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NCCインタビュー 岩田俊幸(ペプチドリーム株式会社 IR広報部長)

NCC2017で講演を行う 岩田俊幸氏

NCC2017で講演を行う 岩田俊幸氏(ペプチドリーム株式会社 IR広報部長)

  ペプチドリーム株式会社でIR、広報の責任者を務める岩田俊幸氏に、同社の取り組みと、現在の医療制度が抱える課題とペプチドリームの可能性などについて聞いた。聞き手は東京工業大学情報理工学院 研究員でDG Labのアドバイザーでもある榎本輝也氏。

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榎本:はじめに自己紹介をお願いいたします。

岩田:ペプチドリームのIR広報部の岩田と申します。私は大学でバイオを専攻し、卒業しまして最初に国会議員の秘書になりました。世界の飢えた人たちを救いたいという強い気持ちがあったからです。その後、バイオのアナリストを18年間やっていましたが、日本のバイオ産業の育成のためには、具体的な成功例を示すことが必要と考え、この6月にペプチドリームに入社しました。

榎本:ペプチドリームでは(具体的に)どのようなお仕事をやっておられるのしょうか

岩田:バイオというのは「わかりにくい」と思われているのですね。バイオというだけで「わからない」という拒絶反応をする方が多いのです。そこで、イメージ図を使ったり、比喩を用いたりしながらバイオをわかりやすく伝えることが大切になります。正確に伝えることはもちろんのこと、わかりやすく当社が行っていること、目指しているもの、その意義を伝えて、理解していただくことを第一にやっています。

榎本:ペプチドリームではどんな技術を使って、世界を変えていこうとなさっているのでしょうか。

岩田:医薬品のパラダイムシフトが今、世界的に起こっています。だいたいみなさんそのように言う人が多いのですが、本当に(笑)起こっています。それはどのようなことかと言うと、これまでは効果が高く、副作用が少ない薬を作れば、高い薬価がつき、それによって製薬会社の収益が上がっていました。しかし、今は(薬価を含めた)トータルの医療費を下げないと大変だと言う状況になってきています。

 これは、医療先進国で自由薬価のアメリカでもそうなってきていますし、日本でもオプジーボという抗がん剤で「効くんだけれど(薬価が高く)大変だ」と問題になりました。日本では、今まさに『医療制度の抜本改革』の議論が進んでいて、今年の12月ぐらいに費用対効果を前面に出した薬価制度がスタートするといった方向に進むと思います。

 そこで、医療費を下げるということが必要になるのですが、今の主力の抗体医薬では、製造コストが高く、どうしても薬価を下げられないのです。そこで、抗体医薬と同等または同等以上に特異性が高く、結合力が強いにもかかわらず、うまくいけば製造コストが10分の1以下になる、我々の開発した特殊環状ペプチドを使って抗体医薬を代替しようというのが私たちの狙いです。

榎本:もともと東大の先生(菅裕明教授)の技術から出てきたペプチドリームですね。私自身もその技術は研究者としてはよく利用します。ところで、こういった技術がベンチャー企業として成り立つ生態系(エコシステム)についてうかがいたいのですが、今後さらにバイオの起業が盛んになるには、どういったことが世の中に必要なのでしょうか。

岩田:難しい質問ですね(笑)。大学にある技術はアーリー(基礎技術)なものが多く、事業として成り立つにはかい離があるんですね。日本では2000年ごろに大学の技術を基にバイオ企業を起業化しようという大学発ベンチャーブームがあったのですが、ほとんどがうまくいかなかった。技術をどのような製品にするのか、それが時代に合うのかを見極める「事業化に関する専門家」が必要で、そういった専門家と起業家、大学の三者で協働しながら進めないといけないですね。

榎本:ペプチドリームの今後について聞かせてください

岩田:ITの分野では(大型)コンピュータがパソコンになって、その機能は今スマホで代替できるようになりましたよね。ダウンサイジングの流れです。医薬品もそうなると思っています。

 現在の主力は抗体医薬ですが、それがより小さなもの、特殊環状ペプチドを使った医薬品(特殊ペプチド医薬品)で代替できますよ、と私たちはいっているわけです。しかも、さらに特殊環状ペプチドを使って、薬の結合スポット、つまりに標的分子のどこにどのように結合しているのかががわかるので、その情報から副作用の少ない低分子医薬品の開発することもできるのです。その結果、我々の技術で薬価を下げることができ、世界の医療費が今後高齢化で増えていくのを抑えていくことができると思っています。

編集部 Written by
現在、世界各地で起こっているイノベーションを発信し、現場の声をお届けします。