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起業するなら他人の力を上手に使おう〜スタートアップへのアドバイス

「自分のアイデアや技術を世に問いたい」

そんな気持ちから起業をした、あるいは起業をする事を決めた。しかし、一緒に働く仲間を見つけることができず、資金も足りない。そんな時どうすればいいのだろうか。

創業期に誰もがぶつかる壁だが、そこを乗り越えるコツは「他人を巻き込み、周囲のリソースを積極的に利用する事」だ。

「Open Network Lab BioHealth」を主催する株式会社デジタルガレージが9月5日にスタートアップやVCを集めてミートアップを開催した。同社の宇佐美克明DG Labシニア・マネージャーによると、創業期のスタートアップは「やることが多すぎて、自分たちだけではこなしきれない。他者の力をうまく使いながら事業を進めていく事が肝心」と話した上で、スタートアップが必要とする資金、人材、情報をどうすれば集めることができるのか、その具体的な方法を説明した。以下に講演の内容の一部を整理して記載したので参考にされたい。

■まずはじめは「カネ」

 何と言っても「お金」がないと事業は始まらない。自己資金が潤沢にあるなら良いのだが、大半の起業家はそうではない。研究開発をするにも、テストマーケティングをするにもお金が必要だ。そこで、他人の財布を頼ることになる。ほとんどの人にとって資金調達は未知なる経験だろう。それゆえスタートアップの資金調達はとても難しいことのように思われるが、実際は多くの企業が日々資金調達に成功している。

参考資料 図1 クリックで拡大(当日の投影資料から抜粋)

 資金を得るには、まず自分たちがどういった事業進捗の状態にあるのかを正しく認識し、自身のフェーズにあった相手から資金調達することが大事だ。(図1)創業期(図1のPoCやシード)では数億円などと行った大きな資金は不要だが、まだその価値が定まらない技術やサービスに対して資金を出す相手も限られる。また、早い段階で提供された資金と交換に株式の多くを譲渡すると、その後の企業としての自由度が制約されてしまう場合もある。

 こうした事を考慮すると、創業期にはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)やJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)などの公的な研究助成金や、株式会社リバネスが提供する「リバネス研究費」や独立系VCのANRIが提供する「ANRI基礎科学スカラーシップ」など給付型の研究費、さらには主にシード期のスタートアップを対象にしたアクセラレーターからの資金などが望ましい。

参考資料 図2 クリックで拡大
(当日の投影資料から抜粋)

これらの組織はスタートアップが次のフェーズに進めるようにサポートすることが目的で資金提供をしている。フェーズが進み大きな資金が必要になれば、また目的が異なった投資家から提供を受けることになるが、大きな資金の出し手はキャピタルゲインを目的とするため、一定期間内に相応の成果を求められることになる。(図2)

■アクセラレーターは目的で選ぶ

 ここで改めて、アクセラレーターというものの役割とその特徴について整理してみたい。

 創業期の資金供給者というのはその役割の一部で、その他にも起業を志す人への助言(メンタリング)を行ったり、オフィススペースの提供、さらには人材確保の手伝いや提携先企業の紹介などスタートアップが必要とするあらゆるサポートを手がけている。「他者に頼る」方法としてはアクセラレーターに参加することが手っ取り早い方法だ。

日本にもすでに100以上のアクセラレーターが存在しており、その運営内容や方向性にはそれぞれ特徴がある。これだけあるとどこに応募するか迷うが、それぞれの支援内容には特色があるので、それを見極めていくのがよい。

 まず、事業領域がすでに明確であるなら、その事業領域に特化したアクセラレーターを選択するとよい。例えば「」ならばバイオテクノロジー、医療、健康の分野に強くこれらの分野の企業が多くサポートに加わっているので、アドバイスもより専門的であり、将来的な提携の可能性もあり得る。さらに特定の企業が運営するものもある。製造業ならソニーやホンダ、メディアなら電通や朝日新聞なども独自のプログラムを持っている。これらのプログラムに参加すれば、運営母体が持つノウハウやネットワークを上手く利用できる可能性がある。

 また、自治体や地場の企業が主催するエリアに特化したプログラムもある。「Open Network Lab」でも地域型のプログラムとして北海道と福岡で活動を行っている。その地域に特徴的な事業や、エリア特化型の事業を構想しているなら、こうした地域特化型のアクセラレーターとの接点を持つメリットがあるだろう。また、最初から海外での事業展開を視野に入れてるなら、ビザ取得のメリットなどが得られる海外のアクセラレーターに応募するのがよい。

ユナイテッド・イミュニティ株式会社の原田直純氏

 複数のアクセラレーターに参加することも有意義で、実際にOpen Network Lab BioHealthの第1期に参加したユナイテッド・イミュニティ株式会社の原田直純氏が、この日の別のセッションで次のように話していた。

「(アクセラレータープログラムに)落ちてもいいのでどんどん応募する。自分が構想している事業の無駄とかズレに気がついて、その結果としていい結晶が残る。また、それまで意外と知らなかった起業の基礎知識などを得る事もできる」

複数のプログラムに参加して、たくさんの関係者と知り合い、アドバイスを受ける。そうすることは、自身の事業をブラッシュアップしてくれる。また、会社登記、資金調達、税務、雇用など起業家には最低限必要ながら、学校では習わないことが多くある。こうした知識が必要だと気づかされることもアクセラレータープログラムに参加するメリットのひとつだ。

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話は少し変わるが、アクセラレータープログラム運営者から見た時に、スタートアップの事業を評価する3つのポイントがある。

ひとつは、その事業が受託事業に終始する計画になっていないかという点だ。受託という面を全て否定するわけではない。受託をすることでノウハウが蓄積されるという面はあるが、その先に何があるのか、本人たちがきちんとイメージできていることが大事だという。

次にマーケットフィットがきちんと検証されているかだ。アイデアや技術が先行し、出来上がった製品は陥りがちな罠だが、よいと思って作り上げてもマーケットに受け入れられなかったり、あるいは受け入れられてもそのマーケットが小さすぎたりしては、事業としては大きく飛躍しない。ゆえにそういった事業に大きな資金をつぎ込むことはできない。

さらに、事業が動き出しているなら、マイルストーンが明確にされているかだ。いつまでに何を作り、何を検証するか。初期には事業内容を変更(ピポット)することも往々にしてあるが、その方向転換は何故実施されたのかが、他者にもわかるよう検証プロセスと判断基準が明確になっていることも大切だ。

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スタートアップには周囲からの支援が欠かせない。そしてその支援をうまく受けるためには、綿密な計画を持ち、自分のポジションを正しく認識した上で、自らのことを正確に相手に伝える必要がある。

さらに肝心なのは、なんでも他人をあてにするのではなく、必要な準備はきちんと自身でと整えた上で、どうしても不足するスキルやスピードを得るために他人の力を取り込むことだ。

自身の準備ということでは、この日もいくつか紹介されたが、スタートアップの教科書やQ&Aサイトは世の中に数多く存在する(記事末の参考リンク)ので、情報源を自身で活用活用することも大切なことだ。

参考リンク

■研究助成金

NEDO 研究開発型ベンチャー支援事業

JST 出資型新事業創出支援プログラム

AMED 公募一覧

■ベンチャー支援

ステージ別ベンチャー支援マップ

起業家が事業フェーズ毎に直面する課題と解決策

■資本・資金

研究開発型ベンチャー企業 の資本政策立案の手引

大学による大学発べンチャーの株式・新株予約権 取得等に関する手引き

The YC Seed Deck Template

Angel投資家探し「ANGEL PORT」

投資家探し「STARTUP LiST」

スタートアップ資本政策の6箇条(Taejun氏のnote)

日本で活動する主なCVC/VCリス(Matt 〈Katsunari Matsui〉氏のnote)

Writing a Business Plan

■ピッチ

The Early Pitch Decks Of 15 Startups Before They Became Billion-Dollar Companies

Indie Bio DemoDay

MIT Delta V DemoDay

■知財戦略

特許庁のスタートアップ向けサイト

特許庁 スタートアップの知財コミュニティポータルサイト

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