[30日 ロイター] by Mrinmay Dey Vallari Srivastava – 30日の暗号資産(仮想通貨)市場でビットコインなどが下落している。世界最大の交換業者バイナンスがセキュリティー侵害の発生を明らかにし、影響額は推定で63億ドルに達したと発表した。
アナリストらは、史上最大の仮想通貨盗難事件となる可能性があり、投資家がデジタル資産を保有するリスクについて再考するきっかけになるかもしれないと指摘している。
バイナンスは、パートナーと協力して影響を受けた資産の凍結を進めており、これまでに約30億ドルを凍結したと説明。残りの33億ドルの状況については新たな情報は明らかにされなかったが、同社の共同創業者イー・ハー氏は「ハッキングによる損失は全てバイナンスが補償する」と述べた。
バイナンスによると、初期調査の結果、この侵害は同社のエンジニアの1人が所有するノートパソコンがハッキングされたことが発端となった可能性があり、これにより攻撃者が同社のシステムの一つにアクセスし、不正な出金を行ったとみられる。
ハッキングの可能性が伝わり、アジア時間の市場に直ちに影響が広がった。分析会社チェイナリシスによると、ハッキングが確認されれば、暗号資産の盗難として過去最大規模となる可能性がある。
ビットコインは3%以上下落し、7万6368ドルと6週間ぶりの安値を付けた。イーサも3%以上下落し、2178ドルと2カ月ぶりの安値となった。暗号資産情報サイトのコインゲッコーによると、バイナンスの手数料支払いに利用できるトークン「BNB(旧バイナンスコイン)」は過去24時間で5%下落し、709.70ドルとなった。
米国株式市場の時間外取引では、暗号資産交換業者コインベース・グローバルの株価が4.8%下落。ビットコインへの投資を手がけるストラテジーも6%近く下落した。
香港に拠点を置くハッシュキー・グループのシニアリサーチャー、ティム・サン氏は「リスク選好がさらに冷え込み、投資家が中央集権型交換所に預けられている資産の安全性、ならびにカウンターパーティリスク、支払能力リスク、流動性リスクを再評価するきっかけとなる可能性がある」と語った。
デジタル資産の売買・取引サービスを提供するバイナンスは、世界で3億3500万人超の登録利用者を抱える。同社の2025年年次報告書によると、預かり資産は約1628億ドルに上る。
バイナンスは声明で「ユーザーの資金は引き続き安全だ」と説明。「予防措置として、当社のセキュリティーチームが法執行機関や業界パートナーの緊密な支援のもと、調査を実施し、ウォレットインフラの安全確保を行い、影響を受けた資産を追跡する間、全ての入出金を一時的に停止している」と付け加えた。
利用者保護の基金を運営
バイナンスのウェブサイトによると、同社はセキュリティー侵害が発生した場合などに利用者の資産を保護するための基金を運営しており、基金の準備資産は全てビットコインで保有されている。
決済・ステーブルコインのインフラを提供するトレース・ファイナンスのベルナルド・ブリテス最高経営責任者(CEO)は「人工知能(AI)が脆弱性を見つける速度に修正が追い付かず、ハッキングへの対処は非常に難しくなっている」と指摘。「利用者は中小の交換業者から離れていくとみている。相応の規模のハッキング被害を補償できない業者に資金を預けておくのは、リスクが高くなり過ぎている」と語った。
テザーは、今回の事案に関連して約15億7000万ドルの資産を凍結したと表明。ステーブルコイン発行会社のサークルは8億ドル超を凍結した。
トランプ米大統領と一族に関係する暗号資産企業ワールド・リバティー・ファイナンシャルは29日、「バイナンスへのハッキング」で盗まれた資金について、暗号資産の保管・管理を手がけるビットゴーと協力して凍結したと発表した。バイナンスのハー氏によると、2700万ドル相当のステーブルコインと約200万ドル相当のワールド・リバティーのトークンが凍結された。
ハー氏によると、暗号資産会社リップルも約2億ドルの資金を凍結した。リップルのステーブルコイン担当シニアバイスプレジデント、ジャック・マクドナルド氏は、バイナンスに関わる脆弱性を悪用した攻撃の可能性について報道を注視しており、影響を受けた資金の凍結と関係者との調整を進めていると述べた。
相次ぐ暗号資産の盗難
ブロックチェーン分析会社アーカムのミゲル・モレル最高経営責任者(CEO)は、データからは何者かがハッキングによってバイナンスから数十億ドルを盗んだように見えると述べた。
TRM Labsの研究者によると、昨年は150件近くの攻撃で、総額29億ドル相当の仮想通貨が盗まれた。9月には、仮想通貨取引所Bitgetが、同プラットフォームから約3億5000万ドル相当の仮想通貨が盗まれたと発表しており、ハッカーに対する業界の脆弱性を浮き彫りにしている。
別会社であるバイナンスUSは、今回のセキュリティー問題の影響を受けていないと発表した。
コインベースも、影響は受けておらず、状況を注視していると述べた。