スマートコーヒー農園(提供写真)。(c)CNS
【東方新報】中国・雲南省(Yunnan)保山市(Baoshan)の潞江壩にあるスマートコーヒー農園では広がるコーヒー畑のあちこちに設置された白い監視装置が、土壌の湿度や気温などのデータをリアルタイムで収集していた。農家はスマートフォンのアプリで各区画の生育環境をいつでも確認でき、これまで「天候に頼る」しかなかったコーヒー栽培に、「スマートブレイン」が搭載されつつある。
雲南省は中国最大のコーヒー生産地であり、栽培面積・生産量ともに全国の98%以上を占めている。中でも保山市潞江鎮は高品質な小粒種のコーヒーで知られる重要な産地だ。しかし、同地は山がちな地形で栽培環境が複雑な上、管理の粗さなどの問題が長年農家を悩ませてきた。
このスマート農園を運営する楊江春(Yang Jiangchun)氏は、従来の栽培方法では水不足の判断を主に経験に頼っていたと語る。経験豊富な農家は土を手に取って判断していたが、こうした方法は正確性に欠け、大規模な農地には対応できない。さらに厄介なのは病害虫対策で、発見したときにはすでに広範囲に広がっていることも多かった。
この現状を打破するため、農園では中国移動(チャイナモバイル、China Mobile)雲南公司(以下「雲南移動」)が浙江理工大学(Zhejiang Sci-Tech University)、保山学院など複数の大学と連携して開発した「雲智農鏈(クラウド・スマート・アグリチェーン)」プラットフォームを導入し、コーヒー栽培のデジタル転換を始めた。
管理用の大型モニターに農園全体(約100ムー=約6.7ヘクタール)が17の区画に細かく分けられて表示され、それぞれの「生命兆候」が一目で把握できる。例えば3号区画の土壌湿度が19.8%に低下すると赤い警告ランプが点灯し、システムが自動で灌漑(かんがい)を開始、ドリップ設備による正確な給水が始まる。10号区画では湿度が18.5%、窒素量がやや少なく「窒素肥料の補充を推奨、6kg必要」とシステムが提示。「コーヒーはまるで十月十日の赤ん坊のようで、各段階で異なる『栄養食』が必要なんです」と楊氏は語る。開花期にはカルシウムとマグネシウムで開花と結実を促し、幼果期には窒素で果肉を充実させ、色づき期にはカリウムで糖度を高める。このシステムはコーヒーの生育モデルと、5分ごとに更新されるリアルタイムデータをもとに水や肥料の最適な配分を計算し、品質の均一性を保つだけでなく、管理コストも大きく削減できるという。
病害虫対策でも、このプラットフォームの力は際立っている。収量への最大の脅威であるコーヒーさび病について、従来の対応は後手に回りがちだった。現在では、感染の兆候が検知されると、システムが自動でドローンを派遣し、AI画像認識で病害の有無を分析し、事前予防を可能にしている。
こうしたデジタル化による効果は具体的に現れている。楊氏によると、システム導入後、農園の単位面積当たりの収穫量は約20%増加し、高品質豆の割合も70%未満から85%以上に上昇した。さらに、精密管理によって、コーヒーの育成周期はこれまでの4~5年から約3年に短縮され、1ムー(約666.7平方メートル)あたりの管理コストもおよそ1000元(約1万9990円)削減されたという。
さらにこのプラットフォームは生産工程だけでなく、全工程の追跡システムも構築している。栽培、収穫、加工、保管に至るまで、あらゆる工程のデータがブロックチェーンに記録され、改ざんできない「デジタル履歴」として保存されている。消費者はQRコードをスキャンするだけで、コーヒー豆の成長過程をすべてたどることができる。
コーヒー栽培のデジタル化は、雲南省の高原特色農業の現代化を象徴する事例でもある。雲南移動の政企顧客部・史雲(Shi Yun)総経理は、「今後、『雲智農鏈』は雲南省内の他のコーヒー栽培基地にも段階的に導入し、『雲南の薬草』『雲南の花』『雲南の果物』『雲南の野菜』といった高原特産農産物にも展開し、雲南を『農業大省』から『農業強省』へと押し上げたい」と語った。【翻訳編集】東方新報/AFPBB News|使用条件