9月15日から18日にかけて千葉・幕張メッセで開催された東京ゲームショウ2016。最新ゲームやVRコンテンツが目立つ中、多くの注目を集めていたのが日本マイクロソフトが出展した女子高生AI「りんな」である。
「りんな」は、日本マイクロソフトが開発した女子高生を模したAIで、LINEやTwitter経由で誰もがコミュニケーションできる。インターネット上では、本物の女子高生と会話しているような面白会話集が話題となっている。現在400万人以上のユーザーがコミュニケーションを楽しんでいるという。エンターテイメント的な側面ばかりが目立っているが、実はりんなはマイクロソフトの「対話型インターフェースが次世代アプリケーションにおけるUIの中心になる」という「Conversations as a Platform」ビジョンの一つの要素として開発が進められている。
AI業界の中でも異彩を放つ「りんな」の開発チームに、開発経緯やAIの未来について話を聞いた。
日本マイクロソフト 坪井一菜氏
インタビューに応えてくれたのは、マイクロソフト ディベロップメント サーチテクノロジー開発統括部 プログラムマネージャー 坪井一菜氏。坪井氏によると、マイクロソフトは「りんな」を会話を楽しむことを目的とした「Emotional AI」、すなわち感情型の人工知能と位置付けている。マイクロソフトは、Windows 10に業務効率化をサポートする「Cortana」と呼ぶ対話型インタフェースを搭載しているが、こちらはProductivityを支援するタスク型の人工知能と位置付ける。
「りんな」は、中国のマイクロソフトが開発したチャットボット「小冰」(シャオアイス)をヒントに、日本独自の要素を加えて開発、システムアーキテクチャの基本は、ビッグデータと機械学習である。マイクロソフトの検索エンジンBingや蓄積したビッグデータを基礎として会話のデータベースを作り上げ、それに機械学習を組み合わせることで、より良い感情型の人工知能にしている。
今年の東京ゲームショウでは、「りんな」によるファッションチェックとラップの歌唱を実演していた。ファッションチェックは、スマホで人物の服装を撮影して「りんな」に送ると、着ている服の種類や色のイメージ、着ている人の年齢などを判断して、「りんな」がコメントしてくれるというもの。ラップ歌唱は、「りんな」の芸術活動への挑戦として、ユーザーがラップの歌詞を送ったり、要求したりすると、「りんな」がラップで返信してくれるもの。展示では「りんな」の歌声が響き、人工音声によるラップというユニークなコンテンツになっていた。
一見すると何の役に立つのか分かりにくい「りんな」だが、坪井氏が描く未来は「機械と人間が自然な会話をしている世界」という。人間にとって一番自然なインターフェースである会話を、機械である「りんな」が理解してくれることで、今まで機械と人間の間にあった感情的な溝を埋めることを目指している。
これまでの対話型人工知能とのやり取りは、内容が機械的、業務連絡的になっていて、なかなか親しみが持てないものが多い。気持ちを通じさせることができる「りんな」のような対話型インタフェースが普及することで、将来は、オンラインショッピングで、バーチャル店員がユーザーとの自然な会話の中からユーザーが本当に欲しいものを見つけてくれたり、コールセンターの自動オペレーターと待ち時間に最近の流行について話をし、ストレスを軽減させたりすることができるかもしれない。マーケティングの領域において、人工知能がしだいに普及しているが、今後はいかにより「個性」を持った人工知能を実現できるかが鍵を握りそうである。
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