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隠し撮り・録音の懸念どう払拭、「ポスト・スマホ」狙うAI端末とプライバシー保護

メタの年次開発者会議で展示された同社のスマートグラス。2025年9月、米カリフォルニア州メンローパークで撮影。REUTERS/Carlos Barria

メタの年次開発者会議で展示された同社のスマートグラス。2025年9月、米カリフォルニア州メンローパークで撮影。REUTERS/Carlos Barria

Aditya Soni Kenneth Li

[サンフランシスコ/ニューヨーク 22日 ロイター] by Aditya Soni Kenneth Li – 人工知能(AI)端末がスマートフォンに続く「ポスト・スマホ」時代を切り開くと期待する企業が相次いでいる。一方、世界各地でプライバシーを巡る懸念が高まっており、この問題が新たなテクノロジーの普及を遅らせる可能性もある。

 特に強い反発を受けているのが、メタ の「レイバン」スマートグラスだ。この眼鏡は、アイウエア大手エシロールルックスオティカ の流行を取り入れたデザインと、「パーソナル・スーパーインテリジェンス(個人に最適化され能力を拡張してくれる超高度AI)」を追求するメタのAIを組み合わせることで、スマートグラスを一般消費者に広く普及させた。

 この眼鏡は、AI搭載端末に対する不安の象徴にもなっている。裁判所ではプライバシーを巡る訴訟が審理され、利用者の間では知らないうちに撮影されることへの不安が広がる。批判する側からは、AI搭載グラスが至るところで使われるようになれば、匿名性や同意に対する従来の期待が損なわれかねないとの批判もある。

 英国では大手パブチェーンのウェザースプーンを含む複数の施設が、こうした端末の使用を制限している。

 メタは23日の「Connect」カンファレンスで、カメラを搭載しないスマートグラスを発表した。6000億ドル(約94兆8000億円)を超えるスマホ市場の一角を狙う企業にとって、機能性とプライバシーをどう両立させるかという難題が浮き彫りになった形だ。

 端末メーカー各社はこうした懸念を乗り越えようと、眼鏡やピン、ペンダント、スマホに磁石で取り付ける音声レコーダーなど、さまざまな形態を試している。ロイターが十数人のテクノロジー企業幹部、アナリスト、法律専門家に取材したところ、一部の企業では一般消費者向けよりも法人向けの方が早く普及しているという。

 プライバシーを巡る議論の行方は、テクノロジー企業が「次の主要コンピューティング・プラットフォーム」と位置付ける市場の将来を左右しかねない。企業が社会の信頼を得られなければ、常時作動するカメラやマイク、周囲の状況を認識する機能など、AIウエアラブル端末を便利にしている特徴そのものが、普及を阻む要因になる恐れがある。

サムスン、提携で市場参入へ

「勝ち残る端末の形態は、操作がより自然で、有用で、信頼されるものになるだろう」。韓国サムスン電子 のモバイル部門でエグゼクティブバイスプレジデントを務めるジェイ・キム氏は、7月のロイターのインタビューでこう語った。AIがより多くの作業を担うようになるにつれ、利用者は安全性が確保され、自分自身で管理できるシステムを求めるようになるという。

 サムスン電子は今年後半、ジェントル・モンスター、ワービー・パーカー との提携を通じてスマートグラス市場に参入する計画だ。ただ同社はスマートグラスをスマホの代替品とは位置付けていない。

 一方、一部のスタートアップにとっては、プライバシー問題を解決できるかどうかが企業の存続そのものを左右する可能性がある。

アルトマン氏が描く構想

 オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は昨年12月、利用者の周囲の状況を常時把握しながら、いつ手助けし、いつ何もしないかを判断できる「常時稼働型」の端末構想を語った。同氏はこうした製品を実現するためには、情報を絶えずクラウドへ送信するのではなく、端末上でデータを処理する仕組みが最終的には必要になるとの考えを示した。

「利用者が求めるのは、信頼できる端末だ。完全な文脈を把握し、いつ助けるべきで、いつ助けるべきでないかを理解できる端末。もし端末が自分の人生をずっと聞き、ずっと見続けるのであれば、それをクラウドサーバー上で動かしたいと思う人はほとんどいないだろう」という。

 さらに同氏は、オープンAIがプロセッサーの規模をどれだけ早く拡大できるかによっては、AIを端末内で処理できるようになるまで「さらに数年かかる可能性がある」と述べた。

 専門家によると、問題の核心は、AI端末は周囲から多くの情報を収集すればするほど便利になるという点だ。その中には、撮影に一度も同意していない人々の映像が含まれる可能性もある。

訴訟の争点

 スマートグラスを巡るプライバシー上の説明に誤解を招く内容があったとしてメタとルックスオティカ・オブ・アメリカを相手取った訴訟で、消費者側の代理人を務めるライアン・クラークソン氏は「こうした新しく効率的で、生活をより生産的かつスムーズにしてくれる消費者向け製品を使う代わりに、自分がプライバシーという面で何を差し出しているのかが、消費者には必ずしも明確ではない」と説明する。

 訴訟では、このスマートグラスで撮影された映像がメタのサーバーにアップロードされた後、同社のAIシステムを訓練するため、人間のデータ分類担当者が映像を閲覧し、ラベル付けしていたと主張されている。その中には、着替えている人やトイレを使用している人、金融情報を扱っている人の映像も含まれていたという。クラークソン氏の話では、撮影された人々は自分が映像に収められていることに気付いていないケースが多かった。

 同氏はロイターに「プライバシーが守られると説明された合理的な消費者であれば、こうした端末によって、意図的であれ偶然であれ、自分の極めて私的な瞬間まで撮影されるなどとは到底考えなかっただろう」と語った。

 ルックスオティカとオープンAIは、ロイターのコメント要請に直ちには応じなかった。メタは、撮影中に点灯し、消すことのできないライトによって周囲の人々のプライバシーを保護していると説明。ライトが覆われたり細工されたりすると、カメラが無効になるとしている。

 メタは訴訟での主張には同意できず、争う方針を示し、製品改善のために利用者のデータを確認することは業界全体で一般的に行われているとした上で、同社では個人を特定できる情報を除外していると説明した。

カメラなしで活路

 こうしたプライバシーへの反発を受け、他社ではカメラ自体を搭載しないスマートグラスを検討する動きも広がっている。

 中国・深センに拠点を置くスタートアップのEven Realitiesは、アップルウオッチの開発に携わったアップルの元エンジニア、ウィル・ワン氏が創業した。同社は2024年、カメラを搭載しない「G1」を投入し、25年11月には最新の主力モデル「G2」を発売した。ワン氏は7月ロイターに、消費者の間でスマートグラスと隠し撮りを結び付けるイメージが強まっていると指摘。企業がより強固な安全対策を整えられるようになるまで、カメラの搭載は待つべきだとの考えを示した。

 7月に評価額が10億ドルに達した同社は、年末までに利用者が数十万人規模になると見込んでいる。ワン氏によれば、売上高の約90%を一般消費者向けが占める。

 一方、サンフランシスコに拠点を置くポケットは、スマホに装着するレコーダーを展開している。会話を録音するには利用者自身がボタンを押す必要があり、録音という行為を、スマホのカメラで撮影するのと同じように意図的で周囲から分かりやすいものにすることで、音声専用端末に対するプライバシー上の懸念を和らげられるとみている。同社によると、発売から8カ月で約17万台のポケット端末が利用されており、ドアダッシュ 、ミシュラン、サンタンデールなどの企業の従業員も使用している。

 カード型やウエアラブル型のAIレコーダーを販売するプラウドも、プライバシーを重視。「プラウド・ワン」は249.99ドルの「エクスプローラー・エディション」と呼ばれるイヤホンとケースのシステムで、利用者が操作した場合にのみ録音を開始する。さらに、ライトや音声によるアナウンスで、周囲の人にも録音していることを知らせる仕組みを採用している。同社の利用者は250万人に達し、年間経常収益は1億ドルを超える。

 AI端末を巡るプライバシーへの懸念は、前例がないわけではない。調査会社IDCのディレクター、ジテシュ・ウブラニ氏は、スマホにカメラやマイクが広く搭載されるようになった際にも、同じような不安があったと指摘する。同氏は「社会として確保したいのは、人が録音・撮影される際に、同意と認識があることだ。それは、録音や撮影そのものに反対することとは違う」と述べた。

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