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AI企業、臨床試験の成否をシミュレーションで予測

AIと臨床試験のイメージ。2023年7月撮影。REUTERS/Dado Ruvic

AIと臨床試験のイメージ。2023年7月撮影。REUTERS/Dado Ruvic

[7日 ロイター] by Deena Beasley – スイスの製薬大手ノバルティスのトップは、希少なタイプの筋強直性ジストロフィー治療薬「デルデシラン」を発売すればピークの年間売上高が50億ドルに達すると予測していた。しかし、後期臨床試験で目標を達成できなかったことを受けてノバルティスの株価は11%下落し、300億ドルの時価総額が消失した。

 この結果を予想していたのが人工知能(AI)スタートアップのバイオインベストGPTだ。同社は7月、仮想患者がデルデシランにどのように反応するのかを測定するシミュレーション試験を実施し、臨床試験で有意な有効性が示されることはないとの予測を導き出した。

 同社を含めたAI企業は、高額な費用がかかる臨床試験で候補薬を患者が使う場合の安全性と有効性が証明される確率を高めるため、一部の製薬企業と協力して仮想試験に取り組んでいることを明らかにしている。

 世界のバイオ医薬品業界は、人間を対象とした臨床試験に年間約1400億ドルを費やしている。だが、規制当局の承認を得る候補薬は12%程度にとどまっており、この確率はこの数十年間ほとんど変わっていない。

 AI企業によると、シミュレーションはどの医薬品開発プログラムを推進する価値があるのかを特定したり、買収対象の価値を評価したりするために活用されている。AIツールが臨床試験でのリスクを指摘する精度が高まることで、予期せぬ臨床試験での失敗が減る可能性があるという。

 人間を対象とした臨床試験は通常、主に安全性を評価するための小規模な第1相試験から始まり、続いて中規模の第2相試験、そして規制当局が要求する有効性も評価する大規模な第3相試験へと進む。このプロセスには数年間を要するが、一部のAIシミュレーションを使えば1カ月以下で完了する。

 イスラエル・テルアビブに本社を置くAI臨床試験シミュレーションプラットフォーム「クアントヘルス」のフランシスコ・ベカ最高医療責任者(CMO)は「臨床試験をいかに迅速に進めるのかだけを考えるべきではない。失敗に終わる臨床試験の数をいかに減らすかを考えるべきだ」と訴える。

 米コンサルティング大手マッキンゼーの最近の報告書によると、AIを活用した創薬への投資額は2025年に84億ドルとなり、23年の2倍超に膨らんだ。この報告書によると、現在の投資はAI技術が最も効果を発揮する分子設計を中心とする分野に集中し、長期間にわたる臨床試験を通じて薬剤が意図した通りに機能することを証明するといった製薬業界の大きな課題には振り向けられていない。

 マッキンゼーのパートナー、アレックス・デベレソン氏は、製薬各社はAIを用いた臨床試験のモデリングに「慎重に足を踏み入れ始めている段階だ」と話す。各社は社内で、またはパートナーと連携してさまざまな種類のAI技術を活用し、プログラムに資金を投じる前に候補薬の評価をするなどの取り組みを進めているという。

 米国の医療規制当局は先週、医薬品の臨床試験の迅速化を目指した取り組みを発表した。この取り組みが成功すれば、臨床開発で予測AIが活用される道筋を築く一助となる可能性があると指摘している。

6件中5件が的中

 デンマーク首都コペンハーゲンに拠点を置くバイオインベストGPTは7月、注目を集めている幾つかの医薬品の臨床試験の結果予想についての詳細な分析をロイターに提供した。これまでのところ、6件中5件が的中している。

 共同創業者のブラギ・ラブトゥルー氏は、製薬業界の根本的な目標は、臨床試験が標準的な治療よりも優れた有効性を証明することだと強調する。

 この予測AIプラットフォームは、遺伝子シーケンシングを用いて、特定の臨床試験の参加基準を満たす人体を選び出す。これらを対象に、試験薬のモデルを用いてシミュレーションを実施する。

 ラブトゥルー氏は「私たちは薬がなぜ有効で安全なのか、そして多くの場合はなぜそうでないのかを特定できる」と胸を張った。

 ただ、予測AIが常に正しいとは限らない。この予測AIは、リポタンパク質と呼ばれるコレステロール運搬体の血中濃度を低下させるノバルティスの「ペラカルセン」について、良好な結果になるとの見通しを示していた。しかしながら、ノバルティスは9月、後期臨床試験で遺伝的リスク因子を持つ患者の重篤な心筋梗塞や、脳卒中のリスクを低下させなかったと発表した。

 ラブトゥルー氏はその後の分析で、リポタンパク質の大きさで遺伝的に決定された変動を考慮していなかったため「作用を誤って理解していた」ことが判明したと説明した。

バイオジェンと武田薬品の臨床試験の失敗を予測

 バイオインベストGPTは、幅広い臨床試験のAI予測を手がけている。

 年末までに結果が発表される見込みの臨床試験では、米バイオジェンの「オリティフィリマブ」の皮膚エリテマトーデスでの二つの第3相試験、武田薬品工業の「ザソシチニブ」のクローン病および潰瘍性大腸炎を対象とした第2相試験がいずれも失敗すると予測している。これらの臨床試験対象者にとって「最適とは言えない」との結果になると見込んだ。 

 一方、武田は最近、ザソシチニブの尋常性乾癬についての第3相試験を受けて食品医薬品局(FDA)への承認申請を実施した。併せて乾癬性関節炎を対象とした第3相試験を進めている。

 武田の研究開発トップであるリサーチ&デベロップメントプレジデントのアンドリュー・プランプ氏 は、ザソシチニブの尋常性乾癬への作用に「絶大な自信を持っている。AIのようなツールを用いて決定的な予測ができる段階はまだ程遠いと思う」との見解を示した。

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