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【インタビュー:ユーグレナ/出雲充氏】今は富士山で言ったらまだ五合目。ミドリムシを用いこれから実現したい未来とは。

日本を代表するバイオテクノロジー企業である株式会社ユーグレナ代表取締役社長 出雲充氏。開発背景や同社の現状、さらに実現したい未来に関して聞いた。

本インタビューは2016年11月5日にサンフランシスコで開かれたTHE NEW CONTEXT CONFERENCE SAN FRANCISCO(以下、NCC SF)に出雲氏が登壇した際に、会場となったコワーキンスペース「DG717」で行った。

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途上国の子供達に栄養を!それが開発への原動力

DG Lab Haus編集部(以下、DLH):ユーグレナという生物に着目したきっかけは?

出雲充氏(以下、出雲氏):栄養の勉強をしており、とにかく栄養の塊を作りたかった。栄養を途上国の子供達に食べてもらって、元気になってほしい、健康になってほしいとの思いがあった。とにかく栄養価の高い、栄養満点のものを探している中、大学3年時の時にミドリムシに出会った。

DLH:ユーグレナを事業化する過程で、一番大変だったことは?

出雲氏:これは答えるのが難しい質問。なぜなら何が大変って全部大変だったから。最初は一つもうまくいった実験はない。一番苦しいのは、教科書がない、答えがない、まだ誰もやった事がないので、一体何から手をつけたらいいのかが全く見当がつかなかったこと。とにかく、答えがわからないので、やたらめったら手を動かして失敗するしかなかった。自分が行っている事が本当に正解に近づいているのか、それとも遠ざかっているのかもわからない状態。変な例えかもしれないが、大航海時代に霧の中でGPSがない時代に海の中でポツンと凪で動けなくなってしまった船の船長は本当に苦しい気持ちだったろう、と想像しながら毎日苦しんでいた。

DLH:ゴールを100とした時に、今どの辺りまで来ているか?

出雲氏:富士山で言えば五合目、マラソンランナーで言えば折り返し地点を過ぎたところだと思う。ミドリムシをたくさん育てる技術は半分完成した。皆さんに安全に食べていただくという意味で技術はできた。ただ、まだ半分残っている。それは、燃料としてユーグレナを使うこと、中でもジェット燃料を作って航空燃料をミドリムシ由来のものに切り替えていきたい。この大量培養はまだ完成していない。最後のチャレンジとして残っている。食べるミドリムシは10年取り組んできて自信がある。安全に皆さんに喜んでいただくミドリムシを作れるようになってきた。絶対の安全性を持ち合わせた大量培養技術を研究しているところだ。

DLH:ユーグレナの世界展開について、どのように考えているか?

出雲氏:食べるミドリムシと、燃料のミドリムシの2つがある。燃料のミドリムシは、日本でもアメリカでもヨーロッパでも同じものでいい。日本でジェット燃料が完成したら、世界中にあるだけ使ってもらえる。一方で、食べるミドリムシは、いろいろな食文化に応じて、味付け、見栄えなどを変えないといけない。食べ物は燃料と違って、いいものだから皆さんに食べてもらえるというものではない。いいものであることは大前提で、どうしたらそれぞれの文化的な背景を理解して必要としている人に食べてもらえるのか、現地のことを私たちがしっかり勉強しなければいけないと思っている。これは長い挑戦になる。今、栄養不足で困っている人、栄養失調で困っている子供にはどんなに大変でもミドリムシを届けて子供たち全員に笑顔で元気で健康になるまで頑張っていきたいと思っている。

DLH:10年先の未来について、どう考えているか?

出雲氏:「ユーグレナが世界を救う」と思っている。世界は今いろいろな問題があるので、ミドリムシがなんでもかんでも全て解決するものではない。ただ、ミドリムシで2つは絶対に貢献できると信じている。1つは、栄養失調の子供達にミドリムシを食べてもらって、笑顔で元気で健康になってもらうこと。2つ目は、現在替わりの選択肢がないジェット燃料をミドリムシで作ってこの2つで世界に貢献したい。

ユーグレナが実現する健康とエネルギー資源としての大きな可能性を感じた

イノベーションの発端となるものは時に純粋な動機からなると感じた。発展途上国の貧困に苦しんでいる子供達への栄養供給にと開発を進めていたユーグレナは、今やジェット燃料にまでその領域を拡げ、人間の未来に明るい話題を提供できる可能性を持つ。今後の展開に注目すべき取り組みが数々生まれそうだ。

Profile

出雲 充

株式会社ユーグレナ 代表取締役社長

1980年広島県生まれ。2002年東京大学農学部卒、同年東京三菱銀行入行。2005年株式会社ユーグレナを設立し、同社代表取締役社長に就任。2005年12月、世界で初めてユーグレナ(和名:ミドリムシ)の屋外大量培養に成功。2012年東証マザーズ上場。2014年、東京大学発ベンチャー企業として初めて東証一部上場。

中小企業基盤整備機構Japan Venture Awards「経済産業大臣賞」受賞、世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダー」、第一回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」受賞。

株式会社ユーグレナホームページ:http://www.euglena.jp/

編集部 Written by
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