北京で開催された「2024年中国国際福祉博覧会・中国国際リハビリテーション博覧会」で、ブレイン・マシン・インターフェースを応用した能動型リハビリシステムを紹介するスタッフ(2024年11月29日撮影、資料写真)。(c)CNS/陳暁根
【CNS】中国の天津大学(Tianjin University)と清華大学(Tsinghua University)はこのほど、世界初となる「二重ループ型」ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)システムを共同開発し、脳と機械をつなぐ技術分野で新たな突破口を切り開いた。このシステムは今後、より多くの携帯型・ウェアラブル型BMI機器に応用が可能とされ、一般消費向けや医療向けなど、さまざまなスマートな人機インタラクションの実用的な場面での利用が期待されている。
この非侵襲型の進化型BMIシステムは、メモリスタ(抵抗メモリ)を用いた神経模倣デバイスに基づいて開発されたもので、脳波の変化とデコーダー(信号解読装置)の進化が脳と機械の相互作用においてどのように相乗効果をもたらすかを明らかにした。この技術により、人間の脳がドローンを4自由度(上下・左右・前後・回転)で効率よく操作できるようになった。この成果はすでに科学誌「ネイチャーエレクトロニクス(Nature Electronics)」に掲載されている。
天津大学ブレイン・マシン・インターフェース「海河ラボ」の許敏鵬(Xu Minpeng)教授は、「脳と機械が情報をやり取りしながら互いに学習し合い、長時間・安定的なインタラクションを実現することが、現在のBMI研究の中心的課題だ」と話す。
この課題に対して、天津大学と清華大学の研究チームは、脳波信号の不安定な特性がタスクにおける脳波の変化と密接に関係していることを発見した。これに基づき、チームは革新的に「二重ループ型の脳機協調進化フレームワーク」を提案し、それをメモリスタ型神経模倣デバイスによって実現した。
実験結果によれば、この新しい仕組みによって従来方式よりもデコーディング速度が大幅に向上し、消費電力も大幅に削減された。また、6時間に及ぶ連続的な長時間実験でも、システム性能は安定しており、正確性は約20%向上した。これにより、BMI技術の実用化に向けた堅固な基盤が築かれた。
近年、中国はBMI分野で次々と技術的な進展を遂げている。2023年10月には、清華大学医学院の洪波(Hong Bo)教授と北京宣武病院が共同で、世界初のワイヤレス・低侵襲型BMIの臨床試験を実施。手術とリハビリ訓練を経て、四肢麻痺の患者が脳波によって空気圧式グローブを動かし、「意識で水を飲む」といった脳制御機能を実現し、物をつかむ動作の解読精度は90%を超えた。
2024年4月には、「北脳2号」スマートBMIシステムが発表された。これは、脳内に柔らかい極細の繊維がついた薄膜電極を埋め込むことで、手足を縛られたサルが「意識」だけでロボットアームを操作し、「イチゴをつかむ」ことが可能になった。この「北脳2号」は、サルによる2次元カーソルの精密な脳制御を国際的に初めて実現したもので、より自然かつ柔軟な新世代の神経義肢開発に向けた臨床応用の基盤となっている。このシステムに用いられた高スループットの柔軟マイクロワイヤ電極や多数チャンネル高速神経信号取得装置は、脳内での高度な運動イメージの神経信号の解読技術を支えるものであり、その電極性能は世界最先端レベルにある。
BMI技術は、かつてはSFの世界の話だったが、現在では現実となり、医療、通信、ゲーム、軍事・防衛といった分野と深く結びつき、新たな応用場面が次々と生まれている。特に医療分野では、BMIを活用したさまざまなウェアラブル医療機器が登場している。
サイディ・コンサルティングが最近発表した「中国ブレイン・マシン・インターフェース産業発展の現状と展望」報告によると、2024年の中国におけるBMI市場規模は32億元(約649億6704万円)で、成長率は18.8%。2027年には市場規模が55.8億元(約1132億8627万円)に達し、成長率は20%に上昇すると予測されている。
BMIは将来性の高い分野とされており、中国各地・各部門で関連政策が相次いで打ち出されている。2024年1月には、中国工業情報化部など7つの部門が共同で「未来産業イノベーション発展の推進に関する実施意見」を発表し、BMI技術を重点分野として明記した。同年7月には、工業情報化部がBMI技術標準化委員会の設立準備に着手し、業界の技術基準づくりに向けた動きが始まった。また、上海市や北京市も今年1月に独自の行動計画を発表し、BMI技術の開発と実用化の促進を進めている。【翻訳編集】CNS/AFPBB News|使用条件