
WATTの自律走行ロボット「ジェームス・ワット」(c)KOREA WAVE
【KOREA WAVE】ソウル市城東区のあるオフィステル。ロボットが大量の宅配荷物を載せてエレベーターのボタンを押す。送り状に書かれた住所に従って、玄関前に荷物を置いていく。これは、玄関先まで宅配を届ける配送ロボット「ジェームス」の話だ。
メガ・ニュース(MEGA News)のシン・ヨンビン記者の取材によると、韓国の配送ロボットのスタートアップ企業「WATT」は、集合住宅の宅配ボックスから各世帯の玄関前までの配送を自動化する設備を開発した。既存の建物構造を変える必要がなく、設置が簡単なのが特徴だ。
しかし、韓国国内では実効性に限界があった。すでに玄関前までの配送が一般化しているため、自動化システムが経済的価値を証明する段階が残っている。そこでWATTは、日本市場の扉を先に叩くことにした。「日本はまだ対面での配送が日常です。宅配業者が直接ドアをノックする文化が残っているんです。だからこそ、むしろロボット配送の必要性がより大きいのです」WATTのチェ・ジェウォン代表は、日本がロボット配送の実証に最適な場所だとみた。
WATTはこれを狙い、日本の宅配業界最大手ヤマト運輸と手を組み、東京首都圏の大規模マンション団地で自律配送ロボットの実証実験を進めている。2025年8月から千葉県の「プラウド新浦安パームコート(550世帯)」と東京の「プラウドタワー目黒MARC(301世帯)」などでテストが始まった。ロボットがフロア間を移動しながら荷物を届け、住民は専用アプリで希望の時間に受け取ることができる。
WATTは2020年に創業し、2022年から2023年にかけて本格的な製品開発を進めた。2024年中頃には初の商用プロトタイプを完成させた。「7人の小さなチームですが、ハードウェアからAI、認識アルゴリズムまで全て自社で開発しています。高コストなインフラ改修なしで設置できるのがWATTの差別化ポイントです」チェ代表はこう話す。
設備は宅配ボックスと自律走行ロボットで構成されている。宅配業者は共同玄関に設置された宅配ボックス「W-ステーション」に荷物を積むだけで、自律走行ロボット「ジェームス」が建物内を移動し、玄関前への配送をサポートする。ボックスは平均して34個の荷物を保管できる。ロボット「ジェームス」にはRGB-Dカメラ5台と2Dライダー1台が搭載されており、狭い廊下やエレベーター内でも安定した走行が可能だ。ロボットアームで玄関カードのタグ読み取りやエレベーターのボタン操作も担う。
最も注目すべき特徴は、ロボットに荷物を自動で積み下ろしする技術だ。ステーションは小型コンベヤーのような仕組みでジェームスに荷物を積載し、ジェームスは保管庫を地面近くまで下げて安全に荷物を下ろす。
現在、東京では合計6台のロボット(WATT、MilliWATT、W-ステーションが各2台)が稼働中だ。WATTは2026年までに40台、2027年までに200台規模の商用化を目指している。「今は日本の現場でデータを蓄積している。エレベーターの使用パターン、配送時間帯、住民の応答率などのデータをもとに、ロボットの動線を最適化している」チェ代表は次のように意気込む。「韓国よりも日本での売り上げ比率が高くなる。長期的には、世界中すべての建物環境に対応可能な製品を作るつもりだ」WATTは配送ロボット以外にも新製品「ポーターロボット」を準備中だ。地下駐車場での荷物運搬や、各世帯の倉庫への移動など、建物内の物流移動を自動化することが目標だ。「建物内の主要な物流は、食品、宅配、ゴミの3つです。私たちはその中でも宅配と物流の移動から段階的に自動化を進めています」チェ代表はこう話した。(c)KOREA WAVE/AFPBB News|使用条件