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【イベントレポート】合言葉はコンタミネーション!? Bio Hack the Future Vol.0開催

DG Lab500 Startups Japanは、2016年12月15日にバイオテクノロジー分野のスタートアップ企業の動向に関心がある人々に向けたイベント「Bio Hack the Future Vol.0 」をデジタルガレージで開催した。

参加者の所属はスタートアップ企業や大学の研究機関、ベンチャーキャピタル、医療関係コンサルタントなど多種多様で、バックグラウンド、専門領域が違う人たちが良い意味で”contamination(*1)”するイベントとなった。

(*1) Contamination:周囲の環境と実験環境とを厳密に区分けする必要がある実験系で、一方の環境からもう一方に、本来混入するべきでない物質が混入した場合を指す専門用語。Contaminationは研究現場においてはネガティブな事象ではあるが、本イベントでは様々なバックグラウンド、領域が違う人との”融合”という意味で使用している。

イベントは2部構成で、第1部ではIndieBio DEMO DAY THE MOVIEと題し、サンフランシスコに拠点を置く、バイオテックに特化したスタートアップ企業のアクセラレーターIndieBioが2016年7月に開催したDEMO DAY で行われたスタートアップ企業のプレゼンテーションから6つを厳選して解説し、アメリカでのバイオテックスタートアップの盛り上がり、トレンドについて議論した。第2部は、日本でのバイオテックスタートアップの動向に焦点を絞り、MOLCURE社、ジーンクエスト社の創業者を壇上に招いてパネルディスカッションを行った。

【第1部】IndieBio DEMO DAY THE MOVIE

登壇した4人。左から、進行 河原 あず氏(ニフティ株式会社/東京カルチャーカルチャー)、澤山 陽平氏(500 Startups Japan マネージングパートナー)、篠澤 裕介氏(リバネス、Real Tech Fund グロースマネージャー)、榎本 輝也氏(DG Lab アドバイザー)

1部で紹介した6社は以下の通り。イベント当日における解説は本記事末尾のアーカイブ動画にまとめた。

  1. MYCOWORKS
    キノコを原料にした皮革製品の代替物

  2. KNOX
    ポータブルピークフローメーター × アプリ

  3. ASTRONA
    1時間で食品の安全性をチェックできるキット

  4. BioNascent
    合成生物学的アプローチにより生成する人工母乳

  5. miraculeX
    酸味を甘味に変える作用を持つタンパク質の水耕栽培を用いた大量生産

  6. mFluiDx
    高速かつ安価に伝染病のDNA/RNAを検出できるチップ

6社の解説を行った後、3名の解説者にそれぞれ総括をしてもらった。

澤山氏:キノコを原料にした革製品開発というインパクトの大きいピッチから始まり、様々なジャンルを紹介した。今後は、研究とビジネスの間のギャップを埋めていく必要がある。

榎本氏:研究者目線で見ると技術的に高度なもの、革新的は正直少ないと思った。ただ、着眼点とVCへの見せ方など彼らはとてもよくできている。研究者はそういうところは見習わなければいけない。確固たる技術と社会への見せ方の両方をカバーすることが大切。

篠澤氏:プレゼン内では個人がどう考えているか、開発にいたった背景などはあまりなかった。どのピッチもマーケットサイズやサービス価格など数値を多く使っていた印象をもった。

【第2部】日本のバイオテックスタートアップによるパネルディスカッション

登壇した4人。左から、モデレーター 谷口 明依氏(DG Labアドバイザー)、原 庸一朗氏(MOLCURE COO, Co-founder)、高橋 祥子氏(ジーンクエスト 代表取締役)、片野 晃輔氏(DG Lab Youth)

第2部では、日本発で注目されているバイオテックスタートアップの創業者が登壇し、起業に至った背景、仲間集め、アカデミアとビジネスの違いについて説明しながら、会場からの質問に答えるインタラクティブなパネルディスカッションを行った。

Q.なぜベンチャーを立ち上げたのか?

原氏:とてもシンプルで、自分たちが感じたフラストレーションを解決したかったから。例えば、知人を亡くしたことや、現在まだ治療薬がない病気があることがきっかけで、それらを解決していきたいと思った。創薬には10年かかると言われているが、目の前に苦しんでいる人がいるのにそんなに待てない。研究開発を加速しないといけない。基礎研究ありきで応用を行うビジネスを行う人が多いと思うが、MOLCUREは課題ありきで技術を探した。

高橋氏:最初は起業するつもりはなかった。自分の研究を早く進めたく、そのために起業の選択をした。サービスを社会に出すことでデータも集まり、サービスも成熟していき、自分がしたかった研究が実現していく。

Q.アカデミアとビジネスにどういう違いがあるか?

高橋氏:技術的に簡単なことでもそれをビジネスで行うことはとても大変。ゲノムを調べるのは簡単。ただ、それを社会でやろうとすると法的側面、倫理的側面などの様々なハードルがある。DNA情報が個人情報になると言われている。これらの規制に関しては、関係者と議論を重ねながら手探りで解決していくしかない。

原氏:アカデミアは自分の科学的探求心により研究することが多いと思う。一方、ビジネスは対象を患者さんやユーザーに向けないといけない。患者にどうベネフィットを還元していくかを常に考えるので、危機感の属性が違うと思う。研究所にこもると患者さんの顔が見えなくなりがち。

MOLCURE 原氏

ジーンクエスト 高橋氏

Q.これから起業するとしたらどういうテーマを選んだらいいか。どういう分野がおもしろいか?

片野氏:技術で面白いのは、Expansion Microscopy。スタートアップで面白いのは、Transcripticという会社。実験を自動化するサービスを提供している。バイオ実験は人によって個人差がでてしまうが、自動化することによって精度を高められる。

高橋氏:研究者はやりたいテーマがある人が多いのでテーマ選びは苦労しないと思う。バイオの背景がない人のテーマ選びは難しいかもしれない。その場合、バイオのバックグラウンドとある人と共にやるといい。バイオのテーマには流れが明確にある。例えば、ヒトゲノムが解析され解析技術が進歩したから、ゲノム編集ができるようになる。そのような基本的な流れを抑えてテーマ選びをするとよい。

原氏:今、自分がやりたいことをやればいいと思う。その上で、バイオだけじゃなくITとか他の分野の人もいれながら進めていくのが大事。GoogleがJohnson & Johnsonと共同でコンタクトレンズを研究開発している例があるように、いろんな領域の要素技術を他と組み合わせていく。また、仲間集めは単純でネットで検索してヒットする人で仲間になってほしい人にコンタクトをする。その行動力がない人は起業家に向かない。(会場笑)

Q.失敗したらアカデミアに戻れますか?

高橋氏:そう思って、起業した。起業した時は大学院生だったので、失敗しても戻るだけだった。大学は研究員も減っているし、ポストも少ない、そのため大学にいるほうがリスクが大きいと思った。

片野氏:大人になってないのでわからないけど、やる気次第だと思う(会場笑)アカデミアは村社会ではないと思うので、やる気があれば誰も怒らないで受け入れてくれるのでは。

登壇者は、ベンチャーキャピタル、研究者、バイオテックスタートアップなど様々であったが、本イベントの総括をするならば、バイオテックスタートアップを始める意志がある人は、怖れずに、基礎研究とビジネス側面の両方をカバーし、自分がやりたいと思うテーマで始めることが大事ということ。仮に失敗してもアカデミアに戻る選択肢もある。

初めて開催したBio Hack the Futureだったが、参加者の熱気と確かな手応えを感じた。日本のバイオテックスタートアップがアメリカと同じくらいに盛り上がる時代はすぐそこまで来ているのかもしれない。Vol.1 はIndieBioのBatch 4が予定されている2017年2月に開催予定だ。

当日のアーカイブ動画:

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Bio Hack the Future Peatixページ:http://biohackthefuture.peatix.com/

宇佐美克明 Written by
DG LabでBiotech分野を担当。東京工業大学 生命理工学部卒。学生時代は、生態系に与える影響を最小限にし、かつ経済的効率性を向上させるグリーンケミストリーの研究を行う。卒業後は、研究者の道ではなくビジネスの世界に入り、インターネット広告業界で経験を積む。2011年にインドネシアに渡り、2015年 インドネシア法人を売却。2016年より東京に戻り Biotech分野にてテクノロジー×ビジネスの取り組みに従事。
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