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NASAの有人月探査、次の課題は着陸船開発 民間2社の競争加速

2024年2月、ケネディ宇宙センターから打ち上げられたスペースX「ファルコン9」 REUTERS/Joe Skipper

2024年2月、ケネディ宇宙センターから打ち上げられたスペースX「ファルコン9」 REUTERS/Joe Skipper

[コロラドスプリングス(米コロラド州) 14日 ロイター] by Joey Roulette- 米航空宇宙局(NASA)は、有人宇宙船「オリオン」が月周回を終えて地球に無事帰還し、有人月探査「アルテミス計画」の第2弾が成功を納めたことで、次の課題に重点を移しつつある。実業家イーロン・マスク氏が率いるスペースXと富豪ジェフ・ベゾス氏のブルーオリジンという米民間宇宙企業2社が開発を競う月着陸船に対し、将来の有人着陸に向けて一連の厳格な試験を受けさせる段階に入った。

 計画第2弾でオリオンは月の裏側を回り、地球からの人類最遠地点に到達。今回のプロジェクトは、深宇宙へ人類を送り届けるために必要な各種システムを検証する「予行演習」と位置付けられていた。

 一方、節目となる第2弾の成功で、計画に残る最大級のリスクの1つに注目が集まっている。それが月着陸船の開発・運用だ。月着陸船は商業ベースで開発されており、極めて高度な最終降下操作を実現して宇宙飛行士を安全に月面へ降ろし、任務を終えて無事帰還させなければならない。これはNASAが1972年以来、一度も行っていない任務だ。

 NASAは28年までに再び宇宙飛行士を月面に送り込むことを目標としているが、その背景には、30年までに有人月面着陸を計画している中国との競争がある。計画が遅れるリスクに備え、NASAはスペースXとブルーオリジンの両社を競わせ、民間投資によって開発を加速させる戦略を取っている。

 NASAのジャレッド・アイザックマン長官は13日のインタビューで「両社とも、これを競争だと捉えている。それは非常に良いことだ」と話した。

 アルテミス計画第2弾では、ボーイングとノースロップ・グラマンが製造したNASAの大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」と、ロッキード・マーチン製の宇宙船オリオンが使われた。SLSとオリオンは従来型の政府保有のシステムだが、NASAは計画のうち月面への降下と着陸については民間企業に委ねている。

マスク氏対ベゾス氏

 スペースXは巨大な宇宙船「スターシップ」を基にした有人月着陸システム「スターシップHLS」を開発している。この機体は、これまでに製造されたどの月着陸船よりもはるかに大型だ。一方、ブルーオリジンは、より伝統的な設計思想に基づく着陸船「ブルームーン」を開発している。

 関係者2人によると、ブルーオリジンはこの夏、無人版ブルームーンを月面に着陸させる予定で、これが同社にとって初の月面軟着陸挑戦となる。この試験は「マーク1」と呼ばれ、長年にわたる開発の成果を問う極めて重要な節目となる。

 一方のスペースXは、数カ月に及ぶ飛行中断を経て、スターシップの新型「バージョン3」を早ければ5月にも打ち上げる準備を進めている。マスク氏が初めてスターシップ構想を公表したのは16年だが以来、スターシップは度重なる遅延や試験失敗に見舞われてきた。

 23年以降に11回の試験飛行が行われ、爆発も起きた。しかしスペースXは、新型機にはNASAの要求に基づく数十項目の改良が盛り込まれていると説明している。

 NASAの有人月着陸システム計画の副責任者、ケント・チョイナッキ氏は「これがHLSの基盤となるバージョンだ。主力機になる」と述べた。

 ただし、スターシップが有人月着陸として採用されるには、スペースXは軌道投入と上段機体の制御された再突入という未達成の課題を克服する必要がある。さらに、2機のスターシップを宇宙空間でドッキングさせ、燃料を移送することができることを実証しなければならない。NASAはこれを月探査に不可欠な機能と見なしている。NASAは両社に開発の加速を促しているが、当局者は課題が困難であることも認めている。

変わり続ける設計

 20世紀のアポロ計画では、数年の間に6回の有人月面着陸が行われた。しかしアルテミス計画は長期的な取り組みとして設計されており、着陸船は再利用され、継続的探査に対応することが求められている。この野心的な目標を掲げたことで、技術的な複雑さと試験要件が増大している。

 スターシップに軌道上燃料補給という高度な工程を省略した計画の加速案が提案されているのではないか、との問いに対し、アイザックマン氏は「両社とも、技術的リスクを大きく下げるアプローチを取っている」と述べた。NASA当局者は、設計が今後も変化していくと見ており、チョイナッキ氏も「今ある設計が、そのまま月面に降り立つ設計になるとは思っていない」と話した。

 ブルーオリジンは、NASAから進捗加速を求められたことを受け、当初の構想の一部を見直した。関係者によると、初期のミッションでは宇宙空間での複雑な燃料補給構想を棚上げし、当面のリスクを抑える設計に簡素化した。

 NASAは、不確実性は残るとはいえ、2社体制が成功への最善策だと強調している。アイザックマン氏は「どちらの企業も、月に到達し、しかもわれわれの大きな競争相手より先に成し遂げることの重要性を十分理解していると思う」と述べた。これは中国を念頭に置いた発言とみられる。

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