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「SusHi Tech Tokyo」ニューヨークへ“出前” 日米スタートアップの協創と投資アピール

会場の様子(撮影はすべて筆者)

イベントの様子(撮影はすべて筆者)

 4月下旬に東京で開催されるアジア最大級のスタートアップ・カンファレンス「SusHi Tech Tokyo 2026」を前に、ニューヨークでジャパン・イノベーション・フォーラム(The Cities Meet up for “Tokyo SusHi Night”)が行われた。SusHi Tech Tokyoのカンファレンスの魅力や日米間のイノベーションにおける協力、投資などについて様々な議論が交わされた。

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 このイベントは東京都と在ニューヨーク日本総領事館の共催で行われ、マンハッタンにあるジャパン・ソサエティーにおいて1月26日に開催された。

ジャパン・ソサエティー
ジャパン・ソサエティー

 前日の大雪にも関わらず、会場には数多くの地元や日本からの参加者らが足を運び、日米のスタートアップ関係者などによる英語での講演やパネルディスカッション、ピッチなどに熱心に耳を傾けた。

 イベントのオープニングでは、東京都でスタートアップ戦略推進本部長を務める𠮷村恵一氏が「ニューヨークには、シリコンバレーに続く世界で2番目に大きいイノベーションのエコシステムがあります。初めて昨年の夏に小池東京都知事と一緒にここを訪れ、この街の取り組みから多くを学び、刺激を受けました。東京もこうしたイノベーションを生み出そうとしています」と語った。

 東京都はスタートアップ戦略の一環として、2024年11月にニューヨーク市が主導する経済開発公社(NYCEDC)と経済発展の促進に関する覚書(MOU)を締結している。

東京都の𠮷村氏(右)
東京都の𠮷村氏(右)

 この覚書には、両都市が世界におけるビジネスとイノベーションの強力なグローバル・ハブとして発展するために、より緊密なパートナーとして相互の人材交流を活性化し、スタートアップ投資の拡大とイノベーション促進を目指すことが記載されている。

 イベントの基調演説では、NYCEDCでイノベーション産業を担当するジョナサン・シュルホフ氏が「ニューヨークと日本は非常に理想的なイノベーション・パートナーです。それは、日本企業によるイノベーションに対する取り組みの深さと、ベンチャーキャピタルにおけるニューヨーク市との強いつながりが理由です」と語った。

 ニューヨーク市はシリコンバレーに次ぐ世界第2位のイノベーション・エコシステムを持つと評価されている。NYCEDCによる海外直接投資(FDI)市場の分析によると、ニューヨーク市への投資額では日本はイギリス、中国、フランスに次ぐ第4位となっており、その規模は2003年以降の投資額で、106億ドル(約1兆6000億円)に上る。

 また、シュルホフ氏は海外からの投資先としてニューヨーク市には3つの強みがあると説明する。

NYCEDCのシュルホフ氏
NYCEDCのシュルホフ氏

 1つ目は、潤沢なベンチャーキャピタル投資による資金。2つ目は、顧客へのアクセス。同市には全米の都市別で最多となるフォーチュン500企業の本社が集まっている。そして3つ目は、才能のある人材の豊富さ。ニューヨーク市には全米から大学を卒業したばかりの若い人材が集まっており、同州内の人材と合わせるとその数は100万人近くになるという。

「我々の国際的なパートナーからよく聞くのは、海外企業にとってニューヨークは米国市場へ進出するための拠点として最適な街だということです」(シュルホフ氏)

ニューヨークと日本の都市間パートナーシップの重要性

『どのようにして日本の都市はイノベーション促進を行っているのか』と題するパネルディスカッションでは、東京都などの取り組みが紹介された。

 東京都スタートアップ戦略推進本部の田川理映子氏(プロモーション推進課長)は、東京都は2022年に初めてとなるスタートアップ戦略を打ち出し、2027年までに東京における起業数、東京発のユニコーン数、そして官民協働の実績数を10倍にする目標を掲げていることを説明した。

 一方で、同氏は現時点ではユニコーン数が伸び悩んでいると明かし、都が昨年11月に新たに発表した「Global Innovation Strategy 2.0 STARTUP & SCALEUP(「戦略2.0」)」のなかで、アジア最大級のスタートアップ・カンファレンスとされるSusHi Tech Tokyoと、都のイノベーション拠点であるTokyo Innovation Base(TIB)を重要なプラットフォームとして位置付け、企業やスタートアップに対して包括的な支援を行っていくと語った。

 特に、TIBは日本国内や海外のスタートアップや支援者が集い交流する「ノード(node=結節点)」としての重要な役割を担っていくことになると田川氏は強調した。

「(TIBを通して)海外のハブともつながっていくなかで、ニューヨークは我々にとっても大変、大変重要な場所となっています」(田川氏)

 さらに、このパネルディスカッションでは横浜市と神戸市の代表も参加し、各都市の魅力をアピールした。

横浜市と神戸市の代表も参加
横浜市と神戸市の代表も参加

 横浜市米州事務所の西川勝裕副所長は、横浜が日本第2位の人口を擁する都市であること、首都への好アクセス、東京よりも生活費が手頃であることに触れ、また多くのエンジニアや大学、研究施設が集まっている利点を上げた。

 さらに、同氏は来年横浜で開催される予定の「GREEN×EXPO 2027(国際園芸博覧会)」について紹介し、グリーン・テクノロジーへの積極的な姿勢をアピールした。

「横浜には3つの“I”があります。1つ目は“Ideal Location”(好立地)。2つ目は“Innovation Hub”(イノベーション・ハブ)。そして、3つ目に“Internationally Active”(活発な国際性)です」(西川氏)

 神戸市の笠置淳信氏(シリコンバレーオフィス・イノベーション専門官)は、マイクロソフトが川崎重工業と神戸市と連携し2023年に開設した「Microsoft AI Co-Innovation Lab」について触れ、AIやIoTを活用したイノベーション支援への取り組みについて語った。

 笠置氏は、神戸に本社を構える川崎重工やシスメックス、アシックスなどの企業とのつながりをもとに、神戸大学などの研究所と提携して、重工業や医療、スポーツの分野におけるフィジカルAIの開発を推し進めていると説明した。

「我々は分野の垣根を超えて連携し、イノベーションにおけるより統合されたエコシステムを提供しています。フィジカルAI開発には、神戸は実現可能性の高い場所であります」(笠置氏)

イノベーションでつながる世界の都市

『東京の未来への投資:SusHi Tech Tokyoのイノベーション力』と題したパネルディスカッションでは、今年4月に東京で開催予定のカンファレンスの意義と可能性について議論が交わされた。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

 昨年のカンファレンスで登壇した、東部ニュージャージー州を拠点とする農業テック系スタートアップOishii Farmの古賀大貴CEO兼共同創業者は、「ここ数年の間で、(日本の企業などによる)スタートアップ投資や提携への意欲は劇的に変化しました」と語った。

 2024年に東京都が「サステナブルな都市をハイテクノロジーで実現する」という理念を掲げて開始したSusHi Tech Tokyo(Sustainable High City Tech Tokyo)には、昨年(2025年)は100の国や地域から3日間で延べ5万7000人以上が参加し、会場となった東京ビッグサイトには世界中から集まったスタートアップなど600社以上が出展した。

 カンファレンスでは、企業や政府関係者など世界の様々な分野のリーダーによるスピーチ以外にも、150近くのセッション、ピッチ・コンテストなどが行われたが、昨年参加した気候テック系スタートアップArbon(ニューヨーク本社)のシー・シャオヤンCEO兼創業者は、ネットワーキング・イベントにおいて海外VCや投資家と商談を行い、実際の結果を生み出すに至ったと語った。

「他のカンファレンスと違い、Sushi Tech (Tokyo)は我々の様なスタートアップとイノベーションを大切にする企業を実際に結びつけて、お互いに最適なビジネス・パートナーを見つけ出せる場となっています」(シー氏)

会場受付の様子
会場受付の様子

 またNYCEDCのアンソフィー・マーレイ氏(国際パートナーシップ・ディレクター)は、SusHi Tech Tokyoを通して、日米のイノベーション協力や経済のつながりのさらなる強化を図ることが可能になったと語った。

 さらに、同氏はニューヨーク市と東京都が世界でも数少ない「メガ・シティー(巨大都市)」であるという類似点を指摘し、両都市がこれまで築いてきた緊密な関係をもとに、同様のつながりを世界中の都市にも広めていくべきだと強調した。

「ソートリーダーシップ(Thought Leadership)やイノベーション産業において、企業間だけではなく、東京都などの政府機関とも連携して、気候関連を含むディープテックへの取り組みを広げて行く。今後こうした取り組みを、東京都と共に世界の都市へ広げていくことが、我々の願いです」(マーレイ氏)

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 4時間以上にわたるイベント後には会場でスシが振る舞われ、参加者たちは日本食を通して会話に花を咲かせた。海外進出、規模の拡大と課題が多い日本のスタートアップだが、今回のように支援する自治体が率先して世界とつながる機会を作り出すことも必要かもしれない。日本の魅力をアピールしながら各国との連携を通して、日本発のイノベーションが世界に広がることを期待したい。

Written by
ニューヨーク在住フリージャーナリスト。米首都ワシントンのアメリカン大学国際関係学科を卒業後、現地NGOジャーナリスト国際センター(ICFJ)に勤務。その後TBSニューヨーク支局での報道ディレクターの経験を経て、現在フリージャーナリストとして日本とアメリカで活動中。東京都出身。