慶應義塾大学SFC研究所データビジネス創造・ラボ(所在地:神奈川県藤沢市、代表:村井 純)が主催する「第7回データ創造ビジネスコンテスト(Digital Innovators Grand Prix7 )」の本選発表会・審査会・ 表彰式が2018年3月17日慶應大学北館で開催された。データ創造ビジネスコンテストとは慶應義塾大学SFC研究所データビジネス創造・ラボがスタートさせたコンテストで、ビジネスパートナー(協力企業)が提供するデータと、オープンデータをもとに、デジタルネイティブ世代である全国の高校生・大学生・大学院生がデータ分析力とビジネス創造力を競い合うものだ。
今回のテーマは「和食文化による価値創造」であり、応募の学生達には株式会社カカクコムから「食べログ」の和食カテゴリのTOP 1,000の店舗データおよびそれに紐づく過去1年分のレビューデータが提供された。また、株式会社プラスアルファ・コンサルティングからはテキストマイニングツール「見える化エンジン」が提供され、学生達は自由にデータ分析を行いビジネスのアイデアを練り上げる。
全国から31チームの応募があり、予選を通過した9チームがこの本選発表会でプレゼンテーションを行い、グランプリが決定した。開始にあたって審査委員長村井純慶應義塾大学大学院教授より「このコンテストはデータ創造に特長があります。今日はみなさん1日楽しんで欲しい」という挨拶があり、以下の9チームがプレゼンテーションを行った。(掲載順はチーム名の五十音順 ※は受賞結果)
高齢者と若者双方の「孤食」の解消を目的にしたコミュニティ創成を提案。
滋養豊かな「ねこまんま」の普及のためキッチンカー展開とインスタント食品化を提案。
「親子キャンプ」×「和食」で和食離れと家族コミュニケーション醸成を提案。
「日本酒でまちおこし」を目的に「日本酒留学」などを提案。
和食はUX(顧客体験)こそが価値としてUX重視の検索モデル提案。
3Dプリンターによるお弁当箱、ARでレシピを学べる「うんちく巻物」など和食普及アイデア提案。
「食べログ」の評価は利用者前後の行動に関係するという切り口で「食べイベログ」事業を提案。
「うどん」の消費を伸ばすために人気うどん店のデータを解析し改善モデルを提案。
和食と季節に着目し、「和食文化」×「女子会」と「スタンプラリー」を提案
各チームには、審査員から質問やコメントがよせられ、発表終了後、全員にファイナリスト入賞の表彰が行われたあと、各部門入賞者とグランプリが発表された。前述の通り、「メディアテクノロジー部 毎日焼肉食べたいGirls」(富山国際大附属高校)がグランプリを受賞。大学生を押しのけて高校生が受賞したのは、第4回以来(その時の受賞者も富山国際大附属高校)である。
最優秀賞を獲得した「メディアテクノロジー部 毎日焼肉食べたいGirls」(富山国際大附属高校)は、高校生の「食べる頻度」をAIを活用し分析。また食べログのデータから和食店の魅力の大きなポイントは「(店の)大将のうんちく」であると分析し「うんちく」の巻物を作成。さらにその巻物はAR(拡張現実)でレシピが再現できる。また、高校生のお弁当箱が和食に向いていないのではないかと仮説を立て、振動データを計測して「和食に向いたお弁当箱」を3Dプリンターで作成し発表した。
また優秀賞を獲得した大学生チーム「madao inc」(慶應義塾大学)は、口コミデータのベクトル化によるレビューシステムの改善案で『とても美味しくて子どもと一緒に楽しめるお店』という、最適なお店検索を文章で行えるシステムを発表、UXという観点での実用的な提案を行った。
最優秀賞チームには、村井審査委員長から「本コンテストは“データを使うビジネスを提案できているか”、“データをちゃんと活用しているか”という観点で審査しますが、非の打ち所がありません」という最上級の褒め言葉が述べられた。「“うんちく巻物”のAR、お弁当箱には3Dプリンター、調査にはAI手法と、使える最先端の技術がすべて入っています」と楽しそうに続けた。そして会場全体の参加者に向けて、「みなさんのチャレンジはこれからの人生の経験に生きるでしょう。ここに残った人たちは力強い成果を上げた人たちです。これまでの努力に敬意を表します」と称えた。
グランプリ受賞チームに話を聞くと、「今年は(富山は)雪がたいへんで、なかなかみんな集まれない時が多く、また集まってもなかなかうまく進まなくてたいへんでした」「みなさんすごいなと思っていたのでグランプリなんて信じられない」「先輩も受賞したので続くことができてうれしい」など口々に喜び合っていた。表彰式終了後、村井審査委員長にお話を聞くことができた。
― データ創造ビジネスコンテストは7回目ですが、今回変わってきたな、と思われることはありますか?
何と言っても今回は楽しかった(笑)。7回やってきてこんなに笑ったコンテストはありません。あと、横断的にいろんな学校が混じったチームが増えてきましたね。
― 今回は高校生が活躍したイメージがありますが?
いつもは違いますよ。やはり大学生や院生は統計的な力を発揮して、分析に強いのですが、今回はテーマが和食でしょう? 身近だし、食べ物の話だし、地域に密着した話。テーマが親しみ深かったから、高校生が活躍できたんじゃないでしょうかね。
― 今後データ創造ビジネスコンテストに応募する学生のみなさんにメッセージをお願いします。
高校生らしい、大学生らしい、院生らしい分析をしてください。自分の視線・発想で取り組んでくれればいいです。今は“データを使って生きていく時代”です。データを使って未来を開拓していく時代と言っていいでしょう。身近なデジタルデータを使い、応募してくれることで、新しい人たちとの出会い、新しい場を知る機会にしていただければと願っています。待っています。
※株式会社デジタルガレージはビジネスパートナーとしてデータ創造ビジネスコンテストに協力をしています。