![「第1回 フィジカルAI展[東京]」に登壇した、株式会社安川電機の久保田 由美恵氏](https://media.dglab.com/wp-content/uploads/2026/07/bb3b090b6d382425c737ace5e4950aba.jpg)
「第1回 フィジカルAI展[東京]」に登壇した、株式会社安川電機の久保田 由美恵氏
物理空間において自律的に認識、判断、行動するAIロボットを開発する動きが活発化している。特に産業現場において期待が高まっているが、ロボットソリューションを開発・提供しているメーカー側はどう対応しようとしているのだろう。
2026年7月1日〜3日に、東京ビッグサイト(東京都江東区)にて「第38回 ものづくりワールド[東京]」が開催された。その中で開催された「第1回 フィジカルAI展[東京]」にて、株式会社安川電機 (本社・福岡県北九州市)取締役 執行役員 技術開発本部AIロボティクス統括部長/株式会社エイアイキューブ(東京都中央区)代表取締役社長の久保田 由美恵氏が登壇。「AIロボティクスを軸とした絶対的なフィジカル対応力実現に向けて」と題した講演を行った。
![「第1回 フィジカルAI展[東京]」の様子](https://media.dglab.com/wp-content/uploads/2026/07/359f750195c832e95ba21efd8e829e60-740x493.jpg)
安川電機について少し触れておこう。同社は、1915年に北九州市で創業。石炭の運搬自動化のモーターから始まり、産業用ロボットなどメカトロニクス製品を製造するメーカーである。
特に2017年からは、新たなソリューションコンセプト「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」を掲げ、データ活用によるメカトロニクスの進化や産業機器の自動化を目指している。
そうしたロボットソリューションを開発する中で、久保田氏が強く感じてきたのが「IoTの進化」と「ロボティクスの進化」の2つだ。
「IoTの進化」については、多くの工場で2010年代前半から「生産ラインの見える化」が始まり、2010年代後半には「工場全体の最適化」が行われ、現在は「工場だけでなく、その前後のサプライチェーンを含めながら(AIによって)自律的に生産現場全体を最適化する」動きが始まっている。
「ロボティクスの進化」について、久保田氏によると安川電機による日本で初めての全電気式ロボット「MOTOMAN」が登場したのが1977年だ。これは、安全柵に囲まれてルーティーンワークを繰り返すロボットであり、その後40年近く製造現場で活用されてきた。
これが2010年代半ばになると、人と一緒に働く「人協働ロボット」へと進化する。具体的には、安全柵から出て、人と人の間に設置され、人と協力しながら一緒に働くようになった。
「安全柵から出たロボットが次にどうなるかというと、動き出します。我々はロボットが安全柵の外に出られるとなった際に、手押しロボットを作りました。そして今では、ロボットが自ら必要な場所に移動し、作業するような状態がスタートしています」
では、その次はどうなるのか。久保田氏は「ここから先は、移動した先で(AIが)やるべきことを認識し、自ら判断して、作業を行うようになる」と予測する。すなわち「ロボットが自律的に動き、そこでやるべき仕事を認識し、それを完結するようになる」とし、実際に安川電機が提供するロボットソリューションも、そうした段階へと進化しつつあると述べた。
安川電機が提供するロボットソリューションは、具体的にどう変化しているのだろう。久保田氏が「大きな変化」として強調したのは、2023年に新たな産業用ロボットシリーズとして「MOTOMAN NEXT」をリリースしたことだ。
同社の「MOTOMAN」は、教えられた単純作業を繰り返し実行するもので、生産現場における「高生産性、正確性、高速性」について効果を発揮してきたが、「顧客からの多様なニーズに応えることはできなかった」という。
「そうした中で、この約50年の歴史の中ではじめて『MOTOMAN』とは別のロボットシリーズとして、世の中に投入したのが『MOTOMAN NEXT』です」
久保田氏によると、「MOTOMAN NEXT」の最大の特徴は、従来シリーズで長年培ってきた「作業力」に加え、「判断力」も備えたことだ。

ここでいう「判断力」とは、まずカメラなどのセンサーからのデータによって状況を認識したうえで、AIを活用して「どう動くかを自分で判断」する。加えて、稼働中のデータやセンサーデータから、自分の作業品質を確認し、作業が完結していない場合は、リトライが必要と判断し、作業を再び行う。つまり、自分自身の判断に基づき、自分の動き方を計画して実行する能力を持つということだ。
「たとえばネジを締める作業であれば、最初にどうネジを締めればいいのかを、ネジ穴を確認しながら判断し、ネジを差し込んで締める。そして、ネジのトルク(締め付け具合)を確認し、万が一失敗して、適正なトルク値になっていなかったら、人がやるように一旦ネジを緩めて、再びネジを締める。このように、最初の動きを作るところから、自分が作業した結果を判断して、さらに動きを作って、仕事を完結させていくと。こういう風にAIを活用していきます」
なお、久保田氏らは、この「判断力」をオープンプラットフォーム(ACU:Autonomous Control Unit)上で開発する形をとっている。これにより、社外のシステムインテグレーターやITベンダー、AIスタートアップ、アカデミアなどの技術力を取り込みながら、より高度なものへと進化させていくとのことだ。
「『作業力』側は自社で対応力をどんどん強めていき、『判断力』側は、自社でも頑張りますが、皆さんの力も借りてやれることをどんどん増やしていきたいと考えています」
ところで、現在フィジカルAIの学習の場として、XRなどの仮想空間への期待が急速に高まっている(※)が、久保田氏も「多様な状況への自動化拡大には、シミュレーター(仮想環境)の活用が不可欠」だと話す。
※参照「フィジカルAI 広がる学習の場xは仮想空間 〜「第6回XR・メタバース総合展 夏」講演より」
久保田氏によると、産業用ロボットのメーカーは、これまでもロボットの動きをプログラミングするためのシミュレーターは活用していたが、今後は「より汎用的にいろいろな場面に対応するための学習シミュレーターが必要」になるという。「ここまで来ると、とてもじゃないですが、ロボットメーカー単体では開発できない」ということで、現在はエヌビディア社などが提供する仮想環境での学習やデータ開発の仕組みなどを活用する方針を採っているという。
また、今後はこうした「仮想環境の活用を進めてロボットのポテンシャルを拡大する」とともに、「場所と目的によって最適な形のロボットのラインナップを増やす」ことで、自動化領域のさらなる拡大を図っていくとのことだ。
人型のヒューマノイドの開発においては、中国の企業やスタートアップが1歩も2歩も先に進んでいる。そうした中でこれまで日本企業が、豊富な実績を積み上げてきた産業用ロボットの分野において、AIの開発・活用を加速できるかどうか。今正念場を迎えているようだ。