オープンAIのサム・アルトマンCEO(2025年2月11日撮影)。(c)JOEL SAGET AFP
【AFP=時事】チャットGPTなどの生成AIにより、オンライン検索の利用が減少している。その影響で、ニュースサイトへの訪問者も減り、主な収入源である広告収益は厳しい状況だ。
生き残り競争の激しさが増すメディア業界は今、大打撃を受けている。ボストン・グローブ・メディアの研究開発担当副社長、マット・カロリアン氏は、どのメディアも今後3~4年は非常に厳しい時期を迎えると予測し、「迫りくるAIによる要約の嵐から、誰も免れることはできない。(メディアは)自らの避難所を築く必要がある。さもなければ、押し流されるリスクがある」と警告した。
米国の調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、グーグル検索で定期的に表示されるAI生成の要約により、ユーザーが各サイトのリンクを直接クリックする頻度は半減しているという。これは、オンラインメディアにとって貴重な訪問者の大幅な減少につながっている。
ノースイースタン大学のジョン・ウィベイ教授は、これらの傾向は「加速し、まったく異なるウェブが出現するだろう」と予測する。グーグルやメタの影響により、オンラインメディアの広告収益は既に激減し、メディア業界のサブスク化を加速させている。しかし、ウィベイ氏は、サブスクもユーザーのアクセスに依存しており、有料購読者だけでは大手メディアを支えることはできないと指摘する。
カロリアン氏によると、ボストン・グローブ・グループは、チャットGPTを通じて購読者が登録し始めており、読者との新しい接点になりうるとしている。
生き残りをかけたメディア業界は、従来のSEO(検索エンジン最適化)からGEO(生成エンジン最適化)にかじを切り始めた。SEOが、検索結果の上位表示を目指すのに対し、GEOは、AIが生成する検索結果に、自社コンテンツが引用されるように最適化することを目指す。GEOでは、AIモデルに、明確にラベル付けされたコンテンツや理解しやすいテキストを提供することなどが含まれる。
しかし、スタートアップ企業OtterlyAIのトーマス・ペハム最高経営責任者(CEO)は、生成AIのクローラー(ネット上の情報を自動的に収集するプログラム)にウェブサイトをクロールさせることには「根本的な問題」があると指摘する。主要なAI企業によるデータ収集に対して、ニュースメディアは、AIクローラーがコンテンツにアクセスするのをブロックすることで対抗してきた。「私たちのコンテンツを使用する企業が、公正な市場価値を支払っていることを確認する必要がある」と、ニュースメディア連合のダニエル・コフィー氏は主張する。
この分野では、いくつかの進展が見られる。ニューヨーク・タイムズとアマゾン、グーグルとAP、そしてミストラルとAFPなど主要なプレーヤー間でライセンス契約が結ばれている。しかし、ニューヨーク・タイムズがオープンAIとマイクロソフトに対して起こした大規模な訴訟など、いくつかの主要な法的闘争も進行中だ。
メディア業界は今、ジレンマに直面している。AIクローラーをブロックすることでコンテンツを保護できる引き換えに、潜在的な新しい読者への露出が減少する。この課題に直面し、「メディア業界のトップはアクセスの再開を進めている」とペハム氏はみている。しかし、アクセスを再開しても成功の保証はない。
カロリアン氏は、「いずれにせよ、誰かが報道しなければならない。オリジナルのジャーナリズムがなければ、これらのAIプラットフォームは要約するものが何もない」という。
グーグルはすでにニュース組織と提携して生成AI機能にフィードするパートナーシップを開発しており、将来の可能性を示唆している。「プラットフォームはどれだけメディアが必要かを認識するだろう」とウィベイ氏は言うが、その認識が苦境に立つニュースメディアを救うことができるのかは依然不透明だ。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件