザー向けのサイト内検索機能をもっと拡充していくなどし、より利便性を向上していく必要があります。またそれと並行して、広くサービスを知ってもらい、修理のプロの方にもっと参加してもらいながら、最終的にはこの業界のデファクトスタンダードを目指したいと思います」

 資金調達については、機会があれば随時行う予定で、リペア・リメイクジャンルに関心を持つ投資家がいれば「いつでもお声がけください」とのことだ。

 大量生産・大量消費の社会に行き詰まりを感じている人も多い。そうした中で「ナガク」という新たなサービスは時代の要求と合致する。同社の事業展開を引き続き注視したい。

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有限会社ガーデンシティ・プランニングにてライティングとディレクションを担当。ICT関連や街づくり関連をテーマにしたコンテンツ制作を中心に活動する。