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ドラマもCMもヒット作品はAIがサポートする時代

18歳から24歳の女性に「かわいい」という印象を訴求するならー

18歳から24歳の女性に「かわいい」という印象を訴求するならー

 テレビCMの制作を人工知能(AI)がサポートする。国際大学GLOCOMと広告ソリューション開発・提供のコラージュ・ゼロは、AIによるCMの好感度予測システムを研究・開発している。このシステムではCMの企画段階で性別、年代別の好感度を事前に予測するほか、訴求したい年齢や性別、獲得したい印象(好感要因)に合わせて、CMに使うべきキーワードを提示することもできる。企画の段階からCMの好感要因を8割以上の精度で予測可能という。現在はβ版の開発を進めており、2018年内の商用利用を目指す。

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「ビタミンレモンサイダー」という架空の商品があり、CM案として、

「CREATIVE BRAIN」のデモ画面1。ビタミンレモンサイダーを訴求するには?

「CREATIVE BRAIN」のデモ画面1。ビタミンレモンサイダーを訴求するには?

 A「青春を感じさせるストーリーの中で、商品を露出する」

 B「商品の機能性を真っ向から訴求する」

の2つの案があるとする。A案、B案の字コンテ(CMの内容を文字で書き起こしたもの)を、開発中のCM好感度予測システム「CREATIVE BRAIN」に入力すると。

A案は「ストーリー」「ユーモラス」「心がなごむ」などの好感要因が高く、性年代別では男性が好感、特に「男性20代」「男性50代」に響く。

「CREATIVE BRAIN」のデモ画面1。ビタミンレモンサイダーを訴求するには?

「CREATIVE BRAIN」のデモ画面1。ビタミンレモンサイダーを訴求するには?

B案は「説得力」「宣伝文句」「企業姿勢」などの好感要因が高く、男女の差はあまりなく「男性の40代以上」に響く。

 逆に、18歳から24歳の女性に「かわいい」という印象を訴求するなら「結婚式」や「バースデー」といったキーワードが有効という回答が得られた(記事上の写真がその様子)。

 GLOCOMの中西崇文准教授・主任研究員は「一般の機械学習だと(データの入力から出力は一方通行で)逆をたどれないが、『CREATIVE BRAIN』では『この好感要因があるから、このCMのストーリーに惹かれる』などと、逆にたどれるようになっている」と特徴を語る。

CMを85万本以上も学習

 「CREATIVE BRAIN」は、CM総合研究所が保有する「CM好感度」を使用。「CM好感度」は、1988年から東京キー局5局で放送されたすべてのCM85万本以上について、放送開始日や広告主など基本情報のほかナレーションや内容、画面文字、情景描写、出演タレントなどをデータベース化している。また、自己記述式で採られた月例CM好感度調査による「ストーリー」「ユーモラス」「説得力」「時代の先端を感じた」などCM好感要因15項目、CM購買意向度などのデータも指標化している。「CREATIVE BRAIN」はこれらビッグデータから得られた“好感の法則”を学習している。

 機能は3点あり、上記の「企画段階でのCM好感要因を事前予測」する機能のほか、誰にどのような印象を持たれたいのかを入力すれば、必要なキーワードを返してくれる「クリエイティブサポート用キーワードの抽出」、さらに字コンテから類似した過去のCMを検索してくれる「類似CM検索」も可能だ。

国際大学GLOCOMの中西崇文准教授・主任研究員(左)とコラージュ・ゼロの小島拓也社長

国際大学GLOCOMの中西崇文准教授・主任研究員(左)とコラージュ・ゼロの小島拓也社長

 「CREATIVE BRAIN」の研究開発は、大手広告代理店でナショナルクライントのCM制作などに携わってきたコラージュ・ゼロの小島拓也社長が提案した「クライアントとクリエイターに“共通の指標”がない」という問題意識をきっかけに始まった。「クライントに企画案を出す際の補足材料として客観的なデータを示せるように、また発想やアイデアを出すための道具、クリエイティブのサポートツールとして、CMの作り方がより効果的、効率的になることを目指している」という。

創造の場でもAIは活用できる

 中西准教授・主任研究員の研究グループは、データから特徴相関抽出とモデリングを行うデータマイニングの技術研究をしている。感性情報処理によるコンテンツ認識や創造が目的で、自動作曲システムなども開発。「ビッグデータとAIは、『創造性』と親和性が強い」という。将棋や囲碁のAIが生み出す「人間が想像しない手」は「想像しないのではなく、思いつかないということ。思いつくためには、人間の発想を引き出すデータマイニングが重要で、それをどう実現するかが技術のポイントになってくる」という。

 ドラマ制作の分野では、すでにAIの活用が進んでいる。ネットフィリックス(Netflix)がヒット作品に対するユーザーの視聴行動分析などのビッグデータに基づいて監督やキャスト、内容を決める方法を採用。これによって制作されたオリジナルドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』はエミー賞を受賞した。

 「CREATIVE BRAIN」は2016年12月から研究を開始。β版では、インターフェースの改善や精度向上を図り、年内の商用利用を目指すとしている。ドラマ制作だけでなくCM制作もいずれは、訴求したいターゲットに合わせて出演者やBGM、脚本や内容をAIがレコメンドする時代が来るかもしれない。

【プレスリリース】人工知能によるCM好感度予測システム『CREATIVE BRAIN』の開発をスタート!(株式会社コラージュ・ゼロ)

田中 徹 Written by
北海道新聞で記者を経て現在、東京支社メディア委員。デジタル分野のリサーチ、企画などを担当。共著書・編著に「頭脳対決!棋士vs.コンピュータ」(新潮文庫)、「AIの世紀 カンブリア爆発 ―人間と人工知能の進化と共生」(さくら舎)など。@TTets