Open Innovation Platform
FOLLOW US

展示スタイルもいろいろ ロボット企業の出展が目立ったCES2026でわかったこと

ボストンダイナミクスのデモ

ボストンダイナミクスのデモ

 筆者は2026年1月6日~9日、米国ラスベガスで開催されたCES2026を訪問した。AIやロボットへの注目はここ数年の傾向だが、特に今回は中国から多くのヒューマノイドロボットが出展されており、注目を集めていた。

 会場にはBooster Robotics(中国)、AGIBOT(中国)、GALBOT(中国)、Sharpa(シンガポール)といった、すでによく知られた企業から、初めて目にする新興ロボット企業まで、数多くのロボットが並んでいた。この「数の多さ」そのものが、現在のロボット産業の勢いを示しているのは間違いない。

 ただ、多くのロボット企業はブースでの静的な展示のみ。実際の利用シーンに近いインタラクティブなデモを展開していた企業は一部だった。その中のいくつかは、現在のヒューマノイドロボットの水準を示す興味深いものだったのでここで紹介したい。

量産をアピールするBooster Robotics(左)開発中のロボットを見せるBXI Robot(右)
量産をアピールするBooster Robotics(左)開発中のロボットを見せるBXI Robot(右)

ボストンダイナミクスのデモが示した「誠実な最先端」

 中国勢だけでなく、韓国のヒュンダイグループの一員となったボストンダイナミクスも大きな注目を集め、連日多くの観客がデモを囲んでいた。

 ボストンダイナミクスのデモは、今回のCES開催時点における一つの到達点だったと言ってよい。自動車部品をつかみ、決められた場所へ集めるという、実際の工場を想定したタスクを、人型ロボットが繰り返し実行していた(下の動画)。

 注目すべきは、デモの進め方だ。ロボットの横には常にテレオペレーターが配置され、デモ中には「現在はテレオペ(遠隔操作)か、自動か」をモニターで客席に明示していた。説明員によれば、動作の約95%は自動で行われており、必要に応じて人間が介入する構成になっていた。完全自動を装うのではなく、どこまでが自動で、どこに人間が介在しているのかを正直に見せていた。

 インパクトのあるデモを見せると同時に、技術の完成度の限界も明示する誠実さもあり、デモとしてバランスがとれた姿勢であると感じた。人前で、失敗の可能性も含め、こうしたデモが行えること自体、これが「現時点での最先端」との自信があることの証だろう。会場の説明では、実際の作業現場への導入検討が進んでいることも強調されていた。

GALBOT「100%自動」の裏側にある現実

 GALBOTのデモから見えたのは、Physical AIが現時点でどこまで「“現場の揺らぎ”を吸収することができるのか」ということだ。

 棚に商品が並び、説明員がタブレット上で目的の商品を指定すると、ロボットがそれを取り、客席まで持ってくる(上の動画)。一見すると、コンビニや小売店でそのまま使えそうな完成度に見える。

 同社によれば、過去に約10万回のトレーニングを行い、ロボットが状況に応じて行動を決定する制御ポリシーを構築した上で、CES会場の環境に合わせて視覚認識や把持動作に関わるモデルやパラメータを追加調整(ファインチューニング)したという。

 巨大なトレーニングデータを用いて制御ポリシーを生成しても、ロボットが実際に稼働する場の明るさ、棚や客席の配置、商品のパッケージ、床のすべりやすさ、気温変化によるモーター出力の差など、実環境の条件をトレーニング環境と完全に一致させることはできない。

 CES会場では棚や客席の位置は固定されているが、こうした環境差を吸収するための追加調整が行われている。説明員によればそれが数日以内で完了しているからこそ、会場でのデモが成立している。

 GALBOTのデモから垣間見えたのは、現在のPhysical AI実力、つまり「どこまで現実の環境に対応できるか」だ。ブースには「100%自動化ショップ」と掲げられているが、商品をつかみ損ねて倒してしまうこともあり、その修正は人間が行う。商品の補充や、デモを繰り返すことで乱れた棚を整えるのも人間だ。

 加えて、棚の製品配置は実際の店舗よりもかなり余裕を持たせており、瓶の形状やラベルが似ている「ドクターペッパー」と「ダイエットコーク」の識別に失敗する場面も見られた。

100%自動化を掲げるGALBOTのデモ
100%自動化を掲げるGALBOTのデモ

 動画を見てわかるよう、ロボットの形状も、人型とは言い難い。両腕の先端には三次元センサーがあり、足はタイヤ、胴体は固定され、上下移動のみ。左右の手先は形状が異なっておりタスクごとに役割が分かれている。ボトルをつかめるのは右手だけ。箱を取るのは左手。もちろん同時に箱やボトルを複数つかむこともできない。

 こうした点を見ると、「コンビニ店員のような業務」をロボットに任せるには、まだ多くの課題が残っていることがよくわかる。

 それでも、エラーを含めた一連の流れを一般来場者の前で見せていた点で、ブースに動かないロボットを置いているだけのブースや、変化しない動作を繰り返す大半のロボット企業の展示よりも、はるかに優れていた。

Sharpa デモは見事 しかし誤解のもとにも

 Sharpaの卓球デモも、大きな注目を集めていた。ブース内に卓球台をしつらえ、説明員が実際に卓球ラケットを持って、ロボットと見事なラリーが披露されていた(下の動画)。

 ここの展示が素晴らしいのは、ロボットが上手く稼働できるように整えた前提条件も隠さず見える状態にしていたことだ。動画後半のズームアウトでわかるように、ロボットの周囲にはモーションキャプチャカメラが配置され、ボールは赤外線を反射しやすい再帰性反射材で覆われている。デモを行うのは、同社の熟練したスタッフのみで、打ち返す位置もロボットの胸付近に集中している。

 デモを見ていた筆者のところに偶然ボールが飛んできたので、筆者がボールを拾い、客席側からロボットが待機しているタイミングで胸を狙って投げ返したところ、ロボットは反応したものの打ち返すことはできなかった。ボール位置が微妙にずれたためか、説明員以外からの返球だったためかミスの理由は定かではない。

 とはいうものの、このデモは、柔軟で高速な反応をアピールするという目的において、十分に成功していた。人前で高度なデモを実施した点は、技術力と開発姿勢を強く印象づけた。

 一方で、このデモを見て「誰でも、いつでも、どこでも、カメラなどの特別な環境なしで同じことができる」と誤解してしまう人が多いのも事実だろう。

目的に振り切った新しいサービスロボット

 ロボットの機能が体験できるデモをもう一つ。中国深セン発のスマート家電製品ブランド「SwitchBot」の別ブランドである「ACEMATE」がCES2026の会場で展示していたのはテニスロボットだ。このロボットは人型とは程遠い形の専用機で、人間とインタラクティブにテニスをすることに特化している。

(上の動画のように)実際にプレイしてみたが、正直なところ、自分の腕では正確にロボットに向けて撃ち返せずラリーにはならなかったが、(動画を見れば)ACEMATEのロボットが返球したボールを追いかけて動いていることがわかるだろう。CESの会場内で誰でも試せる形にしていたことで、マシンの頑丈さやセットアップの容易さ、連日動かし続けられる信頼性など、製品としての完成度は伝わってきた。このマシン、実際にKickstarterでキャンペーンを成功させ、現在Pre-Orderを受け付けている。

ほとんどのブースは「そこまでいっていない」

 実運用に近い環境のデモでは、ロボットを使ってできることも、その限界も明らかになる。こうしたデモを行った企業を筆者は高く評価している。なぜなら、来場者に対して、現時点でできることと、できないことの両方を見せることができるからだ。

 会場内の多くのブースでは、ロボットが置かれているだけ、あるいはあらかじめ決められた動作を繰り返すだけの展示にとどまっていた。洗濯をたたむロボットの展示でも、同じ洗濯物を、同じように畳み、元に戻しては再び畳む、というデモが繰り返されている。もちろん、こうしたデモであっても、把持や畳み動作に関する制御ポリシーの生成や、センサーからのフィードバックを用いた修正といった高度な技術を用いて開発されている可能性は高い。しかし、環境条件が変化しない状態でのデモや、前提条件が明示されない動画だけを見ても、そのロボットがどこまで実環境に対応できるのか、実際の価値を判断することは難しい。

 不思議なことに、多くのブースで流されている動画の中では、ロボットは前述したボストンダイナミクスのロボット以上に複雑な作業を軽々とこなしているように見える。思わず、明日にでも買ってすぐ使えそうに感じてしまう(笑)。

 実際、どの企業の製品が現時点で最先端にいるのか、展示会のデモからそれを垣間見ることができる。現場に足を運ぶ意味はこうしたところにある。新しい製品を人前で動かし、失敗し、手直しするところまで見せてしまえる企業。それをどう改良し、解決したかを見せる企業のほうが新たな分野では信用できる。

 そして、ヒューマノイドロボットはまだそういう段階だということだ。

 CES2026は、ロボットの現在地とそれを取り巻く社会の様相の両方が感じられる展示会だった。

Written by
オープンソースハードウェア、メイカームーブメントのアクティビスト。IoT開発ボードの製造販売企業(株)スイッチサイエンスにて事業開発を担当。 現在は中国深圳在住。ニコ技深圳コミュニティCo-Founderとして、ハードウェアスタートアップの支援やスタートアップエコシステムの研究を行っている。早稲田大学ビジネススクール招聘研究員、ガレージスミダ研究所主席研究員。著書に第37回大平正芳記念賞特別賞を受賞したプロトタイプシティ』(KADOKAWA)、『メイカーズのエコシステム』(インプレスR&D)訳書に『ハードウェアハッカー』(技術評論社)など。