
上海世博展示館で開催されたWAIC世界人工知能大会のオフライン展示会で、出展された楽普医療のAI心電図(AI-ECG)心臓データセンター&ラボ=2021年7月9日撮影・資料写真(c)CNS/陳玉宇
【CNS】近年、中国の主要病院では、医療分野で人工知能(AI)の活用が急速に進んでいる。
浙江大学(Zhejiang University)医学院附属第一医院の病理部門では、「Omni Path」と呼ばれるAIが病変部位を約3秒で検出し、正確率は95%に達する。これにより、従来は十数分を要していた病理診断が1分以内で完了するようになった。北京児童医院では、中国初とされる「専門家型AI小児科医」を導入し、多診療科が参加する合同カンファレンスで診療支援を行っている。これまでに300人以上の専門医とともに、難易度の高い症例の治療方針づくりに関わってきたという。北京協和医院でも、希少疾患や神経生理、画像診断、複数診療科にまたがる補助診断などの分野で、深層学習を活用したAIシステムが導入されている。
2025年4月30日時点で、中国の病院ランキング上位100施設のうち98施設が、大規模AIモデルの導入を完了したと公表している。病理標本の解析、画像の読影、診断支援、治療方針の提案など、AIは医療業務の中核に組み込まれ、病院運営を支える重要な存在になりつつある。
医用画像の分野では、AIは医師の判断を補う「第二の目」として機能している。首都医科大学附属北京天壇医院では、脳卒中の画像データを基に学習したAIが、急性虚血性脳卒中の画像評価を最短3分で自動的に行い、迅速で精度の高い分析結果を提供している。
中国経済紙「21世紀経済報道(21st Century Business Herald)」によると、医用画像は現在、中国の医療AI分野で最も実用化が進んだ領域で、市場全体の約半分を占めている。
聯影医療(United Imaging)のAIモデル「元智」は、10種類以上の画像形式と300を超える処理タスクに対応し、複雑な病変の診断や臓器の輪郭抽出などの臨床作業で95%以上の精度を実現している。万東医療と百度(Baidu)が共同開発したX線・MRI向けAIシステムでは、病変検出の正確率が98.7%に達した。
北京市を拠点とする中国の週刊ニュースメディア「経済観察報(Economic Observer)」によると、2025年までに中国では100種類以上の医療画像AI製品が、最高ランクに当たる三類医療機器の認証を取得し、眼科、肺、整形外科、心血管、乳腺、子宮頸部など幅広い疾患分野で使われている。
医療AIの活用は、画像診断にとどまらず、初診時のトリアージ、慢性疾患の管理、創薬、精神医療などにも広がっている。こうした医療AIの普及は、国土が広く、地域間で医療資源に差がある中国にとって特に重要な意味を持つ。
新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)イリ河谷草原にある新源県の村の診療所は、基層医療の典型例で、中国の医療体制の末端を担う存在だ。かつては診断能力が限られ、検査や治療のために長距離を移動しなければならない状況が続いていた。「以前は軽い病気でも、馬で1時間かけて町へ行き、超音波検査や心電図検査はさらに県都まで行かなければならなかった。交通費や宿泊費の方が薬代より高かった」と、地元住民は振り返る。
新源県ではこうした課題を解消するため、IoTとAIを組み合わせた総合診療向けのシステムを導入し、診療情報の収集、検査、診療支援、遠隔医療、補助診断を一体化した体制を整えた。さらに、清華大学(Tsinghua University)の研究チームと複数の最上位病院の専門医が共同開発したAI診断支援システムを導入し、症状を入力すると数秒で診断候補や投薬上の注意点、医学的根拠を提示できるようになった。これにより、地域医療でも高度な診療支援が受けられる環境が整いつつある。
一方で、中国では医療AIの活用範囲や限界についての議論も進んでいる。1月10日、国家感染症医学センター(上海)の責任者が、AIを電子カルテシステムに全面導入することへの慎重姿勢を示し、話題となった。医師が研修段階からAIに過度に依存すると、臨床的な思考力が育たず、AIの判断を適切に見極められなくなる恐れがあると指摘した。中国政府が2022年に公表した「インターネット診療に関する管理規定(試行)」では、AIやその他のシステムが医師に代わって診療行為を行うことを禁止し、処方は必ず担当医師本人が行うことを定めている。この原則は現在、医療AI活用の基本的な枠組みと位置付けられている。【翻訳編集】CNS/AFPBB News|使用条件