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5Gで建設機械を遠くから操作 やってみてわかった未来の姿とその課題

5Gを活用した建設機械の遠隔操作の実証実験現場

5Gを活用した建設機械の遠隔操作の実証実験現場

 日本では2020年を目途にサービス開始が予定されている第5世代移動通信(5G)。5Gは、従来の4G回線に比べデータ伝送速度が10倍以上の「高速・大容量」で、さらに「超高信頼・低遅延」「多数端末の同時接続」という特長を持つ。これによりさまざまな分野のビジネスの可能性が広がる。たとえば、通信の遅延がほとんど無いため、工場や建設現場、医療現場などで、ネットを通じて機器をリアルタイムに遠隔操作できる。あるいは工場内のセンサーをすべてネットに接続し、機器制御や管理を自動化することで工場をスマートファクトリー化することも容易になる。

 5G導入後の社会を見据え、総務省では2017年から、さまざまな分野の関係者が参加する6つの実証実験を推進している。そのひとつが、KDDI、大林組、日本電気(NEC)が共同で実施した「5Gを活用した(災害現場における)建設機械の遠隔操作の実証実験」(2018年2月1日〜14日、大林組・東京機械工場で実施)だ。5G導入後の社会や導入の流れをイメージするため、同実験担当者のひとりである大橋一範氏(NEC)に、実験の詳細や今後の展開を聞いた。

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――実証実験の実施の背景を教えてください。

NECネットワークサービスビジネスユニット・新事業推進本部の大橋氏

NECネットワークサービスビジネスユニット・新事業推進本部の大橋氏

 災害現場などにおいて建設機械を遠隔操作するケースは、1990年代前半、長崎・雲仙普賢岳(うんぜん・ふげんだけ)が噴火した頃から増えていて、現場では安全に効率よく操作できるよう試行錯誤を繰り返していると聞いています。ただ、これまで災害現場などで使われたのは、従来のWi-Fi(無線LAN回線)です。Wi-Fiは利用者が多いため、混線や干渉がたびたび起こります。また低出力なので、映像の解像度も落とさざるをえず、映像の送信が遅延したり、ブロックノイズ(デジタル信号が要因で画像が映りにくくなること)が発生して作業が中断したりと、さまざまな問題が起こっていました。

 こうした課題を5Gで解決し、より効率的で安全な遠隔施工を目指すことが、今回の実験の目的です。

――具体的な実験内容はどのようなものだったのですか?

 建設機械にカメラを搭載して、そのカメラの映像を無線ネットワークによって転送し、オペレーターがいる遠隔操作室のモニターにリアルタイムに届けるという実験です。作業は、積み上げられた50cm四方ほどのコンクリートブロックを、建設機械を遠隔操作して別の場所に移すというもの。Wi-Fiを用いた場合と、5Gを用いて4K映像を見ながら行った場合の作業時間を比べました。

実証実験の全体イメージ

実証実験の全体イメージ

――結果はどのように?

 5Gを用いた方が、作業時間を25〜30%ほど短縮できました。作業効率が上がった理由としては、オペレーターが鮮明な4K映像を見ながら作業ができたこと、大容量のデータを低遅延で流せ、映像が途切れることなく作業できたことが挙げられます。

建設業界全体の人手不足の解消にも

――5G導入後、建設現場や災害現場では、どんなことが可能になるとお考えでしょう?

 まず今回の実験結果からわかるように、遠隔施工の作業効率の改善が期待できます。さらに、建設業界全体でいえば、作業員の人材不足解消が見込めるのではないでしょうか。

――5Gの普及で人材不足も解消できるのですか?

 大林組の担当者によると、近年、建設技能者の高齢化や労働人口の減少などにより、重機のオペレーターを含むさまざまな職種の建設技能者が不足しているそうです。Wi-Fiを使った遠隔操作では、現場近く(約2km以内)に操作室を作り、そこで操作する必要があります。つまりオペレーターは現地近くに行かなければならない。ところが5Gであれば、任意の場所にある操作室から遠隔での操作が可能になります。理論上では、主要都市に操作室を集約し、そこから各地の現場作業を遠隔操作することも可能です。

――遠隔操作の普及により、少ない人材でも対応できるようになると。

 現状、現地での搭乗操作と遠隔操作を比べると、やはり遠隔操作の方が効率は下がりますので、今すぐ全ての作業を遠隔操作に切り替えるのは難しい。しかし、遠隔操作への期待やニーズの高まりとともに、その効率も上がっていくことでしょう。災害現場での活用など、必要とされるケースも出てくるはずです。これらを踏まえ、着実に成果を上げていくことが社会から求められていると思います。

全国津々浦々でなく、ニーズを拾いエリアを拡大

――5Gに関してNECでは今後どのような展開を?

 通信キャリア向けに無線機を提供する立場として、5Gの周波数にしっかりと対応した無線機を提供し、通信インフラの構築に貢献していく予定です。

 ただ、5Gは高速・大容量化する一方で、使う周波数帯を上げる必要が出てきます。実は、高い周波数帯(5Gは、3.6〜6GHz帯、28GHz帯などを予定)の電波は、低い周波数帯(4Gは3.6GHz以下)に比べ、長い距離を飛ばしづらくなります。5Gはエリアを広げるのが難しくなるため、3Gから4Gに移行したときのように、一気に全国津々浦々にエリアを広げるのではなく、企業のニーズを理解したうえでエリアを構築し、徐々に広げていくことが現実的ではないかと考えています。

――BtoC(一般ユーザー向け)ではなくBtoB(企業向け)、企業のビジネス用途を拾いながらエリアを広げていくと?

 いえ、おそらく両面で走ることになるかと思うのです。しかし、これまでの延長としてBtoCの範囲だけではエリアの広がりに限界があるので、BtoBの領域をいかに広げるかが、5Gインフラを構築するうえでは重要になります。たとえばネットワークやセキュリティーと組み合わせた価値を提案するなど、企業ニーズの発掘につながる活動がこれからは必要だと考えています。

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 総務省主導の実証実験により、5Gのさまざまな効果が見えてきたようだ。しかし、5Gのもたらす効果を実際の業務にどう取り入れていくのか、また、肝心のエリア拡大をどう進めるのかについては、検討の余地は多分に残っている。

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庄司健一 Written by
有限会社ガーデンシティ・プランニングにてライティングとディレクションを担当。ICT関連や街づくり関連をテーマにしたコンテンツ制作を中心に活動する。