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「巨大なおもちゃ」から実用レベルに〜【三里河中国経済観察】中国のヒューマノイドロボット産業、急拡大へ

2025年世界ロボット大会で展示されたヒューマノイドロボット=提供写真(c)CNS

2025年世界ロボット大会で展示されたヒューマノイドロボット=提供写真(c)CNS

【CNS】中国でヒューマノイドロボットの大型受注が相次いでいる。9月3日夜、深セン市(Shenzhen)を拠点とするヒューマノイド(人型)ロボット企業・優必選科技(UBTech Robotics)が25億元(約523億175万円)規模の契約を獲得したと発表した。単一契約としては世界最大級とされる。さらに、智元機器人(Agibot)と宇樹科技(Unitree Robotics)は中国移動(チャイナモバイル、China Mobile)傘下企業の「ヒューマノイド二足ロボット代工サービス調達プロジェクト」を落札、契約総額は12億4000万元(約259億4166万円)に達した。

 相次ぐ「億元単位」の契約は、単なる数字以上の意味を持つ。長年の技術検証を経て、ヒューマノイドロボットが本格的な商業化局面を迎えつつあることを示している。春節(旧正月、Lunar New Year)の舞台で踊りを披露し、マラソンに参加し、世界人形ロボット大会に登場、そして工場で働くまでに進化を遂げてきた。いまや「商業化元年」を迎え、産業の熱気は一気に高まっている。

 2025年世界ロボット大会で、宇樹科技の創業者兼CEO、王興興(Wang Xingxing)氏は「今後数年、世界のヒューマノイドロボット出荷量は年2倍ペースで拡大が見込まれる。大きな技術突破があれば、2〜3年以内に年間数十万台から100万台規模に達する可能性もある」と予測した。

 資本の動きも加速している。中国の調査機関、高工ロボット産業研究所によると、2025年上半期の中国ヒューマノイドロボット関連の資金調達件数は87件、開示額は約109億元(約2280億3563万円)に達した。智元機器人は21億元(約439億3347万円)を投じて上場企業を買収し、A株市場に迂回上場。宇樹科技は1200億元(約2兆5105億円)の評価額で上場準備に入り、年内にも証券取引所に申請書類を提出する見込みだ。モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)は最新の報告書で、2050年には世界のヒューマノイドロボット市場規模が5兆ドル(約744兆6500億円)を超え、年平均成長率は50%を上回ると予測している。

 用途の広がりも目覚ましい。かつては「巨大なおもちゃ」と見なされていたが、いまや生産製造、家事支援、物流、国境警備、教育、医療など多様な分野に浸透し始めた。宇樹科技のロボットは研究・教育・消費市場に導入され、優必選科技の産業用モデル「Walker S2」は3分での自動バッテリー交換や24時間連続稼働が可能。柔軟な動作や遠距離の物体把持といった高難度タスクをこなし、より多くの工業シーンに対応している。

 ヒューマノイドロボットは人工知能(AI)、高度製造、新素材といった先端技術の集大成であり、コンピューター、スマートフォン、新エネルギー車に続く破壊的製品となる可能性を秘める。テスラ(Tesla)創業者イーロン・マスク(Elon Musk)氏もヒューマノイドロボット「オプティマス」に注力し、「将来、テスラの企業価値の約8割はロボット事業が担う」と語っている。

 この世界的な競争で、中国は技術、産業、政策の三重の優位性を構築している。2024年にはロボット関連の特許出願で世界全体の約3分の2を占め、世界のヒューマノイドロボット企業トップ100のうち3分の1超を中国企業が占める。政策面でも、工業・情報化部は2023年に「ヒューマノイドロボット革新発展指導意見」を発表し、2027年までに世界先進水準に到達することを目標に掲げた。さらに2025年8月には国務院が「人工知能+」行動計画を公表し、スマートロボットなど次世代端末の重点育成を打ち出した。

 中国はすでに12年連続で世界最大の産業用ロボット市場であり、完備した工業体系を持つ。これが技術突破の成果を迅速に量産へとつなげる土壌となっている。研究室の試作機から工場の生産力へ、概念先行から受注実現へ。中国のヒューマノイドロボットは新エネルギー車と同様に「中国智造」の新たな名刺となる可能性がある。10年前の新エネルギー車と同じように、技術・資本・産業が三位一体となることで、新しい産業時代の幕開けが訪れつつある。今日の一つひとつの契約、資金調達、特許が、未来の産業地図を形作っている。【翻訳編集】CNS/AFPBB News|使用条件

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