【CNS】人工知能(AI)の応用が中国社会で急速に広がるなか、AIが教育にどのような影響を与え、教育をどう変えていくのかが、今年の中国全国両会でも大きな議論のテーマとなっている。
具体的には、一方でAIの影響を受け、中国伝媒大学(Communication University Of China)が翻訳や写真など十数の専攻を廃止したことが「AIによって専攻が淘汰されるのではないか」という不安を呼び起こしている。他方で、AIの活用によって中国の教育のデジタル化・スマート化が加速し、創造力の育成や「より良い教育」の実現に向けた新たな手段も見えてきた。こうした不安と大きな期待が入り交じる状況が、中国社会がいま「AI+教育」というテーマを読み解く際の複雑な心理を形づくっている。
近年、チャットGPT(ChatGPT)や深度求索(DeepSeek)など国内外のAI大規模モデルがAIブームを巻き起こして以来、「AIを学校へ」という動きが中国の小中学校や大学で相次いで進められている。デジタル化と知能化の新たな技術革新の波の中で、先行しようという狙いがある。
「AIを学校へ」という取り組みにはいくつかの形がある。AIの基礎や応用を学ぶ授業を設ける学校もあり、北京市の小中学校ではAI教育の授業を毎学年少なくとも8時間実施している。また、専門機関と連携してAI実験クラスを設け、トップ大学への進学を見据えた人材育成を行う例もある。さらに、AIツールやプラットフォームを導入し、学校運営や教員の授業、学生の学習を支援する仕組みを整える学校もある。中国の政府機関が後援するAI関連のコンテストも、小学生から大学生まで幅広く実施されており、AIが中国の教育体系に深く取り込まれつつあることを示している。
AIは教育の具体的な場面でどのように活用されているのか。広東省(Guangdong)仏山市(Foshan)では、AIスマート黒板が地域内のすべての小中学校に導入され、教師が音声で指示するだけで教材や資料を呼び出せるようになり、授業の効率が大きく向上した。深セン市(Shenzhen)のある中学校では、生徒がタブレットで問題を解き、AI教師が採点するだけでなく、解答の考え方やつまずきやすいポイントを分析し、個々の生徒に合わせた課題をリアルタイムで提示している。
上海市の盧湾高級中学は、上海で最も早く「小中学校人工知能教育基地」に選ばれた学校の一つで、「チップ教育」という独自の授業を開設し、生徒がチームでロボットアームや半導体設計のプロジェクトに取り組むことを奨励している。
北京の情報教育の授業では、生徒が自ら作ったプログラムでロボットに指示を出したり、教師がAIを使って量子トンネル効果の実験アニメーションを生成し、生徒が初めて抽象的な物理現象を視覚的に理解できるようにするなど、さまざまな新しい教育方法が実際の学校で試みられている。
AIは生徒の健康管理にも活用され始めている。ある学校ではスマートスポーツ用ウェアラブル機器を用いて運動データを収集し、AIで体力データを分析して体育教育に役立てている。北京市教育委員会が推進するAI健康アシスタント「京小健」は、生徒の睡眠や運動などのデータを収集し、AIアルゴリズムで個々の健康状態を分析するとともに、心理モデルを組み合わせて不安や抑うつの傾向を識別し、早期の対応につなげる仕組みだ。
現在、北京では小中学校のAI応用の普及率が87.7%に達し、25の革新的な応用が教育部のAI典型事例に選ばれている。また、北京市では50校がAI教育のモデル校として指定され、高等教育分野では32のAI応用事例が示されている。
各地で教育へのAI活用を進める主体には、政府機関、主要企業、研究機関、学校などがあり、「政策の主導、資源の支援、教員の能力向上、教育格差への配慮」を組み合わせた立体的な推進体制が形成されている。教師が「AIを使えない」段階から「使える」「使いこなせる」段階へ進むため、北京市は「百千シード計画」を実施し、中心となる教員を育成して全教員への普及を図っている。
福建師範大学(Fujian Normal University)などの教育関係者によると、AI関連科目は教員養成課程にも全面的に取り入れられており、「専門知識とデジタル能力を兼ね備えた教師を育てる」ことが目標とされている。AI時代において教師が「知識を伝える存在」から「学びを導く存在」「能力を引き出す存在」「学習環境を設計する存在」「革新を生み出す存在」「倫理を守る存在」へと役割を変えていくことが重要だと、教育界の代表委員たちは強調している。
AIによる教育の変化は家庭教育にも広がっている。中国では家庭が教育を非常に重視することで知られるが、最近、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は、中国の保護者がさまざまなAIツールを使って子どもの学習を支援している様子を報じた。SNSでは「教え方が分からなければ豆包(中国で人気のAI大規模モデル)に聞く」と冗談めかして語る保護者もいれば、AIを使った間違い問題ノートを導入したり、AIアシスタントに宿題の採点をさせたり、大規模モデルを利用して独自の学習アプリを作る家庭もある。
効果を感じている人もいれば、無駄な出費だったと感じる人もいるが、中国の保護者が新しいテクノロジーを積極的に試し、遅れまいとする姿勢は共通している。現在のAIの発展状況を見ると、人間が知識量でAIに勝つことは難しい。しかし、美的感覚や共感力、創造力、新しい問題を解決する能力では、人間には依然として代替できない強みがある。
中国全国両会の代表委員たちが指摘するように、AI時代の教育は「人を育てる」という本質に立ち返る必要がある。重要なのはワンクリックで答えを得ることではなく、探究の過程で思考力を育てることだ。また、何歳でプログラミングを学ぶかよりも、学びを通じて知識を現実社会の理解や問題解決の力へと変えていくことが重要だとされている。AIは人を単なる道具として扱う仕事を置き換える可能性はあるが、「考える葦」である人間そのものを置き換えることはできない。AI時代の教育は、まさにそうした創造的な人材を育てることが求められている。【翻訳編集】CNS/AFPBB News|使用条件
