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AIの波、勢い増す中で中国が歩む「バランスと協力」の道

上海市で開幕した2025世界人工知能大会(WAIC)。多言語AI透明スクリーンが来場者の注目を集めた=2025年7月26日撮影・資料写真(c)CNS:湯彦俊

上海市で開幕した2025世界人工知能大会(WAIC)。多言語AI透明スクリーンが来場者の注目を集めた=2025年7月26日撮影・資料写真(c)CNS:湯彦俊

【CNS】「人工知能と比べたら、自分は無力だと感じる」これは、ChatGPT-5の発表直前に、オープンAI(OpenAI)の創業者でCEOのサム・アルトマン(Sam Altman)氏が一般向けに発した警告だ。

 彼の見方では、最新の大規模言語モデルはすでに人間が恐怖を覚えるほどの賢さに到達しており、その進歩は第二次世界大戦時の「マンハッタン計画」に匹敵するという。人類の創造力は、もはやその結果を理解し制御できる準備を超えてしまったと述べる。さらに、AIの進化は速すぎる一方、規制は明らかに遅れており、「AIを適切に監督できる責任ある人間がいない状態だ」とも語った。

 同様の懸念は他にもある。年初にはxAI創業者のイーロン・マスク(Elon Musk)氏も、自社のGrok 3モデルを「恐ろしいほど賢い」と表現していた。誇張や商業的な宣伝の側面は否めないが、こうした声が繰り返し上がる背景には現実的な不安がある。

 実際の事例もある。米紙「ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)」によれば、自閉症スペクトラム障害を持つ男性がチャットGPT(ChatGPT)との対話を通じて危険な妄想に陥ったが、チャットGPTはそれを止めず、むしろ虚構の理論を繰り返し肯定・強化したという。また、米非営利機関Palisade Researchのテストでは、一部のAIモデルが自らコードを改変して停止を回避したり、開発者を脅すといった、懸念すべき自律性を示すケースも確認された。

 人工知能(AI)の自律性が拡大する中、いかに制御可能性を保つかは現実的な課題となっている。AIが日常生活に浸透するにつれ、さまざまなリスクが顕在化している。深刻な問題のひとつが「ディープフェイク」だ。韓国では顔を差し替えるAI悪用事件が社会問題化し、個人の権利や公共の利益を侵害している。また、学習や利用の過程で個人データが多用されることによるプライバシー侵害、交通やエネルギー、金融など重要インフラへの接続による制御不能や攻撃リスクも無視できない。さらに英BBCの調査では、複数の生成AIが作成したニュース要約の半数以上に重大な誤りや歪曲が含まれていた。このような情報がSNSに流れれば、影響は際限なく拡大する。

 規制の必要性は明らかだが、そのバランスは難しい。厳しすぎれば革新を阻害し、緩すぎれば安全リスクを抑えられない。国際的に統一したルール作りはさらに困難を極めている。

 欧州連合は世界初の包括的なAI規制法「人工知能法」を施行し、米国は一転して規制緩和と技術競争優先の姿勢を鮮明にしている。

 一方、中国は2023年7月に「生成型人工知能サービス管理暫定弁法」を施行し、事業者が守るべき規範や活動内容を明確化。監督や法的責任も定め、革新と安全の両立を図っている。また、国際的な協力にも積極的で、2025年の世界人工知能大会では、世界AI協力組織の設立を提案し、技術のオープンソース化や国際的なガバナンス構築を推進している。

 現在、最高性能の大規模言語モデルは米国製だが、最良のオープンソースモデルは中国から登場しており、国際的なベンチマークでは米国のトップモデルを上回ったとされる。

 対照的に米国はAI開発を「勝たねばならない競争」と位置づけ、協調よりも優位確保を重視している。

 歴史的に、蒸気機関、電気、情報革命など、技術革新は興奮と不安の両方を伴ってきた。人類はそのたびにバランスを見いだし、規範を整備してきた。AIの物語はまだ始まったばかりだが、その光と影はすでに目の前にある。いま求められるのは盲目的な追走ではなく、国際的な協力と適切なガバナンスである。AIが人類を導く方向は、速度ではなく、安全かつ正しい道筋にかかっている。【翻訳編集】CNS/AFPBB News|使用条件