
国連(UN)のアントニオ・グテレス事務総長。スイス・ジュネーブで(2025年10月22日撮影)。(c)Fabrice COFFRINI:AFP
【AFP=時事】国連(UN)のアントニオ・グテレス事務総長は22日、産業革命前の水準からの気温上昇を1.5度に抑えるという目標を短期的には達成できないことが明らかになったと述べた。グテレス氏はジュネーブの世界気象機関(WMO)で「一つはっきりしていることがある。今後数年間で地球温暖化を1.5度以下に抑えることはできない」と述べ、「1.5度を超えることは避けられない。つまり、今後数年間で規模や期間の差はあれ、1.5度を上回る期間が訪れるということだ」と続けた。
その一方で、温室効果ガス排出量をネットゼロに向けて真剣に削減していけば、「私が会ったすべての科学者によれば、世紀末までに1.5度という目標はなお可能だ」とも述べた。
2015年のパリ協定は、産業革命前(1850ー1900年)からの気温上昇を2度未満、可能なら1.5度未満に抑えることを目指しているが、グテレス氏は、各国の最近の排出削減の公約が1.5度目標を満たすには程遠いと指摘した。
科学者らは、気温が一分の一度上がるごとに、熱波や海洋生態系の破壊など災害リスクが悪化すると強調している。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温暖化を1.5度に抑えるためには排出量を大幅に削減する必要があると指摘している。
ブラジルでは来月、国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)が開かれる。COP30の開催を前にグテレス氏は「誤情報や偽情報、オンライン上の嫌がらせ、グリーンウォッシングと戦う必要がある」と強調し、「科学者や研究者は真実を語ることを恐れてはならない」と述べた。
この発言は、国連総会で化石燃料を擁護し、グリーン技術を一蹴したドナルド・トランプ米大統領の演説への反論と受け止められる可能性がある。トランプ氏は演説で「気候変動は、私の意見では、世界で最大の詐欺だ」と述べ、再生可能エネルギーについても「ジョークだ」「機能しない」「高すぎる」と批判した。
それでもグテレス氏は、2024年には「ほぼすべての新規発電容量が再生可能エネルギーによるもので、投資が急増している」とし、「再生可能エネルギーは最も安価で、最も速く、最も賢明な新電源だ。それが気候破壊を食い止める唯一の確かな道だ」と訴えた。
その上で、「地球温暖化は我々の惑星を瀬戸際へと押し上げている。過去10年のすべての年が観測史上最も暑い年だった。海洋の高温は記録を更新し、生態系を壊滅させている。そして、火災、洪水、嵐、熱波から安全な国はない」と述べ、各国に1.5度目標に沿った「大胆な」気候計画の提出を求めた。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件