【KOREA WAVE】「今年のゲーム」の称号を獲得したゲーム「Clair Obscur: Expedition 33」を巡り、生成型人工知能(AI)の使用を理由に受賞が取り消される異例の事態が起きた。今回の決定は、ゲーム制作におけるAI活用の許容範囲を巡る対立を改めて浮き彫りにした。
海外のゲーム賞である「Indie Game Awards 2025(IGA)」は12月21日(現地時間)、同作に授与したすべての賞を電撃的に取り消すと発表した。制作過程で生成AIを使用しないことを条件とする事前規定に違反したと判断したためだ。完成度は高いものの、純粋な創作性を重視するインディーゲーム界の理念に反するという説明である。
フランスのゲーム開発会社サンドフォール・インタラクティブが手がけた「Expedition 33」は、今年、数々の主要な国際ゲーム賞を席巻した。世界最大規模のゲーム賞である「Indie Game Awards 2025(IGA)」では「今年のゲーム(GOTY)」を含む監督賞、アートディレクション賞など9部門を受賞していた。
今回の受賞取り消しをきっかけに、業界内での「AI論争」は一層激化している。利用者の多くは生成AIに対して拒否感を示す一方、ゲーム会社側は開発効率を高める有効な道具としてAIを位置付けているからだ。
韓国内外の主要ゲーム会社は、開発期間の短縮やコスト削減を目的に生成AIを積極的に導入している。人気ゲーム「ラスト・オブ・アス」の制作総括を務めたニール・ドラックマンは、「AIは固定観念に縛られず、人間の限界を補完できる」と語った。
韓国の大手ゲーム会社NCソフトのAI子会社は、マルチモーダルAI「VARCO(バルコ)3D」を運営している。これはテキストや画像を入力するだけで3Dアセット(開発資料)を生成でき、作業時間を大幅に短縮できる技術だ。また、クラフトンは、端末内で動作する小型言語モデル(SLM)を基盤に、利用者と相互作用する「Co-Playable Character(CPC)」技術を公開した。
韓国コンテンツ振興院の調査では、ゲーム利用者の69.6%が「AI技術はゲーム開発に肯定的な影響を与えている」と回答した。特にNPCの行動精緻化や利用者に合わせたコンテンツ推薦など、システム高度化分野での活用は支持を集めた。一方で、イラストやシナリオといった創作の核心領域をAIが代替することへの反発は根強い。
ゲーム心理分析会社クアンティック・ファウンドリー(Quantic Foundry)の調査では、回答者の62.7%がゲーム制作における生成AI活用に否定的な見解を示した。物語性や世界観といった芸術的要素を重視する利用者ほど拒否感が強い傾向がみられた。マイクロソフト傘下アクティビジョンの「コール・オブ・デューティ:ブラックオプス7」も、生成AIの過度な使用を巡り批判を受けた例として挙げられる。
韓国コンテンツ振興院は報告書で、AIの潜在力を活用しつつ、その限界や副作用を明確に認識する必要があると指摘した。ゲーム利用者協会のイ・チョルウ会長は「消費者は人間の努力が込められた成果物とAI生成物に同じ対価を支払いたくないと考えている。選択権を保障するためにも、AI使用の有無を透明に表示する制度が必要だ」と強調している。【KOREA WAVE】(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News|使用条件
