教室で数学の問題を解く生徒(2012年10月15日撮影、資料写真)。(c)PETER PARKS:AFP
【AFP=時事】米オンライン科学誌プロス・バイオロジー(PLOS Biology)に1日、軽い電気刺激が算数の成績を向上させる可能性があるとする研究論文が発表された。この研究は、数学的能力の背後にある脳のメカニズムについて新たな洞察を提供し、学習を最適化するための潜在的な方法を示唆するものとなった。
研究を主導した英サリー大学の神経科学者、ロイ・コーエン・カドシュ氏は、こうした能力については「適切な学校に通うとか、良い教師に出会うといった、環境的要因が考慮されることが多い。しかし、それだけでなく私たちの生物学的な側面も影響している」と話す。
カドシュ氏らは、英オックスフォード大学の学生72人を対象に脳をスキャンし、主要な三つの脳領域間の接続性を測定した。被験者は、計算して答えを出すか、暗記した解答を思い出すタイプの数学の問題に取り組んだ。
その結果、実行機能を司る背外側前頭前野と記憶に関与する後頭頂皮質の間の接続が強いほど、計算の成績が良いことが分かった。また、電極付きのヘッドセットを使用した無痛の脳刺激法(経頭蓋ランダムノイズ刺激として知られる技術)を適用したところ、スコアがより低かった参加者の成績が25~29%向上した。ただし、もともとスコアが高かった参加者の成績には変化はみられなかった。
実験から得られた結果を受けて、研究チームは、こうした刺激がニューロンの興奮性を高め、過剰な活動を抑制する脳内化学物質であるGABAと相互作用することで、弱い神経接続を効果的に補っている可能性があると考えている。
カドシュ氏は、研究室以外で同様の試みを行わないよう注意を呼びかけたうえで、研究が進めば今後、学習に苦労している人を助け、これまでは手の届かないと思われていた機会を開放することにつながる可能性があるとしている。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件