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決済の多様化やグローバル展開支援 スマホゲーム、法整備で変化の兆し〜TGS2025 

TGS2025の様子

TGS2025の様子

 日本最大級のゲームイベント「東京ゲームショウ2025(主催:一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA) 以下、TGS2025)」が9月25日よりスタートした。(会期は9月28日まで、25・26日はビジネスデイ、一般公開日は27・28日)

 今年のテーマは「遊びきれない、無限の遊び場」。出展社数は過去最大の1,136社となった。韓国、中国を始め海外からの出展や来場者の姿も多く、アジアのゲームビジネス・ハブとして日本が機能していることが実感された。

 さて、毎度のことながら、TGS2025におけるゲームタイトル関連の詳報は専門サイトに譲り、ここでは今年はスマホのゲームアプリのビジネス環境の変化を紹介したい。

 スマホのゲームアプリのビジネス環境に大きな変化をもたらす法律が今年の12月18日に施行される。「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」だ。(世間では略して「スマホ新法」と称されているが、この法律の運用担当で、後述のイベントに登壇した公正取引委員会 官房参事官<デジタル担当)>チーフグリーンオフィサーの鈴木健太氏からは「成立から時間も経っているので新法ではなく「スマホ法」で、という発言もあったので、以下「スマホ法」。)

 25日のTGSフォーラムのひとコマ「スマホ法~公正取引委員会と語るアプリ課金決済の未来~」が開催された。登壇者は前出の公正取引委員会の鈴木氏とデジタルガレージアプリビジネス推進本部アプリペイ事業部 部長/アプリマーケティング部 部長の丸山恭平の2人だ。

 鈴木氏は、スマホ法の概要と立法の目的を説明した。日本のスマホ法は欧州のデジタル市場法(Digital Markets Act 以下、DMA)との比較で語られることが多い。DMAの規制を受ける側からは、欧州では法律が施行されることで機能制限やサービス低下が現実のものとなり、日本にも同様の懸念がある旨の発言も出ている。

スマホ法について説明をする鈴木氏

 鈴木氏によれば、スマホ法は欧州のDMAを下敷きにしたのではなく、7年ほど前から検討されてきたものである。この先もユーザーの利便性を損なわないよう、規制を受ける側とも綿密なコミュニケーションを重ねながら準備を進めているとのこと。

 懸念がある一方で、スマホ法施行で期待されるのは、新たなアプリストアの登場や課金システムの多様化、アプリ外での課金や商品提供の拡大、マーケティングの多様化などが見込まれる。また、OSの便利な機能の利用可能性向上やデータポータビリティの確保、ブラウザや検索エンジンの選択促進なども期待される。

 さらにスマホアプリのビジネスの環境にも変化が起きる。そのひとつが「アプリ外課金」の拡大だ。アプリの月額利用料、アプリ内で購入するアイテムの課金などはこれまで、原則アプリ内課金を利用してきた。アプリ内課金を利用にあたってプラットフォーム事業者に支払う手数料は、通常売上の3割となる。これには課金手数料以外に様々な便宜の提供に関わる費用が含まれているものの、アプリ提供社にとって、この料率は厳しいものであった。

 アプリ外での課金、つまり課金が必要なシーンにおいて、一旦アプリ外のWEBサイトに出て、課金を済ませた証をもってアプリに戻ってくることは、これまでも技術的には不可能ではなかった。しかし、課金するサイトへのリンク設定、課金済みであることをアプリで確認するための技術の開示など、プラットフォーム事業者の積極的な理解と協力がなければ、実装が難しいため、プラットフォーム事業者のアプリストアで購入したアプリに関する課金は、事実上、その事業者のアプリ内課金一択だった。

デジタルガレージの丸山

 こうした制約は、スマホ法の施行で緩やかに変化していくはずだ。プラットフォーム事業者の管理外のアプリが増えると、セキュリティーや信頼性、公序良俗などの面で懸念されることも多い。デジタルガレージの丸山によれば、今年12月以降も、EUのDMA施行後の状況を踏まえると、日本でも様々なアプリに関する規制が一気に開放されることは難しいと予測している。ただ、これを起点にアプリビジネス、特に課金方法に関しての選択肢が多様化するのは間違いない。

 現在のビジネススキームの中で、国内スマホゲームの売上はほぼ横ばいだ。課金の手段が広がることによって、利用者層が拡大し、国内市場が広がることが期待されている。さらに、デジタルガレージではグローバル展開をサポートするために、世界各国で、ゲーム・アプリ事業者様に代わり法的な販売主体を担うMerchant of Record(MoR)機能の提供も始めた。

 ローカライズのための多言語展開なども、生成AIの進化で比較的容易になった昨今、スマホアプリのゲームも国内市場に留まる必要はないだろう。ルールを整備し、グローバル化をサポートする仕組みも上手く使って、IP/ゲーム関連ビジネスが日本の基幹産業となることを期待したい。

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