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「ザリガニ」ブームの先にあるAIの実力と課題

OpenClawのホーム画面=提供写真(c)CNS

OpenClawのホーム画面=提供写真(c)CNS

【東方新報】最近、中国のSNSで「ザリガニ」が大きな話題となっている。これはAIエージェント「OpenClaw」の愛称で、導入を急ぐユーザーたちは「ザリガニ飼い」と呼ばれている。

騰訊(テンセント、Tencent)本社ビルの前には、オンライン上の「ザリガニ」を早く手に入れたい人たちの長い行列(※)ができ、時間のない若者の中には親に代わりに並んでもらうケースも見られた。

(※編注:「OpenClaw」はオンラインで入手できるが、このイベントでは無料でインストール、設定代行をしてくれる)

 フリマアプリ「閑魚(Xianyu)」やSNSアプリ「小紅書(Red)」では、「ザリガニの訪問インストール」を請け負う有料サービスまで現れ、料金は数十元(数百円)から数百元(数千円)に上っている。

 OpenClawは、いわゆるAIエージェントと呼ばれる人工知能ツールだ。赤いザリガニのアイコンから「ザリガニ」と呼ばれるようになり、登場して間もないながらも一気に注目を集めた。

 騰訊雲(テンセントクラウド、Tencent Cloud)は軽量クラウドサービス「Lighthouse」を通じてワンクリック導入環境を無料で提供し、小米科技(シャオミ、Xiaomi)も類似のモバイル向け製品「Xiaomi miclaw」を打ち出してテスト運用を始めている。

 OpenClawの特徴は、従来の「話すだけ」のAIではなく、実際に作業をこなせる点にある。しかも、そのコードは100%AIによって生成されている。ユーザーはパソコン側にクラウドサーバー、基盤となる大規模言語モデル、メッセージ通信チャネルを組み合わせることで、このエージェントを利用できる。

 例えば通常のアプリが通知を受け取って表示するだけなのに対し、AIエージェントは通知を受けた後、自動でシステムツールを呼び出し、天気確認や通勤時間の計算、アラーム設定といった準備まで先回りして進められる。テンセントクラウドも、「何ができるかではなく、何をしたいかで考えるべきだ」としており、「クーポンを取って」と指示すれば、自動で取得してアカウントに入れておくことも可能だとしている。

 国研新経済研究院の朱克力(Zhu Keli)院長は、これは単なる人の代替ではなく、「人とAIの協働」という新しい仕事の形だと指摘する。OpenClawは従来の対話型AIの「答えるだけ」という限界を超え、ファイル整理、メール返信、コード作成といった実務作業までこなせる。この実行力が、仕事や生活の効率化を求めるニーズに合致し、今回の人気につながったとみられている。

 また、こうしたブームは、これまで開発者中心だったオープンソースAIエージェント技術が一般層に一気に広がったことを示している。大手企業が相次いで関連分野に参入している背景には、AIが「対話型」から「システムを動かすAI」へと進化する流れを押さえたいという狙いがある。

 AIエージェントは大規模モデルと実際の利用場面を結びつける重要な存在であり、今後は単なるモデル性能だけでなく、実行力や安全性、利用シーンへの適応力まで含めた総合力が競われることになりそうだ。

 一方で、急速な普及に伴い、安全面への懸念も浮上している。工業・情報化部のネットワークセキュリティ脅威・脆弱性情報共有プラットフォームは、OpenClawの一部インスタンスについて、初期設定のまま、あるいは不適切な設定で運用した場合、比較的高いセキュリティリスクがあると警告した。こうした状態では、サイバー攻撃や情報漏えいなどの問題を招きやすいという。

 OpenClawは複数の通信チャネルと大規模言語モデルを組み合わせ、継続的な記憶機能や自発的な実行能力を備えたAIアシスタントを構築できる。ローカル環境での運用も可能だが、自律的に判断し、システムや外部リソースを呼び出す特性を持つため、権限管理や監査機能、安全対策が不十分な場合には、指示の誘導や設定不備、さらには第三者による乗っ取りによって、権限を超えた操作が行われる恐れがある。当局は、導入時にインターネットへの公開状況や権限設定、認証情報の管理を十分に確認し、不必要な外部公開を止めるよう呼びかけている。あわせて、本人認証、アクセス制御、データ暗号化、安全監査などの仕組みを整え、公式の安全情報や対策勧告を継続的に確認することが重要だとしている。

「ザリガニ」ブームの広がりは、AIが単なる会話ツールから、実際に仕事をこなす存在へと進み始めたことを象徴している。ただ、その便利さが注目される一方で、安全性の確保が追いつかなければ、新しい技術の魅力はかえってリスクにもなりかねない。AIが本当に社会に根付くかどうかは、その実行力だけでなく、安全に使いこなせる環境を整えられるかにかかっている。【翻訳編集】東方新報/AFPBB News|使用条件