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VR以降のコンテンツ制作

2017年2月27日〜3月3日の5日間、サンフランシスコのモスコーニセンターで開催された、ゲーム開発者向けの世界的カンファレンス、Game Developers Conference 2017(GDC)ではさまざまなパネルディスカッションが行われた。

ここでは、異なる背景と観点を持つVRコンテンツ制作のビジョナリー達が、現場の生の声を伝えるパネルディスカッション「VR Discussion Panel – What We Have Learned and Predicting the Future」の様子と、パネリストのひとりであるnDreams CEOのパトリック・オールニック(Patrick O Luanaigh)氏へのインタビューを掲載する。

このパネルディスカッションには、インタビューに答えてくれたnDreamsのCEOのパトリック・オールニック氏のほか、Unisoft Montrealのゲーム・ディレクターであるオリバー・パルミエリ(Olivier Palmieri)氏、LimitlessのCEOのトム・サノッキ(Tom Sanocki)氏、Autodesk新技術担当ディレクターのブライアン・ペネ(Brian Pene)氏がパネリストとして登壇した。Autodeskを除く3社は、VR向けのコンテンツを制作しているプロダクションスタジオで、Autodeskのクライアントでもある。

パネルディスカッションではVRコンテンツ制作に関して議論がなされた。ここではその議論の中からいくつかをピックアップする。

パネルディスカッション

■VR技術を用いた映像・ゲームコンテンツ制作

【モデレーター】VRのデザインプロセスと、従来の映像やゲームコンテンツ制作のプロセスとではどのような違いがありますか。

【パルミエリ】ユーザーエクスペリエンスを考えるとVR用のデータが重要となります。

【ペネ】顧客が求めるのは単なるデザインではなく、ビジュアル表面の滑らかさなども含まれます。連続性が伴うVRデータをいかに出力するかは大きな課題です。

【モデレーター】オールニックさん、具体的なVR向けゲーム開発手法などはありますか?

【オールニック】実験的な試みが多いです。VRでの開発にあたっては多くのアイディアが生まれますが、実際のプロダクションを通して予想しなかった多くの発見に出会うのです。現状はVR技術の可能性を試している状況です。

【パルミエリ】デザインの際に、VRで実現可能な表現か否かのテストが必要ですね。

【モデレーター】従来のコンテンツをVR対応にする際に、どのような点が変わりますか?

【オールニック】あらゆる視点から見て違和感がないレベルの作り込みを必要とします。例えば机を描くのでも、あらゆる角度や距離から見て机とわかる質感を作り込みます。音響も重要なコンテンツです。複数の音声出力がある場合に、VR空間でプレイヤーが動いても違和感なくそこに存在するようなサウンドエフェクトが求められます。

【パルミエリ】あらゆる要素について、VR空間にいられる居心地の良さが大切です。

■VR技術を用いた産業向けコンテンツ制作

【モデレーター】産業向けコンテンツなどでVR技術を利用する機会はありますか?

【サノッキ】VR技術の産業利用はもちろんあります。特にプロトタイピングの用途で使われます。フィルムやゲームの開発ではあまりないことですが、将来は産業分野などでプロトタイプをVR空間で開発し、実際のプロダクトを製造し仕上げる、といったケースが増えるでしょう。ただし、2Dの特長を活かしてできることもあるでしょうから、VR技術との使い分けはありそうです。

【モデレーター】VRでの産業向けコンテンツ制作には独自のガイダンスが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

【ペネ】そうですね、Autodeskの顧客はCADを使い、幾何学的な空間で高精細なデザインを行なっています。例えばスーパーマーケットのモデルを作るにしても、野菜コーナーのインゲン豆1本1本を高精細で作り込むわけです。例えばそのようなデータをアセットとしてVR空間に持ち込むことが必要で、それができれば新たな事業機会を創出できると考えます。ただし、通常のマッピング技術はVRにそのまま持ち込めませんから、VR向けにするとなればさらにデータが必要となります。これまで以上に膨大な量のデータを用意し、VR空間に持ち込むことが求められるのです。そういった点を押さえなければなりません。

【モデレーター】具体的にどのような方法でそれを実現できそうでしょうか。

【ペネ】いくつか興味深い方法があります。アイトラッキング技術は非常に面白いですね、反応の速度も早いですしレンダリング技術にも対応しています。例えばHMDで今見ているものの中心のみを高解像度にでき、レンダリングの時間を短縮できます。ライトフィールドの技術もあります、コーデック技術も飛躍的に発展しています。データの最適化やレンダリングや、様々な技術を活用しどれが産業利用に向いているかを確かめる必要があります。

オールニック氏がCEOを務めるnDreamsは、VRゲームやエクスペリエンスの開発を行う会社で、社員数70人。モバイルVRからハイエンドのヘッドセット向けまで各種コンテンツを開発している。オールニック氏は、nDreamsを立ち上げVRゲームの開発をする以前に、トゥームレイダーやヒットマンなど有名タイトルの制作に携わってきた。同社は10年前に立ち上げられ、3年前からVR向けの開発を始めた。現在まで6つのVRゲームをリリースしており、制作技術の経験が豊富だ。

インタビュー

■VR以降のコンテンツ制作

オールニック氏によれば、VRでの制作がこれまでのコンテンツ制作と違うのは、ユーザーインターフェースへ大きな重点を置かなければならないことだ。例えば、VRゲームは全ての情報が目の前にあるのではなく、プレイヤーの後方にもコンテンツを作り込まなければならない。さらにユーザーが広大なゲームの世界を快適に動き回り情報を探せるようにしたうえ、ディテールに富んだ映像を作らなければいけない。足元の状況や、置いてある物の裏なども、ユーザーが動いて見ることがあるのだ。サウンドも重要であり、通常のゲームよりリアリティのある、VRの世界観に合った3Dサウンドが必要となる。

nDreamsはVRの分野で世界をリードする企業になることを目指し、これまでモバイルやハイエンドデバイス向けに制作を行っているが、今後は新しいタイプのコントローラー、カメラなどの技術も取り込んだ開発も行いたいと、オールニック氏は大いに意欲を燃やしている。VRコンテンツは現在、ゲームやエンターテイメントで注目されているが、同氏は将来的に教育コンテンツが発展すると予測している。VR技術を駆使して子供たちが歴史や言語を学んだり、社会科見学に出かけたりするようになるだろうと考えているのだ。既に一部では、研修や建築の分野でVRを活用したコンテンツが実用化されているので、教育の分野での同様の取組みも拡げていきたいという。

関連リンク

http://www.ndreams.com/
http://montreal.ubisoft.com/en/
http://vrlimitlessltd.com/

白石玲音 Written by

DG US
DG Lab Haus Executive Writer

DGUS, Inc.でDG Lab関連の各種業務を担当。米国ミシガン州立大学を経て立命館大学経営学部経営学科を修了後、デジタルガレージに入社。Y Combinator出身のAdTechスタートアップのローカライズ担当を務めたのち、決済事業部門のグローバルアライアンス業務を担当。国内外大手決済事業者向けのソリューション提供、Fintechスタートアップとのビジネスデベロップメントなど、多様な業務に従事。2016年のDG Lab発足以降、DGUSサンフランシスコオフィスを、R&D機能を有したDG Labのグローバル拠点へと発展させるべく活動中。