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北京はいかにしてユニコーン企業の成長の沃土となったのか

北京市のユニコーン企業「馭勢科技」は、自動運転の中核技術を開発しており、国家級の「小巨人企業」としても認定されている。写真は、同社が開発した無人運転用の制御機器の展示の様子(2025年6月16日撮影)。(c)CNS/王紫儒

北京市のユニコーン企業「馭勢科技」は、自動運転の中核技術を開発しており、国家級の「小巨人企業」としても認定されている。写真は、同社が開発した無人運転用の制御機器の展示の様子(2025年6月16日撮影)。(c)CNS/王紫儒

【東方新報】中国各地の経済やイノベーションの現場を取材する全国企画「2025年・活力中国調査行」の一環として、北京市に焦点を当てた取材活動が行われている。その中で明らかになったのは、北京には現在ユニコーン企業が115社存在し、その総評価額は5949億ドル(約86兆2486億円)に達しており、企業数・評価額ともに5年連続で全国トップを維持しているという事実である。

 北京は「ユニコーンの都市」と称されている。中関村ハイテク産業促進センターの副主任・方瑢(Fang Rong)氏によれば、北京市のユニコーン企業は旺盛なイノベーションを背景に、新たな生産力の急成長を後押ししている。2024年には北京で新たに23社のユニコーン企業が誕生し、そのうち13社は、生成AI、スマートモビリティ、細胞治療、商業宇宙開発、メタバース、新型蓄電、そして水素エネルギーなどの未来産業の分野に属している。また、これら未来産業系企業のうち9社は、設立からわずか3年でユニコーンとなっている。さらに、合成生物学や具身型AI(エンボディド・インテリジェンス)などの分野でも、北京には将来的にユニコーンとなる可能性のある企業群がすでに蓄積されている。

 北京市のユニコーン企業の多くは「ハードコア技術(=本格的な先端技術)」を有している。ハードテック系ユニコーン企業は全体の71.3%を占めており、2020年から28.3ポイント増加し、年間平均7%の成長率を保っている。人工知能(AI)や商業宇宙開発などの技術分野においては、世界をリードするような重大なイノベーション成果を次々と生み出している。

 たとえば、人間の操作を模倣してスマートフォンやパソコンを扱える世界初の自律型AIエージェント、連続打ち上げに成功した世界初の液体酸素メタンロケット、世界初のRISC-Vエッジコンピューティング用チップなどがある。

 同時に、ユニコーン企業は新たな応用シーンの開拓にも積極的である。AI医療分野では、人工知能(AI)による画像診断支援システムが北京市内の地域医療機関で広く活用されており、自動運転分野では、完全無人運転による配車サービスや、拠点間シャトル運行などの遠隔テストが先行して実施されている。

 ユニコーン企業は、グローバル経済を活性化させる「新しいエンジン」となっており、商業宇宙分野では、低軌道衛星によるブロードバンド通信がタイでネットワーク試験を成功させている。

 では、なぜ北京がユニコーン企業の発展の沃土となり得たのか。方瑢氏によれば、それは「エコシステムに基づき、イノベーションを源とし、資本によって成長し、市場によって完成する」というユニコーン企業の成長原理に基づいて、北京が「特別政策+伴走型支援+イノベーション育成+先進的インキュベーション」という「四位一体」の育成体制を構築したことにあるという。

 特別政策の面では、「ユニコーン企業10条」を打ち出し、上場支援、空間確保、人材の定住などあらゆる面で企業を全力で支援している。たとえば、ユニコーン企業に対してストックオプション課税の繰り延べや混合用途地の活用、新卒人材の別枠定住枠の付与などの政策が用意されている。また、データの越境活用や応用シーンとのマッチングといった利便性の高いサービスも提供している。さらに、市のリーダーが主導する投資調整メカニズムを構築し、ハードテックユニコーンを代表とする成長型イノベーション企業への資本誘導を進めている。

 北京は、ユニコーン企業に「伴走型サービス」も提供している。北京市の重点企業向け「サービスパッケージ」や中関村(Zhongguancun)ユニコーン企業連盟を通じて、「政府+市場」による二重構成の専門サポート体制が整えられ、企業が求める応用シーンや日常的なニーズに応えるサービスが年平均約300件も提供されている。企業の満足度も向上し、北京への投資意欲やイノベーション意識も高まり続けている。

 イノベーション育成の面でも、北京市は長年にわたりユニコーン企業の成長過程に寄り添う「伴走型育成」に注力しており、科学技術プロジェクトやイノベーションプラットフォームなどを通じて、潜在的ユニコーンや既存ユニコーン企業の技術革新力と中核的競争力の強化を支援してきた。この5年間で、38社のユニコーン企業が上場している。

 さらに、北京は先端インキュベーションにも注力しており、テクノロジーインキュベーターの「源」としての機能を十分に発揮し、特化型産業パークを通じてイノベーションリソースの集積を促進し、ユニコーン企業の受け皿としての機能を担っている。北京市内には500以上のインキュベーション施設があり、そのうち25か所がモデル的存在、69か所が国家級インキュベーターとなっており、これまでに30社以上のユニコーン企業を育成してきた。また、北京市には現在40か所の特色ある産業パークが存在し、50社以上のユニコーン企業がそこに集まっている。【翻訳編集】東方新報/AFPBB News|使用条件

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