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【SFオフィスツアー】ワークスタイル先進企業に学ぶ働きやすいオフィスとは

2016年10月31日から11月6日にかけてサンフランシスコで開催されたリーンスタートアップ関連のイベントLean Startup Week。その初日に行われたStartup Tourに参加して、GitHub社とPivotal社のオフィスを訪れた。過去には、Airbnb, Uber, Slack, WeWorkなど、今では世界的な企業へと成長を遂げた会社のオフィスツアーを行ってきたStartup Tour。サンフランシスコにある先進的な企業への訪問を通して、イノベーションが生まれる働きやすいオフィスを考察した。

<GitHub>

GitHub社のオフィスツアー動画

エンジニアが自由に働ける環境を追求したオフィス

最初に訪れたのは、ソフトウェア開発プロジェクトのためのソースコード管理サービス「GitHub」を運営するGitHub社。GitHubは、公開されているソースコードの閲覧や簡単なバグ管理機能、SNSの機能を備えており、現在ではエンジニアにとって欠かせないツールの一つである。2008年の創設以来、成長を続け、2016年4月時点で1400万人のユーザー数、3500万以上のリポジトリ数を誇る。サンフランシスコの本社オフィスは、2013年に開設。元々は倉庫街だった地区に、倉庫を改装して作られた。GitHub社の取材では、エンジニアが自由に働ける環境を作るための秘訣を見ることができた。

ハロウィンに合わせて社内の装飾はハロウィン仕様。受付の横はカフェになっている

オフィスに入ると、いきなり広大なオープンスペースが目に飛び込んでくる。オープンスペースに設置してあるカフェでは、専属のバリスタが本格的なエスプレッソマシンを使ってコーヒーを淹れてくれる。社員にとってこのスペースは、無料で本格的なコーヒーが飲める場所という意味以上に、自宅のリビングや街中のカフェのようなリラックスした空間として利用されている。訪れた時も、ソファで作業に集中する人や、テーブルでディスカッションする人が多く見られた。

カフェ前のスペースには、作業に集中する人やディスカッションをする人が多い

開放的なオープンスペースを抜けると、GitHubのマスコットキャラクター「Octocat」の巨大なオブジェを中心に、左側にはオープンカウンターのバー、正面には広々とした食堂、右側にはセミナーなどを行うためのイベントスペースが設けられていた。そして所々にリラックスしながら作業することができるように、ソファが置かれていたり、コンテナの上で寝転びながら高い所で作業ができるスペースがあったり、ビリヤードやテーブルホッケーなどがあったりと、社員がリフレッシュするためのスペースも設けられていた。
一見するとオフィスには見えない空間だが、このオフィスをデザインした背景には、社員を第一に考えるGitHub社ならではの空間デザイン哲学がある。500名を超える社員を抱えるGitHub社だが、その多くがエンジニアで、リモートワーカーも半数以上存在する。従来の考えに捉われず、社員1人1人が働きやすく、彼らが一番創造性を発揮できる環境を追い求めたからこそ、遊び心溢れるオフィスが完成したのだろう。実際、GitHub社のオフィスは、2013年の開設以来、働きやすい環境を追求するために改装を繰り返しており、受付横にできたカフェも社員の要望により、今年の9月に出来たばかりのものという。この他にもGitHub社のオフィスには、クリエイティビティを発揮するための工夫・仕掛けが色々なところになされており、様々な個性を持つ社員が集中しやすくするためのファシリティが用意されているように感じた。

<Pivotal>

Pivotal社のオフィスツアー動画

オフィスビル内の環境づくり

続いて、ソフトウェア開発およびコンサルティングを行うPivotal社を訪れた。Pivotal社が得意とするのは、特に大企業向けのソフトウェアのアジャイル開発であり、ビッグデータ分析やミドルウェアなどの製品をすべて組み合わせ、新しいタイプのアプリケーションを構築・運用するためのプラットフォームを提供することを目指している。
Pivotal社のオフィスは、ごく一般的なオフィスビルの4F、5Fにあり、倉庫を改装して作られたGitHub社とは対照的。ソフトウェアのアジャイル開発を専門とする同社も多くのエンジニアを抱えており、エンジニア向けの職場環境という観点から、倉庫という制約条件の少ないGitHub社のオフィスとビル内で制約条件の多いPivotal社のオフィスを比較することができた。

Pair Programmingという働き方

受付のある5Fエントランスを入ると、大きく右側の執務スペースと左側の会議室スペースに分かれている。右側の執務スペース一帯には、ぎっしりと机が並べられていて、エンジニアが席を並べてキーボードを叩いている。ビルの設備や使用している家具は、ごく普通の会社とあまり変わりがないように見えるが、皆、自分のデスクを思い思いにカスタマイズし、標準的な机をスタンディングデスクにして立ちながら作業をしていたり、壁や柱に装飾を施していたり、シンプルなオフィスでありながらも、全体として醸し出している雰囲気は、勢いがある企業を表していた。Pivotal社では、「Pair Programming」という開発手法を採用しており、エンジニアが2人1組になって、コードを書く人と、コードをチェックする人に役割分担していた。GitHub社のような広々としたオープンスペースやカフェは無く、各人が自由に作業に耽る様子は見られなかったが、ペア同士のコミュニケーションが活発に行われており、オフィスは活気に満ちていた。

エンジニアが働きやすい環境

受付の横にあるスペースは、広々としたオープンキッチンになっており、社員同士のディスカッションが頻繁に行われていた。また、クライアントと共同でプロジェクトを進めることが多いPivotal社では、チームの結束を高めたり、仕事の息抜きのため、共用スペースに卓球台が設置されており、その場は大いに賑わっていた。

今回Startup Tourに参加したことで、アメリカ西海岸にてエンジニアの給料が高騰し、取り合いになっている背景を感じることができた。優秀なエンジニアを惹きつけ、そして魅了し続けるオフィスの形は、エンジニア以外の人々も好感を持っている。イノベーションを語る際に、コラボレーションという言葉がキーワードにあがるが、新しいワークスタイルのヒントがエンジニアのオフィス内から感じ取ることができた。

関連リンク

■Lean Startup Week
https://leanstartup.co/2016-conference/

■GitHub
http://github.co.jp/

■Pivotal
https://pivotal.io/jp/

Written by
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、デザイン分野に興味を持ち、同大学院メディアデザイン研究科を修了。大学院では、人と人とのソーシャル・インタラクションを作り出すためのデバイスを開発するなど、インタラクションデザインやコミュニケーションデザインの研究を行う。大学院在籍時にロンドン、ニューヨークに留学し、デザインに対する知見を深め、デザイン技法を磨く。現在は、DG Lab Hausのブランディングなどを担当。