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中国に集まる「テック巡礼者」、イノベーション競争過熱で現場視察ブーム

ロボット開発企業アジボット社の本社を訪れる外国人投資家ら。4月20日、上海で撮影。 REUTERS/Laurie Chen 

ロボット開発企業アジボット社の本社を訪れる外国人投資家ら。4月20日、上海で撮影。 REUTERS/Laurie Chen 

[北京 3日 ロイター] by Laurie Chen – 工場の生産ラインで働くヒト型ロボット、世界の競合に挑むAIモデル、そして目を見張るような規模で車両を量産する電気自動車(EV)工場――こうした光景が今、新たな外国人訪問者の波を中国に呼び込んでいる。投資家や起業家らは、中国の工場を見学する貴重な機会を得るために数千ドルを支払い、次の技術革命の現場と目される場所を間近で見ようとしている。こうした流入は、「チャイナ・ショック2.0」への懸念の高まりを示している。西側の企業幹部や各国政府は、中国企業が先端製造業と最先端技術で主導権を握りつつある現実に向き合っている。

 上海を拠点とするデータ調査会社バイグアンのロバート・ウー最高経営責任者(CEO)は「今、人々は中国を研究と学びの対象として見ている。これは数年前にはほとんど存在しなかった潮流だ」と話す。同氏によると、訪問者はしばしば誤解を抱いたまま訪れるという。例えば中国のロボタクシー分野が米国を上回っていると思い込む例があるが、実際には、中国では雇用喪失への懸念から政策当局が慎重姿勢を取っており、米国に後れを取っているという。

 ウー氏はこれまでに2回のツアーを企画し、24人を超える投資家、起業家、企業幹部を案内した。5日間のプログラムの料金は最高1万5000ドル(約238万円)。参加者の約半数は東南アジアからだった。同氏は、中国のイノベーション・エコシステムをじかに見たいという外国人の需要に応える、新たな小規模産業の一翼を担っている。

 参加者の多くは訪問を公表することを避けている。名前が出ている例としては、米投資会社ディメンション、キャピタル・グループ、スライブ・キャピタルのほか、米テクノロジー系ポッドキャスターのレックス・フリードマン氏がいる。

 テックツアーに関するデータは乏しいが、より広い意味での産業観光は活況だ。国営メディアによると、中国の産業観光部門は昨年178億ドル規模となり、2029年までに3000億元(446億ドル)を突破すると予測されている。

 上海に拠点を置くテックツアー会社グロペンは、26年の問い合わせが50%増えたと説明する。顧客は主に欧州とシンガポールからで、現在は毎月100件を超える1日企業ツアーを実施している。

 中国系米国人投資家のルイ・マー氏は4月、3都市を巡るロボット・新興技術ツアーを企画した。これに参加したグローバル・シッピング・ビジネス・ネットワークのバートランド・チェンCEOは、「中国のイノベーションの本当の規模やスピード、現場の迫力は、工場に立たなければ理解できない」と語る。

 情報プラットフォーム、テック・バズ・チャイナの創業者で、19年以降こうしたツアーを11回企画してきたマー氏は、ツアーを不可欠なデューデリジェンス(適正評価)と位置づける。「中国に積極的に投資していなくても、世界各地の市場で、中国企業を競合、パートナー、供給業者、投資対象として目にする可能性はますます高まっている」と述べる。

 ツアーの行程は、北京、深セン、上海、杭州、合肥にまたがる。いずれも中国のEV、電池、AI、ロボットブームの中心にある工業の中核都市だ。各国の指導者も、中国のスマートフォンメーカー、シャオミ(小米)の北京自動車工場などを訪れている。ドイツのメルツ首相が杭州で宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)のヒューマノイドロボットを見学した場面は、中国の技術的台頭を示す象徴的な出来事となった。

後れを取る懸念

 こうした動きは偶然ではない。中国政府は産業観光の推進を掲げ、140カ所を超える公式モデル拠点を指定している。一般向けツアーを1回約60ドルで提供する工場も増えている。

 シャオミのEV工場は、24年3月以降、25万人を超える訪問者を受け入れてきた。需要は極めて強く、抽選で割り当てられる入場枠が、オンラインで最高2000元(約300ドル)で転売されている。

 生産性の伸び悩みやAI、ロボット分野での後れへの不安を抱える欧州企業幹部にとって、中国は重要な訪問先となっている。上海を拠点とするプラクシス・アドバイザリーのAIコンサルタント、アレックス・シェンユン・ルー氏は、25年後半以降、最大50人規模の企業訪問団を7回率いてきた。同氏は、そこに不安な空気があると説明する。

「欧州で最も賢い人々は状況を鋭く認識している。不安は手に取るように感じられる」とルー氏は言う。

 守秘義務契約を理由に企業名の公表を控えたルー氏によると、多くの欧州企業幹部は、中国が省をまたいで大規模なAI導入を調整する仕組みを理解し、その教訓を本国でどう応用できるかを探ろうとしている。「彼らは本当に謙虚に学ぼうという姿勢でここに来ている」

 ただ、一部の業界関係者は、過大評価に警鐘を鳴らす。テック・バズのマー氏は「依然として中国以外のテクノロジー企業が世界市場シェアの大半、最も先進的な知的財産、そして最大の利益を握っている」と指摘する。それでも、米中の技術摩擦が激化しているにもかかわらず、米国からの訪問者を含め、「テック巡礼者」の流れは強いままだ。

 深センを拠点とする米国人製造業コンサルタントのジョシュア・ウッダード氏は「実際に現場で物理的な製品を作ろうとしている人々は、政治のことをまったく気にしていない」と語る。「米国のロボット企業は今も、部品やハードウエアを中国からかなり調達している。米国だけですべてできるかのように装っているが、完全にデカップリング(切り離し)するのは非常に難しい」

深センの存在感

 この傾向を最も体現しているのが深センだ。この南部の技術拠点は、今年11月に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)を控え、中国のイノベーションを示すショーケースとして自らを位置づけている。外国人訪問者数は昨年70%増加し、今年第1・四半期にはさらに30%以上伸びた。今年8月までの入境記録は500万件を超えている。

 タクシーの車内では英語のアナウンスが流れ、外国人インフルエンサーが技術展示会に頻繁に姿を見せるようになった。ウッダード氏によると、地元企業は、外国のロボット工学・AIハードウエアの起業家が生活し働くための、シリコンバレー式の「ハッカーハウス」まで設立しているという。

 外国人起業家向けの深セン工場ツアーを運営しているウッダード氏は、「シリコンバレーと深センを行き来している400人規模の微信(ウィーチャット)グループがある。そこでは、電池工場やディスプレー工場について、気軽に情報を出し合っている」と話す。「起業家らは、10日間のビザなし入境制度を使って、事前のつてもなく深センに来ている。次の試作品を誰に作ってもらえるのかを探るためだ」

 こうした活況は、深センが低コストの生産拠点から、中国が技術的主導権を追求する最前線へと変貌したことを示している。同市に11年間暮らすチェコ人起業家のヤン・スメイカル氏は、訪問を望む外国のスタートアップ創業者からの依頼が来ない日はほとんどないと語る。

「深センほど、テクノロジーを街の根幹に据え、日常生活にまで深く溶け込ませている場所は、世界のどこにもない」