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ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)産業が黄金期に・中国

北京市で開催されたスマート介護製品を披露するイベントで、ブレイン・マシン・インターフェースを活用した手のリハビリ訓練システムを体験している人=2025年10月25日撮影・資料写真(c)CNS/賈天勇

北京市で開催されたスマート介護製品を披露するイベントで、ブレイン・マシン・インターフェースを活用した手のリハビリ訓練システムを体験している人=2025年10月25日撮影・資料写真(c)CNS/賈天勇

【東方新報】およそ1か月前、上海で初めてブレイン・マシン・インターフェース(BMI)を頭蓋内に埋め込んだ患者・小董(Xiao Dong)さんが、手術から1年を迎えてメディアの前に姿を見せた。4年以上も四肢を動かせなかった彼は、すでに自分の手でペンを握り、文字を書けるまでに回復している。BMI技術は進歩が加速し、かつて治療法が見つからなかった症状に新たな解決策を提示し始めた。

 12月4日には、「未来の脳とつながる都市・上海」を掲げた2025年BMI大会が開催され、最前線の技術や実用化への歩みが披露された。会場全体が、BMI産業が本格的な成長期に入ったことを物語っていた。

 大会では、まひした患者が思考で車いすを操作したり、視覚を失った人が人工的に再構築された「新しい視覚」を得たりする映像が公開され、来場者の注目を集めた。

 中国のBMI先端スタートアップ「階梯医療(StairMed)」が披露した臨床映像では、患者が脳の信号だけで車いすを滑らかに動かし、部屋の中でロボット犬を歩かせる姿が映し出された。これは同社の第1世代BMI装置による成果で、第2世代では電極数を64から256へ増やし、装置寿命も8~12年へと延びる予定だ。操作精度の向上だけでなく、将来的には運動機能だけでなく言語機能の再建にも挑むとしている。さらに第3世代では、BMIとAIが一体となった高度なシステムが構想されている。

 階梯医療の張世強(Zhang Shijiang)執行董事兼チーフプロダクトオフィサーは「BMIは人間と世界のつながり方そのものを変える技術になる」と語る。同社は、まひ、パーキンソン病、うつ病、失明といった疾患に向けた包括的な治療ソリューションを構築し、人と機械の関係を「共生」へと進めたい考えだ。

 視覚再建技術の分野では、中国科学院自動化研究所の劉冰(Liu Bing)副研究員が最新の取り組みを紹介した。彼らの開発した埋め込み型視覚再建システムは、VR空間と多チャンネル神経刺激を組み合わせ、複雑な形や色の知覚を人工的に再構築することに成功した。完全失明の患者が人工視覚を得たという臨床結果は世界初で、機能的視覚を取り戻すための大きな一歩となった。

 劉冰氏は「元の視力を再生するのではなく、新たに世界を見る手段を提供するものです」と説明し、この技術が患者の人生を変える可能性に言及した。また大会では、BMIがまひや失明以外にも、パーキンソン病や強迫症、脊髄損傷、不眠など多くの症状に新しい治療の道を開く可能性が紹介された。

 景昱医療(SceneRay)は、複数の神経回路を同時に調整する新型脳深部刺激装置(DBS 2.0)を発表した。脳の「ペースメーカー」のように働き、震えやこわばりを抑えるだけでなく、難治性強迫症や薬物依存にも効果が見られるという。

 脊髄損傷に向けては、脳と脊髄を直接つなぐ「脳脊インターフェース」が登場した。大脳の運動信号を解析し、損傷部分を迂回して下肢を動かす脊髄神経を直接刺激する方法で、手術負担が少なく、長期的な信号安定性も高いとされる。

 不眠治療の領域では、脳の睡眠機能に合わせて刺激する「澜猫睡眠小屋」が注目された。日中30分の刺激調整を5日間行うプログラムで、300例以上の臨床研究で安全性と効果が確認されている。深い眠りの時間を延ばし、自然な眠気を促すという。

 大会では技術発表に加え、BMI技術を実際に使った競技も行われた。脳信号でロボットアームを動かす競技、脳波でレーシングカーを走らせる競技、感情や疲労を解析するプログラムなど、多彩な種目が設定され、40チームが決勝に進んだ。参加者の平均年齢は25歳と若く、BMI分野の活力を象徴していた。

 上海市科学技術委員会の屈炜(Qu Wei)副主任は「今と未来、そしてテクノロジーが人を支える力」をキーワードに掲げ、企業には臨床のニーズを基点として技術を磨き、生活を本当に豊かにする製品を目指してほしいと語った。

 今回の大会は、新技術、新製品、企業の研究開発、若手チームの挑戦など、多方面からBMI産業の勢いを示した。中国のBMI技術は「追随」から「並走」、さらには「先導」へと進み、政策・産業・技術・臨床が循環する発展モデルを築きつつある。BMI産業の拠点となる上海のBMI産業集積区「脳智天地」を中心に、多くの初公開技術が集まった今回の大会は、この成長期をさらに大きく広げていくことになりそうだ。【翻訳編集】東方新報/AFPBB News|使用条件