【CNS】このほど米国で開かれた世界最大級の先端技術の見本市「国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(International Consumer Electronics Show、CES)」では、中国の人型ロボットが大きな注目を集めた。人型ロボットの展示ブース38件のうち、中国企業が21件を占めた。
米半導体大手エヌビディア(Nvidia)の黄仁勳(Jen-Hsun Huang)最高経営責任者(CEO)さんはCESで、ロボット分野はいま「チャットGPT(ChatGPT)のような転機」を迎えていると述べた。これまでのように主に「静止展示」や決められた動きの披露にとどまらず、今年の出展ロボットは、未知の環境でも自ら周囲を把握し、判断しながら課題をこなす能力を示した。
中国では、産業の関心が、見た目の再現や派手な動きの披露から、特定の現場に落とし込む実用へと移る中で、人型ロボットが工場の現場で本格的に試され始めている。活用面では、世界最大の電気自動車用バッテリーメーカーである寧徳時代新能源科技(CATL)が、河南省の生産拠点で人型ロボット「小墨」を大規模に配置し、電池組立ラインで複雑な作業を担わせている。このロボットは高圧プラグの抜き差し作業で成功率99%に達し、1日あたりの作業量は最大で人間の作業者の3倍をこなせるという。モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)が2025年12月に公表した「ロボット年鑑」でも、吉利汽車(Geely Automobile)、小鵬汽車(XPeng)、上海蔚来汽車(NIO)、理想汽車(Li Auto)、小米科技(シャオミ、Xiaomi)、美的集団(Midea)など中国の主要企業が、工場や物流の現場で人型ロボットの試験や導入を進めていると指摘している。
生産と投資の面では、「人型ロボット第一号上場企業」とも呼ばれる優必選科技(UBTech Robotics)が、新世代の産業用人型ロボット「Walker S2」の初回分として、数百台規模の出荷をすでに開始した。これらは自動車製造、スマート製造、スマート物流、具身型AI(エンボディド・インテリジェンス)のデータセンターなど重点分野での活用が見込まれる。さらに、京東(JD.com)や比亜迪汽車(BYD)など、ロボット専業ではない企業も相次いで投資している。京東はスマート物流の強化が狙いとされ、比亜迪は「無人化工場」に向けた布石だとみられている。
賽迪顧問(CCID Consulting)先進製造業研究センターのアナリストである郝璐璐(Hao Lulu)氏は中国メディアの取材に対し、中国の人型ロボットの運動制御は、あらかじめ決めた軌道をなぞる段階から、状況に応じて動きを調整できる段階へ進み、複雑で整っていない工場環境にも対応し始めていると述べた。さらに、具身型AIの深い組み込みによって、環境を認識しながら自ら判断し、学習する能力も備わりつつあるという。
中国情報通信研究院の副総工程師である許志遠(Xu Zhiyuan)氏も、ロボットの上肢操作能力が急速に向上し、キュウリを切る、水を注ぐ、服をたたむといった繊細な作業もできるようになってきたと話す。
一方で、中国の人型ロボットが工場で働き始めたとはいえ、現状は「試験導入」から「一定程度は使える」段階に移ったにすぎず、課題も多い。技術面では、現状のバッテリーでは歩行できる時間が2~3時間程度と短い。巧緻ハンドの耐久性も改善が必要で、二足歩行で複雑な床面を移動する安定性も、産業用途に求められる水準にはまだ届いていない。コスト面では、中国の整ったサプライチェーンが部品コストの低減に寄与しているものの、開発初期の高速な改良段階にあるため、部品によっては金型を起こしにくく、完成品コストが高止まりしている。このことが、工場での大規模導入だけでなく、家庭向け普及の足かせにもなっている。
人型ロボットは、当初は「見せる」存在だったが、いまは「使える」段階に入りつつある。ただし、本当に使い勝手のよい水準、さらには自律的に判断して動く存在になるには、なお時間がかかる。ロボットが現場で働きながら多様な状況経験を蓄積することは、性能を高めていくうえで欠かせないプロセスだ。
業界関係者は、今後3年は「実環境での循環」をめぐる競争になるとみている。どの企業がより多くの現場導入を実現し、作業データを継続的にモデルやハードウェアの改良に生かせるかが、製品と技術の強みを左右するとしている。【翻訳編集】CNS/AFPBB News|使用条件
