【東方新報】世界の自動車産業はいま、人工知能(AI)技術の進歩によって大きな転換期を迎えている。10月16日から18日に北京市で開催された「2025世界スマートコネクテッドカー大会」では、「AI×自動車」の潮流が急速に進んでおり、知能化の波が業界の勢力図を塗り替えつつあることが示された。かつてハードウェア中心だった自動車の価値は、いまやソフトウェアが左右する時代に変わりつつある。
中国第一汽車集団(FAW Group)の取締役兼総経理・劉亦功(Liu Yigong)氏は、大規模AIモデルの発展によって「ソフトウェアが自動車の価値を決める」という傾向が明確になりつつあり、サブスクリプションサービスやデータ活用、個別対応型サービスなどが新たな付加価値を生み出していると述べた。劉氏は、2030年には自動車製品の価値構成が「ハードウェア40%、ソフトウェア40%、コンテンツサービス20%」になるとの見通しを示した。
賽力斯汽車(セレス、Seres)の張興海(Zhang Xinghai)董事長は、自動車産業がAIの深い活用段階に入っており、「AI×自動車」が「移動する知能体」へと進化していると語った。AI技術によって実現した能動的な安全機能は、まるで「見えない守護者」のように従来の自動車が抱えていた安全面の課題を解決しているという。
中国移動(チャイナモバイル、China Mobile)の楊杰(Yang Jie)董事長は、AI技術の導入により、スマートコネクテッドカーの技術構造が「一台ごとの知能」から「車両間の協調知能」へと進化していると説明した。具身型AI(エンボディドAI)や世界モデルといった最先端分野の進展によって、AIは人・車・道路などの要素をリアルタイムに正確に対応づけ、現実世界を1対1で再現した「デジタルツイン空間」を構築できるようになっている。この仮想空間では、運転システムが膨大なシミュレーション環境で訓練や学習を行えるだけでなく、天候・道路状況・エネルギー消費などの情報を総合的に分析して、最適な走行判断を下すことも可能になるという。
車両・道路・クラウドの一体化は、スマートカー発展の新しい段階に入った。中国が進める「車・路・クラウド一体化」実証プロジェクトでは、従来の車両単体の知能システムに「デジタルレール(仮想走行軌道)」を追加し、自動運転用のAIモデル開発・訓練・評価のための信頼性の高いデータセットを提供している。
長安汽車(Changan Automobile)の朱華栄(Zhu Huarong)董事長は、2030年までにL2レベルの運転支援が標準装備となり、L3以上の自動運転搭載率が10%を超え、L4レベルの自動運転も段階的に普及していくとの見通しを示した。
中国企業は世界の自動車産業エコシステムの中で、ますます存在感を高めている。中国の自動運転スタートアップ・Momentaの曹旭東(Cao Xudong)CEOは、ここ数年で中国の自動車が電動化と知能化の両面で飛躍的な進歩を遂げており、製品・ソリューション・サービスのいずれの面でも、中国のAI自動車が海外市場に進出するのは自然な流れだと述べた。
AIの発展に伴い、安全性への懸念も高まっている。中国工業情報化部の元主任技師であり、同部情報通信科技委員会の常務副主任兼秘書長である韓夏(Han Xia)氏は、スマートコネクテッドカーの発展には、サイバーセキュリティ、データ保護、機能安全が複雑に絡み合う深刻な課題があると指摘した。
具体的には、車両システムの脆弱性、クラウド基盤のリスク、充電設備への攻撃、データ漏えいのリスクなどがあり、AI技術の普及によってサイバー攻撃はより高度化し、一般化しているという。そのため、ネットワークセキュリティを機能安全と同等に重視する必要があると強調した。張興海氏も、自動車メーカーは安全性の確保を大前提としながら、安全と発展の両立を図る必要があると述べた。
現在、中国では政策面での支援体制も着実に整備されている。工業情報化部装備工業一司の郭守剛(Guo Shougang)副司長によると、中国はすでに政策や標準化の面で一連の支援策を打ち出し、産業の発展に明確な成果を上げているという。今後は制度設計の強化、実証プロジェクトの拡充、標準化と協調メカニズムの整備をさらに進めていく方針だ。また、工業情報化部の元部長・苗圩(Miao Wei)氏は大会で、知能化の潮流が世界の自動車産業競争の構図を再構築しており、AIはもはや「付加的な技術」ではなく、企業の存続と発展を左右する中核要素になっていると述べた。
中国の自動車産業は、現在の優位性を生かし、安全を確保しながら、AI技術の導入を科学的かつ秩序立てて進め、運転支援や自動運転の応用範囲を段階的に広げ、着実に商業価値を実現していくことが重要だと強調した。【翻訳編集】東方新報/AFPBB News|使用条件
