【CNS】近年、中国の科学技術分野では新たな成果が次々と生まれ、先端技術が障害者支援の取り組みに広く応用されるようになっている。医療リハビリなどを助けることで、障害のある人の生活体験を向上させている。
その中でも最も代表的なのが、脳と機械をつなぐ「ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)」技術の応用だ。清華大学(Tsinghua University)、首都医科大学(Capital Medical University)宣武医院などの研究者たちは、10年以上にわたる共同研究によって、無線で実現する低侵襲型のBCI技術を開発した。
特に、清華大学生物医学工学部の洪波(Hong Bo)教授の研究チームは、ここ2年で3つの病院で臨床試験を進めており、今年4月までに3人の下半身まひ患者が脳の指令で車椅子やロボットハンドを操作できるようになった。臨床の正確性は90%に達している。この研究チームは年内に30~50件の埋め込み手術を実施し、世界初の承認を受けたBCI医療機器の実用化を目指している。
中国残疾人連合会の統計によると、中国には約8500万人の障害者がおり、関係する家族人口は2億6000万人にのぼる。そのうち、聴覚障害者は約2780万人だが、専門の手話通訳者は約1万人しかおらず、コミュニケーションの障壁が大きい状況だ。これに対応するため、研究者たちはAIを活用した手話認識・翻訳システムを開発し、ARグラスなどの製品も投入している。
こうした新技術の助けにより、聴覚障害のある人が「聞こえる」環境を得て、健聴者との円滑な交流が可能になりつつある。視覚障害者が直面する課題に対しても、中国ではスマート白杖、電子ガイドグラス、電子ガイド犬などの最新機器が開発されている。スマート白杖と視覚支援眼鏡は、北斗チップとスマートセンサーを使って前方や上方の障害物を検知し、北斗衛星ナビゲーションによって正確なシーン認識と位置案内を実現することで、周囲の状況を把握できるようにしている。
AR字幕グラスやスマート義肢などの先端機器は、すでに北京市の補助対象として登録され、障害者の購入負担軽減に役立っている。これらの新たな障害者支援テクノロジーの登場は、中国の技術者による不断の探究に加え、これらの分野が「未来産業」として政府の強い支援を受けていることも背景にある。
中国中央政府は2024年、障害者支援のための科学技術イノベーションを「科学技術強国」建設の全体計画に組み込んだ。今年7月、中国は「第14次五か年計画(十四五)」計画で掲げたバリアフリー目標を前倒しで達成したと発表し、重度障害者の困窮世帯128万戸の住宅にバリアフリー改修を実施し、3000以上のウェブサイトやアプリが高齢者向け・バリアフリー仕様に改修され、1659か所の点字図書室が設けられた。今後は国家の科学技術戦略のもとで、中国の障害者支援テクノロジーはさらなる発展が見込まれる。
京東健康(JDH)のユーザー調査によれば、現在、利用者のリハビリ・障害者支援製品への需要は明確に変化しており、歩行補助器、補聴器、車椅子、介護ベッドといった主要4分野の検索数が大きく増えている。
需要の強さが浮き彫りになる一方、先端技術の普及にはコストの高さや適合性の課題も残っており、障害当事者が求める実用的なニーズの多くがまだ十分に満たされていない。専門家は、障害者が科学技術の進歩の成果を共有できるようにすることが、世界的な障害者権利保障の新たな意義になるべきだと指摘している。
今後は、関連製品の研究開発が障害当事者の生活により深く入り込み、生活習慣を理解した上で進められる必要があり、政策面での支援強化も不可欠だ。各方面の努力が積み重なれば、使いやすさ、利便性、価格のバランスを兼ね備えた製品がさらに多く生まれ、より多くの障害者が科学技術の恩恵を受けられるようになるだろう。【翻訳編集】CNS/AFPBB News|使用条件
